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一人百首  作者: 奈月遥
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だいじゅうさんしゅ しとしとと まちぬらしたる かんのあめ ゆきでありせば あへなしことを

第十三首

しとしとと 街(待ち)濡らしたる 寒の雨 雪でありせば 敢へ無しことを


 冬の雨は、正直嫌い。

 冷たくて、寒くて。

 絶え間なく続く音も、わたしを閉じ込めてくるようで。

 あぁ、あの日もこんな雨の中で待っていたんだ。

 待ち合わせ場所で雨宿り。

 しとしと。降りしきる雨は、容赦なく街を濡らして冷やしていく。

 ここで待っている間に、わたしも濡れて体を冷やしてしまった。

 あぁ、寒い。

 待っても待っても、あの人は来ない。

 わたしは時間前行動の人。待ち合わせの一時間前に辿り着く。

 あなたは時間にルーズな人。待ち合わせの一時間後でも連絡も来ない。

 合わせていくらになるのか、みじめになるから考えない。


しとしとと まちぬらしたる かんのあめ ゆきでありせば あへなしことを


 あぁ、こんなに冷たい雨の中にいると、前の生を思い出す。

 雨に打たれて、拾われて、段ボール箱の中から抱き上げられたちょうどその時。

 助けようとしてくれた人の腕の中で、小さく一鳴きして、結局、死の冷たさしか伝えられなかった哀れな子猫。

 わたしは、その人からぬくもりをもらったのに。奪ったのに。

 何も返せないで、一息でさよなら。

 あぁ、あぁ。

 まだ来ない。

 まだ逢えない。

 ぬくもりが恋しい。

 あぁ。この雨が、故郷に降る雪であったら。

 街を白く化粧する雪であったら。

 羽のようにふありと、わたしに天に昇る感覚に浸らせてくてる綿雪であったら。

 こんな気持ちにもならず、いくらでも待っていられるのに。

 雪の幻想が時をなくしてくれるのに。

 なんて、しょうもないことを考えてしまうのか。

 あぁ。またわたしは、ひとりぼっち。


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