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県立図書館のお話  作者: 村咲 遼
12/27

夏蜜はちょっと目を覚ましました。

スヤスヤと眠っていた夏蜜なつみだが、目を覚ます。

御手洗いに行きたくなったのだ。

しかし、手を握ってくれている揚羽あげはに言うのも恥ずかしく、モジモジする。


「どうしたの?」

「あの……」

「ん?なっちゃん起きたんかいね。揚羽。看護婦さんを呼んどいでや」

「は、はい」


出ていったのを確認し、福実ふくみは微笑む。


「いかんねぇ……ぼんはそういう事が鈍いけんねぇ」

「お、お祖母ちゃん……」

「御手洗いやろ?その体では起きられん。看護師さんに手伝うてもらいなさい。その傷やけんね」

「動けんのが恥ずかしい……」


顔を真っ赤にする。


「何日間はおむつをするしかないなぁ。ばあちゃんも使いよるわい」

「お祖母ちゃんも?」

「ばあちゃんも90のばあちゃんや。なるべくは使いとうはないけどなぁ、遠出するときとかははいとらぁい。なっちゃんは、怪我が良くなるまでは、動いたらいけん。痛い思いをするんはいややろ?看護師さんに相談して、みたらえぇわい」

「うん、お祖母ちゃんありがとう」


恥ずかしげに頬を赤くする少女に、福実は微笑む。




素直な優しい子……。

初めて会ったときに感じたのは、苦労しているのに周囲に気を使える子だった。

親の身勝手で捨てられて、特別養護施設に預けられ会えるなんて偶然でもすごすぎる。

自分の父の再婚相手の弟と縁が出来るとは……。


そっと頭をなで、


「元気になったら、ばあちゃんとお兄ちゃんたちと遊びに行こうなぁ?」

「うん。おばあちゃんと手を繋いで、お兄ちゃんとも、で、お出掛けしたいなぁ」

「どこに行こうかのう?」

「動物園……ぞうさん見たいの。あ、お祖母ちゃんダメだったら……」

「かまんかまん。ばあちゃんは一緒にみたい」


その言葉にホッと安心する。


「大丈夫ですか?」


看護師に夏蜜を預け、出ていく。




「ジュースでもこうてこうかね。揚羽。動物園に行きたいて言うとったで?」

「動物園……パンダですか?熊はツキノワグマもヒグマも高齢で死んでしまったし……」

「そもそもここの動物園にはパンダおるまいがね」

「あ、そうでしたね。じゃぁ、レッサーパンダ、白熊……」

「ぞうが見たいんやと」


その言葉に、


「じゃぁ、元気になったら、父さんに頼んで車で行きますか?」

「そうやなぁ。お弁当もって」




しばらくして戻るともじもじと、


「お祖母ちゃん、お兄ちゃんありがとう」

「いいよいいよ。具合はどう?あ、そうだ。動物園と言えば、お兄ちゃんが学校で一回遠足に行ったんだけど、ちょうど誕生日だったからって、こんなぞうのぬいぐるみ、その場でくれてね……」


大きさを示す。

直径40センチ高さが30センチほどである。


「定期的にほこり払っているから、色褪せもないし、飾っているだけだから……今日の午後に帰ったら持ってきてあげようか?」

「ぞうさん?」

「そうそう。ぞうさんもお兄ちゃんの部屋より喜ぶでしょ。持ってくるね」

「わぁぁ……」


目をキラキラさせる夏蜜に、


「じゃぁ、今度動物園に行ったらペンギンさんが飛んでいるのを見ようか?」

「ペンギンさん、飛ぶんですか?」

「あぁ、ペンギンさんの水中での動きを見てもらうようにって、透明になってるんだよ。プールが」

「凄い‼」

「ビューンって水のなかで飛ぶからね。面白いよ」


揚羽は笑う。


「それと、猫科の大きなひょうとか、ライオン、とらもそれぞれ個性があって見ていて面白いし、楽しみだね」

「うん‼」

「じゃぁ、早く元気になりますようにって思って寝ようね?」

「はーい‼お兄ちゃん。ありがとう。おやすみなさい」


目を閉じて、すやすやと寝入ったのだった。

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