僕達は我に返る( 完)
最終回です(≧ω≦)/
ここまでお読み頂き、ありがとうございましたm(__)m
それは良く晴れた日のお昼休み。偶然、渡り廊下を歩いた時に、偶々、外から聞こえた声に足を止めた事から、僕にとっての運命が始まりました。
「ねぇ! 聞いた? リアル乙女ゲームがまた見れるよ!」
「あずちゃん、ダメですよ、そんな事いったら………」
「あら〜? でも〜、まるで隠し攻略キャラが〜出て来たみたいでしょ〜?」
「そうなのよ! 今度は王子様よ?」
王子と言われて、それで漸く自分の事を言われていると気付きました。しかし、乙女ゲーム? 攻略キャラ? 彼女達は何を言っているのでしょうか? 残念ながら、私は警備の都合上、携帯類は持っていません。普段は同い年の侍従が持っているので、言葉を調べる事も出来ません。困りました…………。そんな私を置いて、会話は進んでいきます。
「逆ハーレム作った女子生徒、あの子が今度は王子様をゲットすべく、動き出したんですって」
「彼女、可愛いですからね」
「でも〜、性格はあんまり良くないわよ〜?」
「ほら、王家には、花嫁は修行してからじゃないと、おおっぴらに表には出されないでしょう? もし、花嫁に決まっても修行についていけないと、白紙にされるらしいし? 大丈夫じゃない?」
…………………。
確かに私達、王家に来る花嫁は、修行をしてから正式に発表されます。かなりの量があるために、王家の修行は数年単位で行われるのです。かくいう私も、王家に恥じないように教育されてきています。
まあ、近年は由緒正しい一族の方で、簡略した修行を花嫁さんに受けさせに来るケースもありますが。
「でも順調に、フラグを回収してますよ?」
「凄いわよね〜、まるで王子様の行動が〜、最初から分かってる〜みたいに動くし〜」
「あながち、間違ってないんじゃない? もしこの世界が、乙女ゲームの世界ならさー」
「んな訳ないじゃ〜ん! あずちんたら〜!」
「そういえば、最後までいた書記さんも、彼女の傍を離れてましたよね?」
「あそこの婚約者、凄い名家の方だよ? 彼女じゃ太刀打ち出来ないって」
なんて会話を余所に、私は背筋から冷や汗が泊まりませんでした。確かにここ最近、気になる少女がいました。よく鉢合わせする子で、私の好みに合う可愛らしい子です。会話も弾みますし、何より趣味が同じなのです。クラシックが好きな私と、音楽が趣味な彼女は、会話もそればかり。ネタが尽きないのです。
「でも…」
勿論、私は王子です。王位継承権はありますが、第3位と低いのです。正直に言えば、私は彼女なら………と考えていました。先程の意味深な会話を聞いていたら、嫌でも考えます。
おかしい………と。
そう、彼女とはよく鉢合わせします。偶然行った、図書室でも、保健室でも、校庭にも、裏庭にも、バラ園にも…………。偶然にしては、出来すぎています。
「何かある?」
そうとしか思えませんでした。冷や汗が止まりません。そんな私の内心を余所に、下では会話が続いていました。
「王子って、確か急に転入してきたわよね?」
「そうですね、確か王子が通っていた学校で問題が起きた為と聞いてますよ?」
うっ!? そんな事まで噂になっているのですか!
「問題って〜、確か〜全寮制の男子学校なのに〜、女子を連れ込んだ馬鹿がいたとかじゃなかったかな〜?」
え!? 箝口令出されたのに、何で知ってるんですか!?
「…………名門なのに、そんな事態になったら、王子を置いておけないわよね」
「確かにそうですね」
因みに僕の名誉の為に言っておきますが、やったのは最上級生であり、僕達一年とは全くこれっぽっちも関係ない方です。しかし、私の父である国王には学校を変えさせるには充分な理由だったようで、即刻、転入が決りました。まあ、僕としては、全寮制の男子校より女子のいる此方の方がいいのは確かです。が、そんな幻想はもろくも数日で消え去りました。
この学校、本当に偏差値が高かったのです。私が元いた学校より科目数も多く、勉強熱心な方が多いのです。まあ、名門の方々がいますから、仕方ないかもしれませんが。焦ったのも仕方ありません。
「でもさー? 王子様は誰を選ぶんだろうねー?」
「そうだよね〜、もうすぐ学校主催のパーティーあるし〜」
「勿論、私達は婚約者にエスコートを頼めますけど、婚約者と年が離れていたり、学校が別の方は代理を頼まないといけませんし」
「エスコート役がいないと〜、生徒会がクジで勝手に決めるからね〜、皆必死だし〜」
………………えっ!? 何ですかそれ!??
初耳な事を聞きました。後で確認した所、どうやらパーティー3週間前までにパートナーがいないと、生徒会が変わりにクジで同学年、もしくは一学年違いの方を選ぶらしいです。うん、最悪です。
仮にも王子たる僕が、パートナーがいないとか、絶対に不味いです! 僕の名誉の為にも、絶対に選ばないといけません!!
「でも姫は………」
彼女は選べませんね。こんな話を聞いてしまっては、私とて嫌です。しかし困りました。私には仲の良い女子などいませんよ?
「あずちゃん! みほりん! ゆかりん! 探したよ〜、もう!」
下から彼女達、三人以外の声がしました。まるでベルのような透き通る声でした。な、何て美しい声でしょう!
「あれ? さくらさん?」
「どうしたのー?」
「どうしたのじゃないですよ! 凄く探したんですからっ!!」
凄い剣幕で、三人に詰め寄っているみたいです。声は凄く綺麗なのに、性格は違うのでしょうか………?
