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一人百首  作者: 奈月遥
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だいじゅうよんしゅ しらかはの せきをこえては やまにゆき ひとはゆくとも われはかへると

第十四首

白河の 関を越えては 山に雪 人は往くとも 吾は帰ると


 昔は辺境とまで言われたみちのくの入り口、白河の関。

 大学に入るため、六年前にここを越えていったのも、もう懐かしい昔のことに思える。

 今は、就職先を求めて、道のりを逆に辿ってく。

 白河の前後で、山の装いは急に変わり、雪化粧した道は窓越しに寒さを染み渡らせてきた。

 その雪が阻むから、ここより先を街道が終わったさらに奥の未開の地としたのでしょうか。確かに、雪に慣れていなければ、進むのは厳しいと思う。

 けれど、ここより先、雪の深い東北に暮らす人々は、心温かな人と知ってる。

 こないだ、関東で大雪――まぁ、雪国にいたわたしたち家族からすれば、普通の雪なんだけど、その雪に街が沈んだ次の日。

 ご近所さんたちが、助け合って雪片しをしてた。特に、お出かけ中の家とか、一人で暮らすお婆さんの家の前とか、わたしもたくさんの他人の家の雪片しをしたもので。

 そこまでやらないと、けっきょく車が通れないとか、そんな理由もあるんだろうけど。

 雪が助け合いの心を引き出してくれたわけで。

 あと、声かけないと雪を投げる時にぶつけられそうで、知らない人にもあいさつをするようになったし。

 人と人を繋ぐ雪。

 文武の道ではその奥底を奥義という。

 奥義とは、本来は経典の真の意味を指す。

 人の繋がりを育む陸奥は、一乗の道の奥義を秘した場所なのかもしれない。

 

 たとえ、先人たちがその奥の見ず知らずの土地へ行くと歌ったのだとしても。彼の地に暮らす人の温かさを知るから、わたしはその地へと帰ると言うよ。


しらかはの せきをこえては やまにゆき ひとはゆくとも われはかへると


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