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一人百首  作者: 奈月遥
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だいさんじっしゅ しらぬまに とこよりうせし わがきみよ さにいづるとて 陽とともにとぞ

第三十首

知らぬ間に 床より失せし 我が君よ さに出づるとて ひと共にとぞ


 朝、気付けばもう、あなたはいない。

 ぬくもりすら残っていない布団に、なんとなくわかる程度の隙間では、あなたが確かにここにいたという実感も湧かないの。

 わかっていますとも。

 世間体というものがあるのは。

 お仕事、名誉、立場。大切なんですよね。

 後ろ指差されたり、陰口を叩かれたり、嫌なんですよね。

 そんなふうに、わたしと恋仲であるのを、ひた隠しにされるのも、もう慣れましたし、納得も、まぁ、してなくはないですよ。

 でもね。

 朝は、太陽が東より昇り、草木に暖かな光を贈る頃に出られてもいいんじゃありませんか。


しらぬまに とこよりうせし わがきみよ さにいづるとて 陽とともにとぞ


 そうしてくれれば、わたしも、あなたをお見送りできますのに。

 その時に、わたしは笑顔をあなたに贈れますのに。


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