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RISE  作者: 羽黒鷹丸


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1/1

序章 強さを求めて


       1


「はぁはぁ・・・・・・(遅刻しちまう)」

 お花見日和の時分、スパイキーショートヘアの少年は、学校に向かって全力疾走していた。

 轟宇宙(そら)、高校三年生。身長165cm、体重47kg、虚弱体質。

 彼は朝から腹痛に襲われ、いつもより出発が遅れてしまった為に急いでいるのである。

「はぁはぁ・・・・・・」

 

「オッス轟、朝から汗だくだな」

 教室のドアを勢いよく開けて入って来たソラに、彼の友達の松永が半笑いで挨拶してきた。

「しょうがねぇだろ。朝から腹の調子が悪くてトイレに籠ってたら、遅刻しそうになっちまってガンダしたんだから」

「ふぅ~セーフ」

「何だぁ? 今野、オメーも腹痛か?」

「ちげーよ。俺は推しの朝枠見てたら、遅刻しそうになっちまったんだよ」

 今野は松永に言い返した。

「朝から騒がしいじゃん」

「おはよう、轟くん」

「あ~おはよう、浅野に染谷」

 ソラ達が騒いでいる中、いつものように彼等の女友達二人が絡んできた。

 高校一年生の時に、クラスが一緒になって仲良くなってから、これが朝の日常になっていた。

「で、何話してたんだよ」

「コイツ等が夏でもねぇのに汗だくになってて、面白れぇなって話」

「轟くん、また少年漫画でも夜更かしして読んでたの?」

「まぁ読んでたし夜更かししたさ、俺は漫画の強くて真っ直ぐな主人公(ヒーロー)みてぇな奴を目指しているからな」

「で、寝不足で腹痛になって遅刻しそうになったと」

「そうだよ・・・・・・」

「で、コイツは推してる配信者の配信見ててこのザマって訳。ったくどうせアーカイブで見れんだろう? 今見なくてもいいのによ」

「分かってねぇな。いいか? 狭霧美鈴は基本、深夜配信で朝枠すんのは珍しいんだよ。だったらリアタイしてコメ打ちてぇだろうが!」

「とまぁこんな感じだ」

「変わんねぇな、オメー等、三年になっても・・・・・・」

 浅野が変わらないモノを噛み締めていると、チャイムが鳴った。

 そして教室のドアが開いて、担任教師が教壇に立って挨拶をした。


「それでは明日から授業が開始するから、忘れ物をしないように」

 チャイムと共に、担任教師は教室を後にした。

 教室の生徒達も、それぞれの目的地を目指して教室を出た。

「それじゃ部活あるから、またな」

「轟くん、松永くん、また学校で」

「ふわ~、またな」

「また明日」

 松永とソラは、それぞれ挨拶を返した。

「あぁ~、今年から受験生だとか言われんでも分かってるっての」

 松永は伸びをしながら漏らした。

「まぁそう言うなよ」

「はぁ~、お前って進路とか決まってんの?」

「俺? 別に決まってねぇけど」

「俺も。他の奴は決まってるっぽいけどな~」

 松永は目線を上にして、虚空を見つめて言った。

「松永、轟、俺も昼から塾あっから帰るわ」

「ん? ああ、じゃあな~」

「おう、頑張れよ」

 今野は、スマホ片手に教室を出て行った。

「アイツも受験に向けて頑張ってんな」

「ああ、アイツ大学でプログラミングの勉強したいんだと」

 松永は荷物を片付けながら話し、続けた。

「浅野は部活で推薦貰って、体育系の大学に行くだろうし、染谷は獣医になる為に、偏差値たけぇ大学に通うだろうさ」

「すげぇな、みんな・・・・・・」

「なぁ轟、昼メシ行くか?」

「あ、ああ」

 ソラ達は荷物を纏めると、いつの間にか二人だけになっていた教室を後にした。


「だりぃけど、また明日から頑張ろうぜ」

「ああ。じゃあな、松永」

「またな~」

 ファーストフード店で昼食を取った二人は、そのまま遊びに出掛けた。そして十六時頃にカラオケ店の入り口で、二人は反対方向に別れた。


「オメー、人助けしてんの担任に言ってみろよ。ボランティア活動として評価してくれて、推薦とか貰えっかもしれねぇぞ?」

「俺は別に、点数稼ぎの為に人助けしてんじゃねぇよ。俺の気が向いた時にやってるだけ、ただの気紛れなんだよ」

「ふ~ん、勿体ねぇな」


(分かってる。だけど感謝の言葉、それでさえ求めて人助けするのは何かちげぇんだ。そんなの、そんなの・・・・・・主人公(ヒーロー)じゃねぇ)

