適材適所
「よーし、そろそろデザート行っても良さそうだね」
「『はいはーい』」
「まず、トッピングにはコレでーす」
たこ焼きの時に出したガーデンテーブルに、ジャムソースを数種類配置してデザート用にセッティングし直し、2人の前にアイテムボックスから8種類のアイスクリームがセットされている冷凍ディッピングケースと、横には絞り袋に詰めた生ホイップクリームが入った冷蔵ケースも出した。
「『キャホッーーー!』」
「まだよっ、まだまだこれからだ」
いきなりアイスに突貫しようとする2人を宥めながら、オプション鉄板上で調理開始する。
酒とシロップで漬け込んだ、イチゴ・キウイ・白桃・洋ナシ、他4種全8種類をを鉄板で焼いて暖める。
次に、湯煎で粘度を高めて固まる寸前で止めてある、鉄板焼き用に作っておいたプリン焼き用焼きプリン種をフルーツの上から鉄板に落として、焼いたフルーツを包み込むように直径50センチ厚さ3センチ程に纏め上げていく。
「うわっうわぁっ! あるじ、どうなっちゃうのコレ何?」
「ムフフ、2人共すぐに出来るからね」
中身がトロトロの状態のままひっくり返してから、ハオマ酒を振りかけ火を点けフランベして上からキャップをして、温度を80へ落とし香り付けしながら蒸し焼きにして鉄板焼きフルーツプリンの完成だ。
『丸いオムレツみたい~』
「味は焼きプリンだけどね」
ピザのように8カットにして大皿へ載せテーブルに置いて2人に勧める。
「はい、コレを小皿で取って、そっちにあるアイス・ホイップ生クリーム・フルーツジャムソースを好きにアレンジトッピングして食べてね。さあどうぞ召し上がれ」
「『は~い、いただきまーーす』」
もうラストだから5面全て使い、お皿が空にならないように次々に焼いていく。
しかし、焼きながら俺はある事を思いついてしまった。
「今思ったんだけどクレープを使ってミルフィーユみたいにすれば、もっと高さを出せたんだよなぁ~。チョット失敗」
「ん~、あるじ~十分美味しいよ、うまうま」
『うまうま』
「じゃあ、次回のお楽しみってことにしとこうかな。次は高さ5センチ位にはしたいし、クレープ焼き台も作っておきたいし」
『賛成~』
ここからは、初日同様ティーパーティー風に俺が給仕してデザートを楽しんでもらう。
暇を見て作ってアイテムボックスに仕舞っておいた、軽く摘めるバタークッキー・カップパンケーキ等もテーブルに追加して、3人でお喋りしながらゆったりタイムとする。
「あるじ~、クレープ焼き台もヒヒイロカネで作るんでしょ」
「うん、シロップ付けフルーツを焼いても焦げ付かないし便利でしょ」
『コロコロ凄かったね』
「オリハルコンは串・ヘラ・ピックとかで使ってるけど鉄板には使わないの?」
「ん~、ヤッパリ気になる? あくまでも俺の主観と使用感に基づいてだから、それを踏まえて聞いてね」
「『うん』」
「こびり付かないって事のみを考えるとオリハルコンの方に軍配が上がるんだけどさ」
「そなの?」
「うん、くっ付かない低粘着性・低摩擦性はオリハルコンの方が優秀で、耐腐食性・熱伝導効率ではヒヒイロカネかな」
『だから鉄板なんだね』
「あと、刀剣類の武器にはオリハルコンに分がある感じで、切れ味に低粘着性・低摩擦性・硬度・強度・粘度とかが影響してるかも」
「『なるほどー』」
「対して、ヒヒイロカネの最大の長所は熱伝導効率の高さで他の金属を圧倒してるからね。これはもう、たこ焼きプレート・鉄板・フライパンとかの加熱用調理器具に使わずして何処に使うの? って感じでしょ」
『あははは』
「うんうん、たこ焼き凄かったよぉ~」
「あと、腐食耐性も高いから包丁にして異世界の強酸物を切っても変質しづらい」
『レモンとか切っても変色しないんだね』
「じゃあ、逆にヒヒイロカネを串とかにしないのは、直ぐに熱が伝わってきて熱くて持ってられなくなるからだったんだね~」
「うん、そうだよ。それにさ、オリハルコンたこ焼きピック使いやすかったでしょ?」
『うんうん、ヘラも全然くっ付かなかったね』
「そういえば、向こうの世界で食べた串焼きの串を抜くのも楽だったよ~」
「まあ、オリハルコンでも悪くないんだけどね。でも、調理器具に関して言えばヒヒイロカネの方が少し有利かな」
『適材適所だね』
「へぇ~、ただ珍しい金属を使いたいだけじゃなかったんだね、あるじ」
