だいよんしゅ まちわびて ゆめにおちつつ おもふひと であひてをかし はるのまどろみ
第四首
待ち侘びて 夢に落ちつつ 想ふ人 出逢ひてをかし 春の微睡み
これを目にした新入生たちに、「恋の歌ですよね」と言われたのも、もう懐かしい。
いえいえ、これはあなたたちに贈った歌ですよ。
この歌が綴られた冊子は、あなたたち新入生にしか配られないのだから。
そう、余りにあなたたちに逢えるのを楽しみに想いすぎて、まだかまだかと、それはもう早くから待ち侘びていて。
心情的に、余りに長く待ちすぎて、春の麗らかなぬくもりに当てられて、ついお昼寝などしてしまい。
その夢の中で、わたしはあなたたちと出逢い、言葉を交わしたのですよ。
そうして、目が覚めたら、本当にそこにあなたたちがいるではありませんか。
春の微睡みの中、こんなにおかしく、趣き深い出逢いが他にありますか。
まちわびて ゆめにおちつつ おもふひと であひてをかし はるのまどろみ
先の歌の、さらに翌年。わたしにとって二つ下の新入生を迎える時に詠んだ歌でして。
わたしは時たま、夢に見たことを現実に体験したり。
既視感、などというのは簡単ですけども、それにしてははっきりと見えるものでして。
もっとも、夢に見た時には、まだ起こっていないことを覚えてられなくて。
実際に目の前で起きた時に、ああ、あの時夢に見た通りだと、思うただそれだけのこと。
それを思い出すのは、少しばかり楽しいんですけどね。
それはそれとして、歌の音といい、意味といい、使った漢字といい、まさしく恋歌ですね、これは。
まぁ、わたしにとって「恋」とは、結ばれてもいいかなと思える人とするものでして。思い焦がれるのは、まだ恋の手前、と感じるところです。