 ソラは険しい顔をして、駅に向かって歩いた。その途中、駅の近くに在る、公園が目に入り、休むことにした。 

「ふぅ・・・・・・」

 ソラは遊んでいる子供達の間を通って、読書している青年の隣のベンチに腰を下ろし、一呼吸した。それからぼっと前を見つめた。

 遊んでいる子供達、そして公園に入って来た頭が髑髏で鋭い爪をした異形の者数体が、彼の目に入った。

(気合入ったコスプレだな~)

 ソラは特に気にしないまま、制服のポケットからスマホを取り出し、画面を見始めた。

 やがて猛獣の様な足音が、遠くから聞こえてきた。

 その音は徐々に大きくなり、急に聞こえなくなった。

 ソラは前に気配を感じ、顔を上げた。

 すると異形の者達が並んで、ソラを囲んでいた。

「な、何スか?」

 ソラは目の前の集団に声を掛けた。しかし応答は無く、対象は微動だにしなかった。

 ソラは落ち着かず、視線をスマホの画面と集団と交互に向けていた。

 その時だった、

「あ゙あ゙あ゙!」

 いきなり真正面に居た異形の者が吠えて、鋭い爪をソラに向けてきた。

「痛っ・・・・・・え?」

その爪はソラの左頬を掠り、血を滲ませた。

「う、うわ~」

「キャーッ!」

 怪物の行動で、公園の落ち着いた空気は一瞬にして変わり、現場は騒然とした。

(コイツ等、俺を狙ってんのか?)

「あ゙あ゙あ゙!」

「・・・・・・みんな早く逃げろ‼ ん! 俺はここだ、化け物共‼」

 立ち上がってソラは叫び、足元の砂利を握って集団の顔に向かって投げつけ、追いかけて来るように扇動した。

「はぁはぁ・・・・・・ぐわっ」

 走っている最中、集団の先頭で追いかけていた怪物にタックルされ、ソラは自販機に激突した。

「クッソ・・・・・・」

 怪物達に囲まれたソラは、反転しバッグから折り畳み傘を取り出すと伸ばした。そして右手に警棒の様にした折り畳み傘、左手に足元に落ちていた割れたコンクリートの破片を握って臨戦態勢をとった。