グッ、流石に鋭いなピクちゃん。
「あっ、そうそう、2人は三種の神器って知ってる?」
『うん、もちろん』
「ピクもしってるよ~
【天叢雲剣】
【八尺瓊勾玉】
【八咫鏡】
この三種だよね」
『たしか、ヒヒイロカネ製だったって話だよね』
「うん、それそれ。俺が思うに、その剣って包丁だぜ、多分」
『プハッ、あるじがまたヘンなこと言い出した』
「え~、でもでもその剣って八岐大蛇の尻尾から出てきたんじゃなかったっけ」
「それはねピクちゃん、食材を収集中の調理人が包丁もろともオロチにパクッって逝かれたんだけど、ヒヒイロカネの耐腐食性のおかげで消化されずに体内を移動して尻尾に留まっていた包丁を、オロチを退治したスサノオが取り出したんだよ」
『あるじはもう包丁で押し通すつもりだ』
「あっ、でもそう考えるとスサ君はもしかしたら見栄を張ったのかも……オロチの体内、尻尾から出てきたって話だけど、お尻の方の更に穿った見方をしたら、体内からではなく排泄「うわっ、うわっ、うわっ、聞きたくない聞きたくない、きキたクなイいィーー!」え~とスマン」
『…………』
「もうもうもうっだよ! あるじ~」
『決して歴史の表舞台には現れない筈の新事実が今ココにだね』
「あるじ~、他の二種も何かあるの?」
「いや、包丁からの推察でサクッっと解説すると、勾玉は箸置き、鏡はオードブル用銀皿あたりで」
『うわ~、もうどうでもいい感がひしひしと』
「まあ、実際は俺の元の世界でも紛失したりで現物を見て確認しようが無いし、シンジュちゃんのアカシックレコードに記録されてはいるだろうけど、どこの世界のいつの時代のとか、とてもじゃないけど調べてられんし、そこまでする意味も無いからね」
「砂漠の針だよね~」
『うんうん』
「史実はどうでも俺はヒヒイロカネを自由に活用できてるから問題無いしね」
「あるじの居た世界ではさ~、こんな便利な金属の製錬方法が何で伝わってないのかな」
「そうだな~、俺の居たとこではアダマンタイト・ミスリルは想像上の金属っぽいし、オリハルコンはアトランティスと海にドボンらしいし」
『あらら』
「ヒヒイロカネは使われていた時代の人達からしたら、あまり扱い易い金属ではなかったのかもね。その時代に鉄とか銅が存在したのかは知らないけれど、もっと儲かる手頃な金属があったんだよ、きっと」
『うわっ、世知辛いよ~』
「ヒヒイロカネの金属特性なんて、その当時は極一部の人間にしか知りようが無い事だろうからね」
「あるじあるじ~、たこ焼き&お好み焼きが当時あれば、ヒヒイロカネ失伝しなかったのにね」
『キャハハハ、そうだね』
「あはは、ピクちゃんの言うとおりだね。俺の想像では最後のヒヒイロカネ製錬技術を持った職人には2人の弟子が師事して居たんだよ。そして、その職人がお亡くなりになった後に有ったであろう弟子2人の会話は多分こうじゃないかな」
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「おい、緋金の作り方は?」
「あ? お前が覚えたんじゃ無いのかよ」
「え?」
「あっ? え?」
バタバタッ、カンカンカンッ――
「「緋金作れね~、失伝しちった、てへぺろ」」
「どうせ緋金、儲からねぇから良いよな」
「おう、他所の奴等がどうにかするだろうさ」
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「こんな感じだと思うんだけど、どう?」
「軽っ、あるじ~軽過ぎるよ~」
『あはははっ』
「現代人がアノ三品を祀って神器だぁ! なんて言ってるのを、もしも古代人が現代に蘇って目撃したらさ“ギャハハハッ、お前らアンナもん有り難がって何してるんだよ”とか言って大爆笑間違いないね」
「そ、そうかなぁ~」
『枯れ尾花ってやつだね』
「そうそう、それそれ。そんなもんだって、うん」
「事実は歴史の闇の中なんだね、あるじ~」
「あっ、そうだ! もしかしたらアマテラス・スサノオ・ヤマタノオロチとかの名前が出て来る時代には、もうヒヒイロカネの衰退期に入っていた可能性もありそうだな」
「ナンダッテェ~」
『棒読みになってるよ~ピクちゃん』
「尖がった性能の金属ではなくて、ソコソコの品質でソコソコの性能の手間の掛からない見た目も新しい金属の方が、利ざやを稼げるから主流になっていって職人も減少していったんだ」
