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だいにじゅういっしゅ ゆふなぎに あかになみうつ あかねぐも おともなくとも こころゆられる
第二十一首
夕凪に 赤に波打つ 茜雲 音もなくとも 心揺られる
秋の日はつるべ落とし。
太陽は、もう山に沈みきって。
暮れなずむ空。
茜雲は、さざ波のように、穏やかな調べ。
凪。夕凪。失われた風。誰も、誰かを遠くに連れて行ったりしない。さらわれることもなく、この足で歩く。思いのままに。
イメージの中で、波打つ音。
海の音。
転じて。
聞き覚えのない空の音。波の音。光の音。紅の音。
炎の音? いいえ、命の鼓動。
音がないのに。
音がなくても。
命が感じ取る。その響きを。
さわさわと。
ふつふつと。
ゆらゆらと。
溢れてくる。
空に手を伸ばして。
紅の波に、心をたゆとってみる。
ゆられる、ゆられる。
きっと、ゆりかごの中はこんな心地なんだろう。
ゆふなぎに あかになみうつ あかねぐも おともなくとも こころゆられる