「オラーッ!」

「シャァ!」

「がっ!」

 ソラは右手を振り上げて、怪物の頭部を攻撃した。しかし頭部へ届く前に怪物から腹部へタックルされ、衝撃で彼は自販機に背中から打ち付けられ、へたり込んだ。

「・・・・・・チ、チクショウ」

 ソラは顔を歪ませ、眼前の敵を睨む。

 曇天の空からは、春雨が降り始めた。

「シャァ」

「(俺が死ぬ? ざけんな!)こんな訳わかんねぇまま終わってたまっかよォ!」

「グァァァ!」

 歯を剝き出しにして左手を振り上げたソラの顔に、怪物の爪が突き立てられそうになった瞬間、灰色の空から光の柱が、ソラと怪物の間に伸びてきた。

 怪物達は怯み、ソラは茫然とした。

「何が起こったんだ⁉ ・・・・・・コレは?」

 ソラは柱の中に、封筒が浮かんでいるのを見つけた。

 彼はその封筒を、傘を落として空いていた右手で掴んだ。

 すると、

「な、何だ⁉ うわぁぁ――」

 ソラの体が光に包まれ、光の柱が消えた。そして彼は自分の体に得体の知れない力と、何かが弾ける感覚を感じた。

「訳分からねぇ事ばかり――だけど今の俺ならイケるって事だけは分かるぜ。オラァ!」

 ソラは勢いよく立ち上がり、右拳に溢れる有りっ丈の力を込めて、真正面の怪物の顔面にぶつけた。

 そのストレートを喰らって怪物は、平然としていた。

「・・・・・・は?」

「ブァァア‼」

「がふっ」

 ソラは動揺し、一瞬固まった。

 その隙を殴られた怪物は逃さずに、反撃の頭突きをソラの顔面に浴びせた。

 ソラは鼻血を垂れ流しつつ、左手の投擲物を群れに向かって投げた。

 その抵抗も空しく、ソラは袋叩きにされた。

 ソラは意識が朦朧としていた。

 このままソラが殺されると思いきや、怪物達は突如、後ろを向いた。

 ソラはくらっとしたまま、怪物と怪物の間の隙間から、集団が見ている方を見た。すると、公園の外の道に傘をさして駅に向かって歩いている染谷が居た。

「染谷⁉ ・・・・・・走れぇ‼」

「え? 轟くん⁉」

「ブァァァ‼」

 怪物は狙いを定めて、襲う態勢に入った。

「止めろ・・・・・・染谷に手を出すんじゃねぇ」

 ソラは正面の怪物を羽交い締めにしたが、振り解かれてしまった。

「待て! 待ってくれ・・・・・・(俺には、大事な友達を護る力もねぇのか)」

 怪物達は、飛び跳ねて獲物に突っ込もうとした。その時だった、

「ゲェェ・・・・・・」

 空から無数の光る矢が飛んできて、怪物達の体を貫いていった。

 怪物は動かなくなると、忽ち煙になって消えた。

「あ、ああ・・・・・・」

 ソラは放心しつつも何処か安堵し、力が抜けて、そのまま大の字に倒れた。

 そして意識が薄れていくソラ、そんな彼に向かって足音が近付いてきた。

 やがてその足音の主は止まり、倒れた少年に向かって悪態を吐いた。

「コレを受け取っておきながらやられるとは、まるでカスだな」

「冠・・・・・・」

 罵倒して去って行くブロンドの髪色の少年を見つめている内に、ソラの意識は途切れた。

 公園には、パラパラと雨音だけがした。


「あ、よかった目が覚めた」

「染谷・・・・・・俺は・・・・・・」

 目を覚ましたソラの左隣には、傘をさしてしゃがんでいる染谷が居た。

「轟くん、一旦あそこで雨宿りしよう」

 染谷はソラを、屋根のあるベンチに誘導しようとした。

「雨・・・・・・アッ!」

 ソラは全てを思い出したと同時に、ある違和感を覚えた。

(俺は怪物達に襲われ、フルボッコにされて、血塗れの傷だらけになった筈だ。それなのに何故痛みも傷跡もねぇんだ?)

 ソラはそれだけに気を取られて気付いていなかったが、もう一つ不思議な事はあった。

 彼の体が怪物達に倒される前より、微々たる位で大きくなっていたのである。

「染谷!」

 ソラは上体を起こして、染谷を呼んだ。

「わっ! な、何? 轟くん」

「冠、見なかったか⁉」

「冠くん? 見たよ。あ、そうだ冠くんから伝言を頼まれてたんだった」

「伝言だと?」

「うん。『お前も折角招待状を貰ったんだ、学園に入学してみたらどうだ? その中に明日の入学式の概要が書かれている。俺は通うことにしたぞ』って。私は、招待状って何の事か分からないんだけど」

「招待状? コレの事か」

 ソラは右手に握っていた封筒の封を切って、中を見た。


 ソラ・トドロキ様。 

 我が神童学園新入生の人間界枠に選ばれました。

 つきましては、アナタを含めた新入生の入学式を執り行いたく存じます。

 日時は、アナタの世界で明日の午後十六時。場所は、この招待状を空に翳して頂ければ到着致します。

 それでは、明日お会いできることを楽しみにしております。

 改めて我が学園新入生として選出された事、及びこの紹介状をきっかけとして、アナタ固有の能力と神気が覚醒した事、心よりお慶び申し上げます。

 理事長。


(・・・・・・ここに行けば、俺に何が起こったか分かんのか)

 ソラは中身を封筒の中に戻した。そして立ち上がった。

(――強くなれんのか)

「轟くん?」

「わりぃ染谷、また明日な」

 ソラは染谷に笑いかけると、走り出した。

「轟くん⁉」

 ソラはびしょ濡れの体を揺らして、弾丸の様に勢いよく駅に向かって走った。

 そして電車に飛び乗って自宅に帰った。

 その胸に護れずに護られた悔しさと、この先の展開への期待とを抱きながら。


       2


「オッス、轟」

「松永おはよう~」

「眠そうだな、どしたん?」

「いや、特に何もねぇよ」

「そうか。そういや一限目から数学だぜ、だりぃな」

「だりぃな」

 ソラと松永が他愛も無い会話をしている内に、仲間が集まり、やがてチャイムと共に担任が来て今日が始まった。

 

「ふぅ~。(いよいよか)」

 駅の近くに在る人影も疎らな公園、そこはソラにとって始まりの場所。

 その場所の公衆トイレの裏に立ちながら、彼は少し緊張していた。

(いくぜ!)

