だいろくじゅうごしゅ あましづく ふらばふるだけ おもひだけ まぢりながれて ほほをぬらすも
第六十五首
雨雫 降らば降るだけ 想ひだけ 混ぢり流れて 頬を濡らすも
春が終わるのに、嘆き悲しむ天よ。
苦しいでしょう。
辛いでしょう。
わかりますとも。
その感情を抑えることなんてありません。
いくらでも、涙を流すとよろしいですよ。
地面を濡らし尽くし、川の嵩を増すほどに、降らせられるかぎり降らせてしまえばいいのです。
その胸に、無暗に哀しみを溜めこむ必要などないのです。
どうせ、心に降る哀しみは、雪のように降り積もって、息を圧迫するだけでなく。
自らの重みで溶けだして、堪えようとも堪えきれずに、こぼれてしまうのですから。
いっそのこと、全て喚き散らしてしまいなさい。
それで、お願いだから。
わたしの頬を伝うこの熱い雫も、雨だということにして、一緒に流し去ってくださいな。
誤魔化してくださいな。
誰かに、ましてやあの人に気づかれて、女々しいと罵られる前に。
こんな雫ひとつで未練がましいなどと思われても困るのです。
わたしだって、分別を弁えて、納得しているのですから。
思い通りにならない想いで非難されたら。
どうすればいいのか、わからなくなります。
だから、どうか。
わたしの気分も一緒に晴らすつもりで。
雨を降らしきってください。
あましづく ふらばふるだけ おもひだけ まぢりながれて ほほをぬらすも




