メタ回
――暗転。
スポットライト。
そして。
「のだぁぁぁぁ!!!!!!」
伊藤レイ(51)、登場。
ロブスターの亡霊Tシャツ。
ロブスターカチューシャ。
ペンライト二刀流。
完全装備。
「読者ぁぁぁぁ!!!!!!」
画面の向こうを指差す。
「聞くのだぁ!!!!!!」
妙に圧が強い。
「吾輩ぁ!」
胸を叩く。
「人生で色々失敗してきたのだぁ!」
観客席(概念)が静まる。
「婚活失敗!」
「キャバ嬢に五百万!」
「窓際社員!」
「山登り遭難未遂!」
「高級レストランでフォークに敗北!」
情報量が多い。
「でもぉ!!!!!」
レイはペンライトを掲げた。
「ロブスターの亡霊だけは本物だったのだぁぁぁぁ!!!!!!」
どこからともなくSE。
\ボイル!ボイル!/
「うおおおおおお!!!!!!」
レイ、一人で盛り上がる。
「読者ぁぁぁ!!」
「人生辛くないのだぁ!?」
急に刺しに来る。
「仕事ぉ!」
「人間関係ぃ!」
「健康診断ぉ!」
「将来への不安ぁ!」
「推しの結婚ぉ!」
「うわああああん!!!!!!」
急に泣いた。
しかし即復活。
「そんな時こそぉ!」
ペンライト高速回転。
「ロブスターの亡霊なのだぁ!!!!!!」
スクリーン(概念)に映像。
海老ステップ。
深海EDM。
甲殻類コール。
謎のバター醤油演出。
「意味わからないと思ったのだぁ!?」
レイはドヤ顔した。
「吾輩も最初そうだったのだぁ!」
説得力がすごい。
「でもぉ!」
「気づいたら十年以上通ってたのだぁ!」
「怖いのだぁ!!!!!!」
自分で言う。
「読者ぁ!」
レイは真顔になる。
「人生にはなぁ!」
「意味わからないけど好きなものが必要なのだぁ!」
「……」
「ロブスターでもいいのだぁ!」
謎の力説。
「甲殻類でもいいのだぁ!」
「大事なのはぁ!」
ペンライトを胸に当てる。
「“これ好きだな”って気持ちなのだぁ……」
急にちょっと良いこと言った。
「吾輩ぁ……」
レイは遠い目をした。
「若い頃ぉ……」
「もっと立派な人生になると思ってたのだぁ」
しんみり。
「でも現実ぅ!」
「ビール腹!」
「窓際!」
「ロブスター!」
「でもぉ!」
レイは笑った。
「ライブハウスで笑ってぇ!」
「ファミレスで語ってぇ!」
「好きな女と海老ステップしてぇ!」
「それなりに幸せだったのだぁ!」
妙に説得力がある。
その時。
後ろから声。
「……何してるの?」
「のだぁ!?」
美咲登場。
呆れ顔。
レイは一瞬固まる。
「メタ空間に来るななのだぁ!」
「あなたが呼んでるようなものじゃない」
「読者に布教中なのだぁ!」
「迷惑な宗教みたい」
しかし。
レイは本気だった。
「美咲ぃ!」
「なに」
「読者にロブスターの亡霊の良さを伝えるのだぁ!」
「もう十分伝わってると思うけど」
「足りないのだぁ!」
レイは熱弁を始める。
「まずぅ!」
「はいはい」
「曲が良いのだぁ!」
「まあ妙に耳に残るわね」
「ライブが熱いのだぁ!」
「そうね」
「あとぉ!」
レイは真顔になった。
「疲れたおっさんに効くのだぁ……」
「……」
美咲は少し黙った。
それは。
たぶん本当だった。
ロブスターの亡霊は。
変な曲だ。
意味不明だ。
でも。
“疲れた大人がちょっと笑える場所”ではあった。
「……」
レイはペンライトを振る。
「読者ぁぁぁ!!!!!」
「ライブ行けなのだぁぁぁぁ!!!!!!」
「もう解散したでしょ」
「のだぁぁぁぁぁ!!!!!!」
レイ崩れ落ちる。
「うわあああああん!!!!!」
「また泣いてる」
「ぴぴるちゃぁぁぁぁん!!!!!!」
しかし。
数秒後。
レイは立ち上がった。
「でもぉ!」
「うん」
「ロブスターの亡霊は永遠なのだぁ!」
「便利な言葉ね」
「曲は残るのだぁ!」
「まあそうね」
「甲殻類精神も残るのだぁ!」
「何その精神」
レイはドヤ顔した。
「辛い時でも海老ステップを忘れない心なのだぁ!」
「人生で一番いらない教訓かもしれない」
だが。
美咲は少し笑っていた。
レイは。
本当に。
本気で好きだったのだ。
ロブスターの亡霊を。
だから。
こうやって馬鹿みたいに叫んでいる。
「読者ぁ!」
レイは最後にペンライトを掲げた。
「もし人生疲れたらぁ!」
「うん」
「好きなもの見つけるのだぁ!」
「……」
「ロブスターでもいいのだぁ!」
「限定的すぎる」
「甲殻類に栄光あれぇぇぇぇ!!!!!!」
背景爆発。
なぜか海老が舞う。
そして。
最後に。
レイはちょっとだけ真面目な顔をした。
「……あとぉ」
「うん?」
「好きな人とファミレス行ける人生はぁ……」
「……」
「思ったより悪くないのだぁ」
美咲は少しだけ目を細めた。
「……そうね」
その瞬間。
どこからともなく『♡甲殻類フォーエバー♡』が流れ始める。
レイは即反応。
「のだぁぁぁぁ!!!!!!」
ペンライト起動。
「結局それなのね」
「永遠なのだぁ!!!!!!」
――終。




