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一人百首  作者: 奈月遥
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だいしちじゅうろくしゅ せはしなく ゆふたつあとに すすやかな かせのそよきて よるはしすやか

第七十六首

忙しなく 夕立つ後に 涼やかな 風のそよぎて 夜は静やか


 夏の夕立は忙しない。

 ゆっくりと沈んでいるはずの夕日も、激しく世界を打つ雨と厚く暗い雲が隠してしまい。

 昼の後は、もう夜の気配しかない。

 蝉のうるささも掻き消して。

 どしゃぶりの水玉は、どうしてこんなにもわたしたちを責めたてるのか。

 傘を忘れた人たちが、ずぶ濡れになりながら、雨宿りをしようと慌ててる。

 四半刻も置かずに。

 雲は流れて晴れ抜けて。

 雨は地面を湿らせた名残も乾ききって。

 全てが気のせいだったように、消え去った。

 夕立に降られた間の悪さに、少しむくれながら。

 帰り道を再開して、しばらく。

 蝉に代わり、夜闇の中を鈴虫なんかが鳴いて、静けさを感じさせて。

 その隙間を。

 涼しい風が通り抜ける。

 草をそよがせて、瑞々しい香りを含んで。

 秋を思わせる、夏の夜を。

 帰るのも、ゆったりと。

 五感に触れる様々を、手繰るようにしながら。

 歩いていこうかと。


せはしなく ゆふたつあとに すすやかな かせのそよきて よるはしすやか


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