表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミオとナオトの異世界TRPG冒険譚  作者: かわさきはっく
鉄戦国ドルグ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/35

第24話 国境突破と、指名手配の更新

「ナオト、アクセル踏んで! もっと! バックミラーが賑やかすぎて吐きそうよ!」


「踏んでる! これ以上踏んだらエンジンが爆発して、俺たちが空飛ぶ花火になっちまう!」


「後ろのスノーモービル部隊、完全に殺る気じゃない! さっきから銃声が鳴り止まないんだけど! ここ戦場!?」


「当たり前だ! 俺たちは軍の極秘研究施設を地図から消去したA級手配犯だぞ! 生死問わずデッド・オア・アライブのフラグが立ってるんだ! 相手だってボーナス査定がかかってる!」


 ヒュンッ! カキンッ!


 乾いた破裂音が連続し、トライクの装甲板から火花が散る。


「ひぃぃッ! 弾が掠った! シールドのHPが削れる音!」


「伏せてろミオ! ……ちっ、国境警備隊のくせにいい装備を使ってやがる。ドルグの軍事費はどうなってるんだ、税金の無駄遣いにも程があるぞ!」


「文句は納税者になってから言いなさいよ! ……って、うわぁっ! 右から回り込んで来た!」


「くそっ、連携が取れてるな。典型的な挟撃フォーメーションだ。……ミオ、迎撃できるか?」


「無理よ! トライクの揺れが酷くて照準が定まらない! 命中判定にマイナス修正がかかりまくりよ! ファンブルして自爆するのがオチだわ!」


「なら、振り切るしかないな! 捕まってろ、雪原の凸凹を利用してジャンプする!」


「はぁ!? ちょっと、予告してよ予告!」


 ガックンッ! ブォォォン!


「キャァァァァッ! 舌噛んだ! 慰謝料請求してやる!」


「生きて帰れたらな! ……しかし、しつこいな。ヘイトが全然下がらない」


「ねえナオト、ちょっと待って。ふと気になったんだけど」


「なんだ、この非常時に! 遺言なら手短に頼むぞ!」


「違うわよ! 私たちの借金ってどうなんのよ?」


「……は? 今それどころじゃ……」


「それどころよ! 命の次に大事なお金の話よ! 金貨30枚は手に入ったけど、返す相手のゾルダークが死んだじゃない? 契約書には『軍が肩代わりする』ってあったけど……」


「……あ」


「誰に返せばいいの? 遺族? それとも国庫? もし国庫なら、このまま逃げたら借金踏み倒しで、地の果てまで追いかけてくるんじゃない?」


「……ミオ、お前は天才か」


「えっ、なに? 急に褒めないでよ」


「状況を整理しよう。債権者であるゾルダークは死亡。そして、俺たちの借用データは管理のためにあの基地のサーバー……いや、執務室の金庫かファイル棚にあった可能性が極めて高い」


「ってことは……?」


「基地ごと消滅(ロスト)だ! 物理的にな! バックアップなんてあるわけがない!」


「うっそ!? じゃあ……」


「借金チャラだ! 債権者消滅および証拠書類の物理的破壊による強制終了! この金貨30枚は、返済用じゃなくて俺たちの退職金だ!」


「やったぁぁぁ! 完全勝利! ざまぁみろブラック企業! 私の勝ちよ! あーっはっはっは!」


「おい、身を乗り出すな! 撃たれるぞ!」


「当たらないわよ! 今の私は無敵の資産家なんだから!」


「現金なやつだな……。だが、喜ぶのはまだ早い! 前を見ろ! マップの端(ボーダーライン)だ!」


「……うげっ。なにあの壁。進撃のなんとやら?」


「国境ゲートだ。高さ10メートル、厚さ1メートルはある対魔導合金製。……しかもご丁寧に、バリケードと重機関銃のお出迎えだ」


「詰んだわね。前門のゲート、後門の警備隊。完全に袋のネズミじゃない」


「強行突破は無理だ。あのゲート、戦車砲でも貫通しない仕様だぞ。ニトロで突っ込んでも、俺たちがトマトのシミになって終わりだ」


「じゃあどうすんの!? ここでゲームオーバー!? セーブしてないわよ!?」


「いや、搦め手(ロールプレイ)で行く。……ミオ、インカムを貸せ。周波数をゲート管理室に合わせる」


「インカム? 命乞いでもする気? 見逃してください、お金ならありますって?」


「いいや。……アイテム欄にある機密書類を使う」


「ああ、金庫からくすねた紙切れ? それが役に立つの?」


鑑定(チェック)済みだ。ここには緊急時の将官用通行コードが載ってる。……ここからは俺の演技スキル(ブラフ)の見せ場だ」


「演技? あんた、嘘つくとき早口になる癖あるじゃない」


「修正済みだ。黙って見てろ。……よし、繋がった」


 ザザッ……ピーッ。


『こちら国境ゲート管理室。前方より接近中の車両に告ぐ。直ちに停止せよ。貴官らは包囲されている。繰り返す、直ちに停止せよ』


(……来たな。スキル発動:声帯模写……対象、ゾルダーク少佐。性格設定、傲慢かつヒステリック。……ダイスロール、判定成功!)


