表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一人百首  作者: 奈月遥
17/103

だいじゅうろくしゅ ほそあめの しらいとうむは じひなれば ふりたるかさね てんいむほうと

第十六首

細雨の 白糸績む(生む)は 慈悲なれば 振りたる(降りたる)襲(笠音) 天衣無縫と


 天衣無縫。天女の衣には縫い目が全くない様。転じて、詩歌にわざとらしい技巧やひっかかりがなく、自然と読めてその内容がすっと心に入るような、そんな素晴らしい作品を指す言葉。

 細い白糸のような雨は、草木の成長を促す天の恵み。

 その糸の滴は、あるいは木の幹を伝って地面に沁み込み、あるいは川の流れに混じっていく。宙に降る時は糸筋も見えるけれど、流れに織り込まれれば縫い目も見えず、どれがその糸なのか判別も付かない。

 そして袖を振られる襲のように、たおやかな流れに乗って、どこかへ、いつしかは海へと向かうのだろう。

 地面に眠る雨水は草木を育て、草木は動物たちの糧となり、つまりは、この雨が地球の命を支えてくれている。ありがたい、とても深い天の慈悲。

 雨の中。

 傘を差して立ってみれば、雑踏の音も遠く、途絶えることない雨音が包み込んでくれる。

 静かな、わたしだけの世界。

 それが、ふたりだけの世界なら、もっと素敵ね。

 聞くところによると、雨の中で傘を差して、二人で寄り添ったそこが一番きれいな音が響く場所らしい。雨音が声を反射して、傘が声を集めてくれる。ささやきがおすすめだって。

 うん、よくわかる。

 

ほそあめの しらいとうむは じひなれば ふりたるかさね てんいむほうと


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