表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Blood ROSE -櫻薬編-  作者: 鈴毬
la nuit 11 すべてをglacageに映して
46/56

収集

 集会所に運ばれたキャンディは即座に地下牢に入れられた。

 足枷、手枷を嵌められた彼は、暗い独房に入れられた。ダレスは独房の中の椅子にキャンディを座らせ、再度鎖を体中に巻きつけていった。

 その間ロイは容姿の変貌、傷の数などを細かく紙に記載していく。


「容姿や傷の確認は終わりました。拘束の方はどうですか?」

「こっちは終わった。ケイ、カユ、その死体を俺の解剖部屋に放っておいてくれ」


 二つの死体は直ちに解剖室へ入れられた。


「我とカユはキャンディのところへ戻る。まだ傷の手当てが済んでいないのでな」


 ケイは紫色の扉を閉めながら早口に言うと帰ってきてから言葉を発しないカユを小突いた。


「ああ、そうしてくれ。俺もこれから数日は忙しくなる。カユ、頼むな」

「……」


 ダレスを筆頭に団員たちで遺体から得られる証拠の収集が始まる。

 この数時間で集まった医学知識のある団員たちがダレスの元に集っていた。

 ケイに引っ張られるようにしてカユはキャンディの元へ戻っていった。ダレスは二人の背中を見送ると、ロイに軽く手を振り自らも仕事に戻っていった。


「さあ、私も自分の仕事……ですね」

「ロイ」


 副団長席に着こうとしたロイに声をかけたのは団長であるルーザだった。


「ルーザ、お疲れ様です。兄たち……いえ、四柱の方々は……?」

「ああ、今別室にて全員が揃っていらっしゃる。これからお前にも同席してもらうぞ」


 疑問を口に出す前に控えめにラルムヴァーグの扉が開いた。

 そこにはキャンディの父であるアップル・ハロウィーン・ミッドが立っていた。団員ではない吸血鬼が訪れるのは珍しく、ロイはこれから始まることを理解した。


「この度は、息子が……」


 アップルは膝を付き、深く頭を下げる。キャンディと同じ色の長い髪が床に垂れた。


「四柱が見えている。奥の部屋へ」


 ルーザが低く促すとアップルは集会所の最も奥の部屋に足を向ける。ロイも後を追う。

 促された部屋内は集会所と同じく石作りの無機質な部屋だった。広くないそこには4つ椅子が並べられており、そこにまた4つの影があった。

 左右は、ロイの兄であるウィリアムとダニエル。そして中央向かって右には小柄な女性の姿があった。

 彼女はリリィ・マクファーソン。奇術師であり吸血鬼界で唯一女性で軟禁されていない。黒の上品なドレスは深いワインのような赤い髪を一層鮮やかに見せており、長い裾から少し見える足は包帯で覆われている。彼女は力がある故に歩くことを自ら禁じているのだ。


 その隣には獅子のような精悍な顔付きの男が座っている。銀の髪をなびかせて、同じく薄い色の瞳をアップルに向けている。

この鋭い眼光の持ち主は、アンドリュー・アーヴァンである。

最高齢の吸血鬼で、生きし伝説と崇められる彼はG.B.R内でも絶対の権力者で最終均衡者と呼ばれている。


「アップル」


 四人のなかで声を発したのは奇術師のリリィだった。幼子のような高い声、だがその口調は老婆の様に落ち着いている。


「あなたの息子は自分の道を過ち、悲劇を起こしました。例え引き金が人間であろうともミッド家の地位を落とすことになります。分かりますね?」

「はい」


 その言葉はミッド家の貴族没落を意味した。


「あなたの仕事は感謝祭のホストを探すことです。それが終わったら隠居なさい。ミッド家の“陰の”仕事も終わりにするのです」

「はい」


 アップルは何度も何度も頷いた。

隠居ということはリリィを始め四柱の審判での最後の優しさだった。

これからミッド家は様々な迫害や差別を受ける。それを考えれば隠居させることは最大の配慮なのだ。


「今までミッド家には大変な仕事をさせました。もう休みなさい」

「寛大な処置、感謝いたします」


 アップルの言った寛大な処置というのは間違ってはなかった。実際だったら一家全員を磔にしてもおかしくはない。しかし、キャンディ一人の責任というにはパーティーを利用した犯罪なので仕方ないのだろう。


「三人とも、私の考案する処置でよろしいですね」


 そういうとリリィは静かに目を閉じた。

 四柱は発言権があるときのみ目を開ける。そうしないと視線で相手を威圧し、より委縮させてしまうからだった。


「意義はない。最終審判までの処置はリリィに任せよう」


 アンドリューが掠れた低い声でいう。どうやら四柱からの第一審判は終わったようだった。

 これから最終審判まで証拠が出るたびに処置や刑を言い渡していく。審判の長さは罪状により差があり、証拠が出そろうまで審判を行い続けるのだ。


「ありがとうございました。私どもは戻り、証拠の分析を進めます」


 ルーザが頭を垂れるとそれに合わせて、ロイも頭を下げる。


「ええ、お願いするわね」


 四柱全員の目が閉じられたのを確認すると三人は背を向け退室する。

 これから4人は最終審判が終わるまでこの部屋に監禁状態になる。それは逆恨みによる四柱殺しを防ぐためだった。

 扉を閉めたルーザが軽く息を吐くと、アップルに告げた。


「最終審判の日まではキャンディが被告というのは伏せておく。早々に次のホストを決め、こちらに報告するように」

「はい、すぐに行います」


 アップルは腰を折ると足早に集会所から立ち去った。


「ロイ、お前もしばらくここから出るな。伏せる、とは言ったがどこで情報が漏れるかはわからない。部屋を一つ貸そう。そこで仕事をするといい」

「ありがとうございます」


 ずっしりと重みのある鍵を受け取った。周りでは団員たちが続々と集会所に集まりルーザからの支持をあおいだ。


 ロイは、葵陽歴45年4月1日、とだけ書かれた羊皮紙を掴むと、入り口近くの書斎に入っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