「……ええい! 馬鹿者! 誰に向かって銃口を向けている! この無能どもが!」


「(……えっ? ナオト? その声……ゾルダーク?)」


『ッ!? こ、このヒステリックな怒鳴り声は……ゾルダーク少佐!?』


「そうだ! 私の声も忘れたか! 現在、極秘任務中にテロリストの襲撃を受けた! 基地は壊滅! 私は機密データを守るために単独で脱出中だ!」


『き、基地が!? し、しかし少佐! モニターで確認しておりますが、貴官の乗機はアレスでは……? そのボロボロのトライクは一体……』


「アレスは大破した! 敵の魔法使いにやられたのだ! 今は敵から奪ったトライクで移動している! 貴様ら、戦場の状況変化も読めない無能か!? マニュアル通りの対応しかできんのか!」


『も、申し訳ありません! しかし、規定により生体ID確認が必要でして……』


(……チッ、堅物なGMだな。説得(パースエージョン)に補正を入れるぞ)


「この緊急時にIDだと!? 後ろを見ろ! テロリストの追手が迫っているのだぞ! 私を見殺しにする気か! 貴様、名前はなんだ! 所属部隊と認識番号を言え! 後で軍法会議にかけて、二等兵からやり直させてやるぞ!」


『ヒィッ! め、滅相もございません! 第4警備小隊の……』


「言い訳はいい! ならゲートを開けろ! 今すぐだ! 特例措置として緊急コードを使用する! メモの用意はいいか無能!」


『は、はいッ!』


「コード『レッド・ドラゴン・ゼロ』! ……繰り返す、『レッド・ドラゴン・ゼロ』だ! 1秒以内に照合しろ!」


「(……ナオト、顔芸までゾルダークに似てきたわよ。血管浮いてる)」


「(……黙ってろ。今、GM (兵士)がコードの照合判定をしてる。……クリティカルか、ファンブルか)」


 ……ザザッ。


『……コード認証、確認! 本物のゾルダーク少佐のコードです! 失礼いたしました! ゲート、緊急開放します!』


「開いた! すごっ! あんた、天才詐欺師の才能あるわよ!」


「褒め言葉として受け取っておく! ……行くぞ、全速前進!」


「総員、少佐を援護せよ! 後方のテロリストを迎撃せよ! 少佐をお守りしろ!」


 ダダダダダダダッ!!


「うわっ、撃ち始めた! ゲートの兵隊さんが、後ろの追手を攻撃してる!」


『なっ!? 貴様ら何を撃っている! 我々は味方だ! 国境警備隊だぞ!』

『黙れテロリストめ! 少佐の命を狙う輩は皆殺しだ!』


「あーあ、完全に同士討ちフレンドリー・ファイアね。現場は大混乱カオスよ」


「指揮系統が混乱した組織なんてこんなもんだ。……ご苦労! あとは任せたぞ!」


 ナオトはゲートを通過する際、敬礼する兵士たちに向かって、鷹揚に手を振ってみせた。その背中越しに爆発音と怒号が遠ざかっていく。


 ゴゴゴゴゴゴ……!


「抜けた! 国境線突破! さらば鉄の国! 二度と来ないわ!」


 ◇ ◇ ◇


「……ふぅ。ここまで来れば大丈夫か」


 国境から数キロ離れた荒野の入り口。

 ナオトはトライクを止め、エンジンを切った。

 ピキン、ピキンと、過熱したエンジンが冷える音が静寂に響く。

 振り返れば、遠くにドルグの黒煙が見えるが、目の前にはただ広大な荒野が広がっていた。


「はぁ〜、生き返った……。マジで死ぬかと思ったわ……」


 ミオがトライクから転がり落ちるように降り、乾いた地面に大の字になって寝転がる。


「マップ更新。エリア名、大陸東部・無法地帯(ノーマンズ・ランド)。……ふむ、ここならどこの国の法律も届かないな」


「無法地帯? なんか物騒な名前ね。お店とか宿屋はあるの?」


「あるわけないだろ。ここはモンスターと野盗の楽園だ。文明圏までは、この荒野を縦断しなきゃならない」


「げっ、マジで? シャワーは? ふかふかのベッドは?」


「野宿だ。……お疲れ、ミオ。これで鉄戦国ドルグ編はクリアだが、ここからはサバイバル編のスタートだぞ」


「うわぁ……。平穏な生活、遠のいたなぁ……」


「だが、報酬は確保した。金貨30枚。借金はチャラ。上出来だろ」


「まあね。苦労した甲斐があったわ。……ねえ、あれなに?」


 ミオが国境ゲートの近くに設置された、古ぼけた掲示板を指差した。

 そこには、魔法的なネットワークで転送されたばかりの、真新しい手配書が貼られていた。


「ドルグ軍の最終通告か? ……げっ」


 【国際指名手配】

 凶悪テロリスト:ナオト & ミオ

 罪状:軍事基地破壊、国家反逆、大量殺人、詐欺、強盗、身分詐称

 懸賞金:金貨100枚 (生死問わず)


「……金貨100枚」


「……私たちの首、借金より高くなっちゃったわね。3倍以上よ」


「ランクアップおめでとう。これで俺たちは、世界中の賞金稼ぎ(バウンティ・ハンター)から狙われる『歩く宝くじ』だ。寝ている間に首を狩られても文句は言えんぞ」


「ちょっと! 無法地帯ってことは、そういう危ない連中がウヨウヨしてるってことじゃない!」


「ご名答。……さあ、行くぞミオ。ボーっとしてたら囲まれるぞ」


「ひぃぃ! 分かったわよ! ……でも、とりあえずご飯! お腹空いた!」


「レーションならあるぞ。賞味期限ギリギリのがな」


「ステーキ食べたいって言ったのにぃぃぃ!」


 ドロロロロロッ……!


 二人は再びボロボロのトライクに跨り、砂煙を上げて荒野へと走り出した。

 目指すは南、魔導連邦ゼルト。だがその道程は鉄の国での戦い以上に過酷な、水と燃料を巡るサバイバル・ロードとなる。


 懐には金貨30枚。首には金貨100枚の賞金。

 社畜冒険者ナオトとミオの、終わらない逃避行デスマーチは続いていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