「あるじ、ガラケーがスマホに圧倒されていった現代の状況と酷似してるね~」
『歴史は繰り返される』
「そう、そして既に一般人が気軽に手に出来る金属ではなくなってしまっていた上に、後継者不足で先細りな状況で、更にスサ君がアマちゃんに天叢雲剣を献上なんかしたもんだから、一般人が余計に敬遠し始めてその流れが加速してしまい、職人たちはめんどくさいヒヒイロカネに嫌気が差し、工房も儲かる金属へ生産をシフトさせて行き、そこからヒヒイロカネ離れが進み失伝って落ちだね。うんコレが真相に違いない」
『もの凄い想像力だね』
「寧ろ妄想力、いや暴走力だね、あるじ」
「いや、そろそろ止めてくれると有り難いんだけどな、2人とも」
『キャハッ』
「アハッ」
「じゃあ、後は軽い説明で締めるよー」
「『はーい』」
「ファンタジー金属特性でオリハルコン・ヒヒイロカネには、ある種のエネルギー増幅能力が有る訳なんだけどさ」
「『うん』」
「エネルギー増幅器として考えるとオリハルコンとヒヒイロカネは両者互角だと思う」
『そうなんだ』
「へぇ~」
「うん、次にアダマンタイト・ミスリルだけど」
「『わくわく』」
「アダマンタイトは比重量が重いのが最大の特徴で、硬度と強度もそれなりに確保できるから、武器はハンマー・戦斧・重両手剣・ポールウェポン向き。ミスリルは魔法との親和性の高さで付与魔法や魔術によって様々な顔を見せる。こんな感じの説明で良いかね」
『あーー! あるじ、面倒になったでしょ』
「あはは、まあ今回の鉄板表面みたいに単一で使うことは少ないし、後は用途によって合金にする事が多いだろうからね」
「細かい検証はファンタジー金属を扱える他の人がご自由にどうぞって事だね~」
「あとは、暇見てミスリルに魔法付与で色々試してみたいかな」
『鉄板IHみたいの?』
「うん、エアコンとか電子レンジ・コタツ・蛍光灯みたいな電化製品っぽいの作れそうじゃない?」
「あはは、電子ジャーとかも作ってね、あるじ~」
なんかオール電化みたな話になってきてファンタジーっぽくなくなってきたな。
まあ、元居た世界で便利だな便利そう便利だった的な物は再現してみてもいいか。
100円ショップで便利そうだと色々買って家に帰って冷静になった時の、ナゼ俺はこんな物を状態になりそうな気もするが。
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登城し一日待機しての本日、消失した山脈の調査第一報への対応と今後を協議するため会議場へ向う。
会場入り口左右の歩哨衛士の方々へ会釈してから中に入ると、国の重鎮である御一人が既に席へ着き寛いでおられた。
「よぉ、嬢ちゃん、お久」
「ご無沙汰しております、閣下」
「今日は護衛騎士君(勇者)とは一緒じゃないのかな」
「ちょっ、止めて下さい! 縁起でもない。彼は冗談通じないんですから、真に受けたらどうしてくれるんです」
「ガハハハッ、嫌われたもんだな彼も」
「彼って身体への視線が露骨なんですもん。特に胸元とかお尻とか……」
「んん~? 確かに嬢ちゃんは美人さんでスタイルも良いから、野郎共にジロジロ見るなってのも酷な話しなんだが、胸は然程「コホンッ!」――」
「――今度、御自宅へ伺わせて頂いた時、奥様に閣下はお城でエッチなんですって言いつけます」
「おっと、こりゃイカン。聖女殿の御機嫌は甘味等で直りますかな?」
「もうっ!」
「クカカッ」
公爵という立場でありながら、プライベートにおいてはとても気さくな方で知られている。あくまでプライベートではだが。
それから程なくして会議参加者全員集まったのだが、私が出席している事へ誰もツッコミを入れてくれないのが逆に悲しい。
私の会議への出欠はこの国にとって重要では無い筈なのだが、どの道呼び出されるので参加している。
しかし、紅一点といえば聞こえはいいが、分不相応で場にそぐわない事甚だしいし、皆さん絶対面白がってますよね。
姫様、恨みますよ~。まんまと聖女なんてのに祭り上げてくれちゃって……。
ここまで読んでいただいた皆様、ありがとうございます。
複数投稿は今日までで、明日以降12話までは毎日22時前に投稿させていただく予定です。
その後、遅筆なので不定期になってしまうと思いますが、よろしくおねがいします。