「そうなの〜? 用件は〜?」
のんびりな方が問いますが、何故か、ここからでも分かるほどに、呆れているのはどうしてでしょうか?
「パーティー当日に合唱部が着るドレス! 選んでくれる約束だったじゃないですかっ!!」
「「「あっ!」」」
……………何だか、見てはいけないものを見てしまったようです。気まずいです、物凄く!
「もう〜〜〜〜〜っ! 三人とも、婚約者達の所為で惚気過ぎたんじゃないですか!? 大事な事ですよ!?」
「「「ごめんなさい………」」」
凄い………、あのボロクソ言っていた三人をいとも容易く! 顔が見てみたい! こんな面白い逸材、絶対にいないでしょう!
さあ、全は急げと申します。急ぎ、向かい側の教室に向かい、渡り廊下の下にいる人物を見て…………、固まりました。
全員がタイプの違う美少女達でした。
右から、確かあずちゃんと呼ばれていたボーイッシュな子。
次にゆかりんと呼ばれていた、ふんわりした感じの子。
更に隣は文学少女と呼ばれるような、大人しそうな子。
そして、その三人を謝らせた、最後の子は、まさに私のタイプど真ん中の子でした!
ストレートの黒髪は、遠目でも分かるほどサラサラしていて、間違いなく、よく手入れをされているのでしょう。天使の輪と間違えそうな程、綺麗な輪が髪に出来ていました。顔立ちは、清楚な美人を地で行くような、整った顔立ち。肌はキメ細かく、シミ一つ無い白さ。立ち居振舞いも、一級品と来て、更にあの透き通るような、美しい声! 完璧じゃないですか!
恐らく、今の僕の目は、ハートになっていたはずです! そう、世に言う“一目惚れ”という奴を、私はこの時したのです!
是非とも彼女をエスコートし、未来を共に歩んでいきたい!!
さあ、全は急げです。まずは彼女の名前から。そして、父にお願いし、婚約の手筈を整えましょう!!
◇◇◇◇◇
「ただい………」
「さぁぁぁくぅぅらぁぁぁっっっ!!? お前は一体、何をやらかしたんだぁぁぁぁぁ!!」
「はい?」
あ、冒頭から失礼致します。錫宮さくらと申します。由緒ある一族の次女です。
扉を開けた瞬間、帰ってきて直ぐに、半狂乱の父に出迎えられました。はて、皆目検討も付かないのですが?
取り敢えず、玄関では人目がありますので、父の書斎へ。
「実はな? 先程、王宮から使者が来てな…………その、お前と第三王子殿下と、そのな? 良ければなんだが、婚約しないかと、な?」
「………………………はっ?」
固まったのは仕方ありません。王宮からそんな政略結婚紛いの話が来るなんて、今の現代では、有り得ないお話なんですよ?
「えー、断る事は………?」
「現時点では無理だ」
「理由をお聞きしても…………?」
「ふむ、我が家は神職の家系であり、王宮とも繋がりが無茶苦茶に強い、まあ、今は会社の社長やっとるし、神職の方は分家に任せとるが、会社の方も王宮と繋がりがあった方がいいんだよ、何せ王宮と取引き出来るし、利点が大きいんだ、分家が調子扱いてるから、まあ、押さえつけるには、今回の婚約は願ったり叶ったりなんだよなぁ」
あぁ、確かに。本家より分家が最近、力を付けてきているため、色々と弊害が出て来てましたからね。今回のお話は渡りに船でしょう。
「因みにお前は、王子と会った事は?」
「見掛けた事はありましたけど、直接話した事はありませんよ? クラスも違いますし」
「じゃあ、一体どこでお前を見初めたんだろうな?」
「さあ? 取り敢えず、お引き受けするとお伝えください」
まさか私が、王家に嫁ぐとか、まるでお伽噺のようです。はあ、オペラ歌手の夢は、叶いそうにありませんね。
◇◇◇◇◇
またしても、学園を震撼させる話題が持ち上がった。ついこの間、書記の方が婚約したばかりで、漸く落ち着いた矢先の事。この学園に転入してきた第三王子殿下が、とある女子生徒を見初め、今回、正式に婚約が決定したのである。暫く前、とある噂の女子生徒と、仲良く歩く様を見ていた全校生徒は、もしやと勘ぐったが、正式に決まったのは、由緒正しい錫宮家のお嬢様。既に国王も認め、両家公認の仲なのだとか。噂では王子殿下の方が婚約者にメロメロなのだとか。
勿論、噂の人である女子生徒は、すぐに王子殿下へと確認へ向かったが、相手にもされなかったという。夕方、校舎裏で、何やらガッツポーズと共に、噂の女子生徒が空へと叫んでいた。
「ヨッシャァァァァァ!!! これでシークレットモードに入れるわ〜〜〜〜〜♪♪♪」
なんて、騒いでいた事は、誰も知らない。知るのは神ばかり、だろう。
End?
読了、お疲れ様でした。
本日は記念すべき最終回でございます!
いやぁ、長かった…………。
最初は短編の話のはずでしたが、予想以上の方が読んで下さり、更に続きを読みたいというお声を頂き、ここまで続いた次第です。何だか最終回って、感慨深いですね。読者様に感謝です☆
さて、既に秋月の活動報告を読んで下さった方は知っているかもしれませんが、この作品、完結ではありません!
番外編が待っています!
ただ、お時間は頂く事になります。秋月、書くのが遅いため、番外編はいつになることやら…………。
それでもいいかた、いつか番外編だしますので、お楽しみに♪
さて、本日はありがとうございましたm(__)m
感想、ご意見等、いつでもお待ちしております☆ ただ作者はあまりメンタル強くないので、甘口で下さると助かります。
ではまた、お会いしましょう。