 ソラは招待状を空に翳した。

 すると快晴の空から光の柱が伸び、彼を包んだ。

 それから彼と共に光の柱は、霧散した。


「ここが、俺を強くしてくれる学校か・・・・・・」

 ソラを包んでいた光の柱が消失し、彼は目的地に辿り着いた。

 そこは校舎や校庭等、学園に関係したモノのみが存在する異空間だった。

(さて中に入るか――何だコレは⁉)

 ソラが招待状を仕舞おうとした時、それは生徒手帳に変わっていた。

 ソラはゆっくりページを捲った。そこには名前とある事が記されていた。

(俺の能力? えっと『完全会得(フルリスペクト)・・・・・・心から認めた相手の技を完全再現できる』。それと『劣等上等・・・・・・敗ける度に肉体と神力が僅かに強化される』か。・・・・・・何かよく分からねぇな)

 ソラは生徒手帳を閉じ、ポケットに突っ込むと、壮麗な外観の学園の中に玄関から入って行った。

 玄関には、入学式の立て札が立ててあった。どうやら体育館で入学式を行うらしい。

 ソラは各所に立てられた案内に沿って、体育館へと向かった。

 向かう途中で目に入った中庭や部屋、体育館まで行く為に歩いている廊下の感じから、テレビで見た事のある海外の寄宿学校と、自分が通っている高校とが混ざった様な内観をしていると、彼は感じた。

 体育館に到着したソラは、何処に居ようかと周りをキョロキョロしていた。

 エルフ風の青年や、ロボット、外国の王女様の様な女の子、その中に彼が居た。

「よう、冠」

「ふん、まさかお前も来るとはな」

「オメーが誘ったんだろ」

「俺が? ふざけるな、お前ごときを何故誘わねばならん」

(何だコイツ、面倒くせぇな)

「そういやお前は何で入学したんだ? お前みてーなタイプは、興味無さそうじゃん」

 冠は、ソラの発言を鼻で笑った。

 冠朔夜は、容姿端麗で文武両道の金持ち、更に生徒会長をしている人物だった。

 それ故に、浮世離れした印象をソラも含め、周りは持っていた。

「面白そうだからだ」

「何⁉」

「俺に人間界は簡単過ぎた、先の未来も予想が付く。しかし異世界、異能力が存在するこの場所はどうだ? 俺の力がどこまで通用するのか、どこまで俺はいけるのか想像もつかん。だからこそ興味が湧き、ここに入学することにした」

(な、なんて自己肯定感がたけぇ野郎だ!)

 唖然としているソラの顔を見て、冠は満足そうにしていた。

「会場の皆さん、間もなく入学式を行います。静粛にお待ちください」

 学園の教師と思われる者がアナウンスをし、場は静かになった。

 暫くして、司会の者が入学式の挨拶をして、式は始まった。


 入学式が終わって新入生達は、教室に案内された。

「はぁ~い、皆揃ってるわね」

 入学生が揃った頃合いになって、妖艶な美女が教室に入って来た。

 そして教壇に立った。

「みんな初めまして~。みんなの担任になったハンナ・クインビーよ、よろしくネ♡」

 担任の挨拶に熱狂する者もいる中、ソラは(やっぱ普通の学校と違うだけあって、半分仮面を付けてた爺さんの学園長といい担任の先生も濃いな)と思った。

「さて、それじゃ入学式で学園長がおっしゃった事を含め、色々話していくわね~。ちょっと長いけど寝ちゃダメだからね~」

 ハンナは前置きをして、生徒達に話し始めた。

「先ず招待状について改めて話すわね。招待状は学園と接点を持った者にしか見えなくて、あらゆる世界から新入生に選出した者に送ってるの。後、みんな招待状を受け取った時に変な感覚を感じたと思うんだけど~、あの瞬間みんなはそれぞれ固有の能力と、『神気』という力が使えるようになったの。因みに固有の能力は、今話したタイミングで発現するモノと、各々のタイミングで発現するモノの二種類があるわ。あ、それと招待状の事で一つ。みんな招待状を受け取る前に怪物に襲われたのを覚えてるよね、アレは入学前の余興みたいなモノでね、あの怪物――いや使い魔人形を使ってみんなの実力を測ってたの、ゴメンね♡ でも危険は無かったと思う、アタシ達先生か、学園の卒業生が陰で見守ってた筈だから」

