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婚活全敗の50歳窓際社員ですが、昔フラれた同級生と地下アイドルに通ってたら人生がちょっとだけマシになった件  作者: 雪だるま
第1章

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 十一月。


 高橋美咲、五十一歳の誕生日。


 夜。


 仕事帰りに待ち合わせた小さなイタリアンレストラン。


「ふぅ」


 美咲はワインを飲みながら少し笑った。


「五十一かぁ……」


「のだっ♡」


 向かい側。


 伊藤レイ(50)はなぜか異様にニヤニヤしていた。


 今日のレイは妙に落ち着きがない。


 そわそわしている。


 水を飲む。


 また座り直す。


 さらにニヤニヤ。


「……何その顔」


「のだぁ?」


「絶対なんか企んでるでしょ」


「企んでないのだぁ!」


 怪しすぎる。


 だが。


 今日は美咲の誕生日。


 レイなりに気を使って店を予約したらしい。


 ちゃんと普通の店だった。


 ロブスターの亡霊コラボカフェではない。


 それだけで成長である。


「誕生日おめでとなのだぁ」


「ありがとう」


「うむ!」


 レイは満足げだった。


 そして。


 料理を食べ終えた頃。


「……のだっ」


 レイが急に真顔になった。


「ん?」


「プレゼントあるのだぁ」


「えっ」


 美咲は少し驚いた。


 レイが“ちゃんとしたプレゼント”を用意してくるイメージがあまりない。


 どうせ変なものだろう。


 ロブスターグッズとか。


 謎の健康器具とか。


 そう思っていた。


 しかし。


 レイは妙に自信満々だった。


「ふっ……」


 ドヤ顔。


「吾輩もぉ!五十歳の大人なのだぁ!」


「……不安」


「今回は本気なのだぁ!」


 レイは紙袋を差し出した。


 高級百貨店のロゴ。


「……」


 美咲は少し驚く。


(え、ちゃんとしてる?)


「開けるのだぁ!」


「う、うん」


 包みを開く。


 そして。


「……」


「……」


「……」


 沈黙。


 中には。


 高級下着。


 しかも妙にセクシー。


 黒。


 レース。


 完全に“大人の女性向け”。


「……」


 美咲は固まった。


 一方。


 レイは超ドヤ顔。


「ふっ……」


 腕組み。


「どうなのだぁ?」


「……」


「大人の色気なのだぁ!」


「……」


「店員さんもおすすめしてたのだぁ!」


「……」


「吾輩、めちゃくちゃ悩んだのだぁ!」


「……」


「美咲に似合うと思ったのだぁ!」


 パァン!!!!!


「のだぁ!?!?!?」


 店内に綺麗なビンタ音が響いた。


 周囲の客が振り向く。


 レイ、硬直。


 美咲は真っ赤だった。


「なんでそんなもの選ぶのよ!?」


「のだぁ!?!?!?」


「意味わかんない!!」


「お、お洒落だと思ったのだぁ!?」


「なんで下着なの!?」


「大人のプレゼントなのだぁ!?」


「ズレてるのよ!!」


 レイは頬を押さえて震えていた。


「のだぁぁぁぁぁ……」


 本気で困惑している。


「なんでなのだぁ!?!?!?」


「なんでじゃないわよ!!」


「高かったのだぁ!?」


「そこじゃない!!」


 レイは混乱していた。


 本当に。


 心の底から。


「だ、だってぇ!」


 レイは必死だった。


「店員さんにぃ!五十代女性へのプレゼント相談したらぁ!」


「うん」


「“大人の女性には上質なものが喜ばれます”ってぇ!」


「それでなんで下着になるのよ!?」


「綺麗だったのだぁ!」


「だからって!!」


 美咲は頭を抱えた。


 この男。


 本当に。


 本当にズレている。


 悪気ゼロ。


 むしろ真剣。


 だから余計タチが悪い。


「普通アクセサリーとかでしょう!?」


「のだぁ!?」


「花とか!」


「のだぁ!?」


「なんで下着に全力行くのよ!」


「だってぇ!!」


 レイは涙目だった。


「吾輩、お洒落な大人感出したかったのだぁ!!」


「方向性が終わってるのよ!!」


 周囲の客が笑いを堪えている。


 店員まで若干肩が震えていた。


 レイは完全にしょんぼりした。


「……のだぁ」


「……」


「……頑張って選んだのだぁ」


 その声が妙に情けなくて。


 美咲は数秒黙った。


「……」


 そして。


 小さくため息。


「……ほんと馬鹿ね」


「のだぁ?」


「普通そういうのは、もっと関係進んでからなの」


「……」


「いきなり渡すものじゃないの」


 レイは少し考えた。


「……のだぁ」


 数秒後。


「つまり可能性はゼロではないのだぁ!?」


「そこだけ元気になるのやめて」


 レイは急に復活した。


「うむ!!吾輩、学習したのだぁ!!」


「本当に?」


「次は普通のプレゼントにするのだぁ!」


「そうして」


「ロブスターの亡霊限定グッズとか!」


「学習してない」


 美咲は頭を抱えた。


 だが。


 少しだけ笑ってしまう。


 こんな五十歳、普通いない。


 センス最悪。


 距離感も変。


 でも。


 妙に真剣。


 だから怒りきれない。


「……」


 美咲は紙袋を見た。


 高級下着。


 趣味はともかく、品質は本当に良い。


 多分かなり高かった。


「……返品できるかなこれ」


「のだぁ!?」


「冗談よ」


「のだっ♡」


 レイは安心した。


 そして数秒後。


「……でもぉ」


「ん?」


「ちょっとだけ似合いそうだと思ったのだぁ」


 パァン!!!!!


「のだぁあああああ!!!!!!」


 本日二発目。


 レストランに悲鳴が響いた。

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