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一人百首  作者: 奈月遥
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だいしちじっしゅ はるきたり さくらのえだに りっかさく ふゆのおとめの おくることほぎ

第七十首

春来たり 桜の枝に 六花咲く 冬の乙女の 贈る言祝ぎ


 今年はおかしいもので。

 立春、その日に関東を大雪が襲いました。

 いやぁ、個人的には、立春に降った雪の方が、その次の週の雪よりやばいって思いましたね。

 まぁ、その日に雪の積もった坂道をジーパンとスニーカーで普通に歩いた人間がなにを言ってるのかという話ですが。

 まぁまぁ、あれくらいなら会津だと十一月とか十二月の頭くらいのもので。おとなしくお家でこたつに入ってぬくぬくしていれば、なんの心配もないものの。

 なぜ関東の人々は電車も簡単に止まるというのに、わざわざあんな天候の日に外へ出るのか。本当に何に追い詰められているのかと思います。

 お空の顔色をうかがうよりも、上司の顔色をうかがう方が大事なのでしょうか。

 まぁまぁ、でもでも。

 雪というのは、悪いことばかりではないのです。

 ツイッターとかネットとかで、たくさんの雪だるまやかまくらが造られたようで。雪だるまなんて、まるで札幌雪祭りさながらの造形で、ずいぶんと楽しませてもらいました。

 わたしの田舎では、変哲もない鏡餅のように、雪玉を、ででん、と二つ重ねるものしか見たことがないので。

 関東の人はずいぶんと創作意欲が強いのだなぁと感心しました。

 立春の雪が降った当日も。

 わたしが雪の積もる道路を踏む感触ばかり楽しんでいたところ。

 ちょうど下校時間に鉢合わせた中学生たちが、口々に、綺麗とか、すごいとか言っていたのです。

 初めは、雪の白さを賞賛しているのかと思ったのですが。

 枝が凍ってる、花が咲いてるみたいだ、という言葉に、おやと首を傾げて。

 顔を見あげれば、葉を秋に落としきり。

 今はさびしげに枝を風に揺らすばかりだった桜の木々が。

 白く繊細な六花をまとい、咲かしているではありませんか。

 ああ、わたしが思っているよりも、今の子どもたちはすごく、自然を創造的に讃える目と心を思っていたのだなと。

 とても嬉しく思ったのです。


はるきたり さくらのえだに りっかさく ふゆのおとめの おくることほぎ


 この大輪に咲く六花は、春の少女がお役目に就いたことに対して。

 冬の乙女が贈ったお祝いなのでしょうか。あるいは、励ましなのやも。

 ともあれ。

 自分の季節には、一片の風花も散らさず。

 次を担う後輩のためにこれだけ本気を出すとは。

 お願いですから、可愛がるのもほどほどに、そしてみんなに迷惑をかけないようにしてほしいものです。


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