(危険は無かっただと⁉ どういう基準で言ってんだ、あの先生は)

「次は・・・・・・学園についてか。この神童学園は神気を研究し、世界平和を目指す事を目的とした学園です。それと卒業生は、危機にある世界を守る為に学園が創った組織、調和の(クロス・)守護者(ガーディアンズ)のメンバーに登録されます」

 勝手に学園が創った組織に入らされる事に、新入生達は難色を示した。

「大丈夫よみんな、危機に瀕した世界に派遣される事が任務だけど、無理なら断っても構わないから」

「調和の守護者ってぶっちゃけ強いんスか? 何か魔王に勝てずに俺等の世界、魔界から撤退したって聞いたんスけど~」

「ギドくんだったね、確かに魔王にはどんな攻撃も効かなくて、調和の守護者の戦士も今は疲弊し、魔界から撤退しているからそうかもしれないね。だけど、世界の平和を脅かす魔王を倒せる可能性のある者がこの学園に沢山居たら、調和の守護者も強くなれるんじゃない? 例えばギド君、キミとか」

「ハハッまぁ俺強いし、かもしんないッスね~」

「まぁこれで一通り話したけど、質問ある?」

 生徒達はそれぞれ色んな顔をしていたが、質問する者はいなかった。

「無さそうね。それじゃ明日から授業あるので、明日この教室に集まってね」

「先生」

(冠⁉)

「明日の何時ですか? 俺は人間界でも学校に通っているので、予定が重なるのは避けたい」

「それなら大丈夫、必要な日数授業に出席して、テストを受けたら進級できるから。だって学園が在るこの空間の半年は、他の世界の一か月になるから、全部の授業に出席するのは無理でしょ?」

「なるほど、分かりました」

「じゃあ最後にみんな廊下側から順に一列に並んで、アタシの前に来てくれるかな、ちょっと学園の決まりでやる事があるの。それが終わった者から帰って大丈夫だから。それじゃ並んで~」

 担任が呼び込むと、生徒達は戸惑いながらも一列に並んでいった。

 担任は、生徒手帳を見せるように指示をしてその中を確認していった。そして中身を確認してはリアクションをして、生徒達を見送った。

「次はカルーナ・ノーリスさんね、能力は『御伽の絵本(フェアリーテイル)』と。あら中々いい能力ね、授業頑張ってね♡ ・・・・・・次はピーター・ハットくんね、能力は『森の射手(ロビンフッド)』と。うん、悪くない能力ね、強くなるのを楽しみにしてる――」

 列の人数は随分減っていき、いよいよソラの番が近付いてきた。

「次はサクヤ・カンムリくんね、キミ凄いね! もう能力が二つとも発現してる。能力は『武甕槌命』に『那須与一』、能力も優秀♡ これからの成長に期待してるわね。次はソラ・トドロキくんね、え⁉ キミも二つ能力発現してるんだ~すごっ。で、能力は『劣等上等』と『完全会得』・・・・・・うん、アタシ等がレクチャーしたら強くなれるよ、人間界の生徒で前例もあるし。だから、頑張って卒業しようね♡ 次は――」

(くそっ!)

 ソラはハンナに励まされた事が癇に障りながら、教室を出た。

 そして掃除をしていた用務員の老爺と廊下ですれ違いながら、校庭に出た。

(一旦元の世界に戻るか。生徒手帳を空に翳したらここに来れたし、同じようにしてみるか・・・・・・)

 ソラは生徒手帳を空に掲げた。するとこの場所に導かれた時と同じように光の柱が彼を包み、元の世界に戻って来た。

 ソラは辺りを見渡してみた。

 その様子は、あの空間に行く前とそれほど変わっていなかった。

 担任の言っていた事は、どうやら本当だったようである。

(多分あの世界なら数時間後に、明日が来るんだろうな。・・・・・・強くなる為に、一回目の授業出てみっか)

 ソラは西日を見つめ、両拳を握った。


 

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