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ミオとナオトの異世界TRPG冒険譚  作者: かわさきはっく
鉄戦国ドルグ編

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第22話 背任行為と、暴走するエネルギー

「……現在時刻、1155(ヒトヒトゴーゴー)。作戦開始まであと5分」


「ねえナオト。手が震えてるわよ」


「……武者震いだ。あるいは、これからサーバーを物理的に破壊するという、SEとしてのタブーを犯すことへの禁忌感(ギルティ)か」


「私は楽しみで手が震えてるわ。あんな趣味の悪い機械、この世にあっちゃいけないもの」


「ミオ、配置につけ。俺はメインコンソールの近くに陣取る」


「了解。私は入り口付近でドアストッパーになるわ」


「頼むぞ。俺がシステムに入り込んでいる間、一歩も通すなよ」


「任せて。私の背後には誰も通さない。……自動改札の扉が閉まるよりも速く迎撃してやるわ」


「具体的すぎて敵が可哀想になる例えだな。……よし、潜行開始スニーキング・スタート


 ◇ ◇ ◇


『諸君! 歴史的瞬間の到来だ!』


「……始まったな。少佐の演説だ。長いぞ、あいつの話は」


「校長先生並みに長いわね。スキップボタンないの?」


『この一撃で、我々ドルグ帝国は世界の覇者となる! 聖法国の偽善者どもに鉄槌を下すのだ! 我らが科学力の結晶、ニーズヘッグの咆哮を聞け!』


『イエッサー! 技術班、最終チェック完了!』

動力炉(バイオ・リアクター)、接続良好! 出力安定!』


「……チッ。モニターを見てみろミオ。動力炉の映像だ」


「……うぐっ。カプセルの中の人たちが……光ってる……」


「見るな。画面上のただの数字だと思え。……じゃないと、こっちのSAN値 (正気度)が持たん」


「無理よ……! あんなの、人の命を使い捨ての電池みたいに……!」


『充填率90%! 臨界点まであと30秒! エネルギー循環、正常!』


『素晴らしい……! これだ、私が求めていたのはこの力だ!』


「ゾルダークの野郎、完全にトリップしてやがる。典型的なマッドサイエンティストのロールプレイだな」


「ナオト、まだなの!? これ以上見てられない!」


「待て。タイミングが重要だ。発射直前が一番システム負荷が高い。そこを狙ってクラッシュさせる」


『充填率98%! 安全装置解除! ターゲット、聖法国首都・大聖堂!』


『さあ、見せてくれ! 断末魔の輝きを! 発射ァッ!』


「……今だ。スキル発動、投擲(スローイング)!」


 シュッ……バシュッ!!


『……あ?』


『しょ、少佐!? 手元にナイフが!』

『コンソールが火花を吹いています!』


「貴様……! 何をしている! ナオト!」


「……残念ですが少佐、そのプロジェクトは凍結(フリーズ)です」


「き、貴様……正気か!? 発射シークエンス中だぞ!」


「契約破棄ですよ。第99条、『想定外の事態』の適用です」


「契約破棄だと!? この土壇場で何を言い出す!」


「ええ。俺たちの倫理規定(コンプライアンス)において、大量虐殺および非人道的な燃料の使用は業務範囲外なんです。……ミオ、やれ!」


「合点承知の助ェェッ!! 喰らいなさい、労働者の怒り (フルスイング)ッ!」


 ドゴォォォォン!!


『ぐわぁぁぁっ!』

『扉が! 吹き飛んだぞ!』

『侵入者だ! 入り口を封鎖しろ!』


「き、貴様らぁぁぁ! やはりスパイだったのか! 最初からこのつもりで!」


「違いますよ。ただの善良な一般市民 (社畜)です。寝覚めの悪い仕事はお断りなだけですよ!」


 カチャカチャカチャッ! ターンッ!


『警告! 警告! システムに不正な侵入!』

『制御権限が奪われています! ファイアウォール、第一層突破!』


「なっ、何をしている! 止めろ! 撃ち殺せ! あの男をコンソールから引き剥がせ!」


『親衛隊、突入せよ! 裏切り者を排除しろ!』


「させないわよ! ここは私の業務エリアなんだから! フレイム・ウォール!」


 ボウッ!!


『ひぃっ! 熱い! 弾が溶ける!』

『魔法使いだ! 近寄るな! 丸焼きにされるぞ!』


「その程度? クレーム処理で鍛えたメンタルを舐めないで! 100件の電話より、あんたらの鉄砲玉の方がよっぽど静かだわ! 次! どんどん来なさい!」


「(って吼えたものの、ナオト! 増援が来てる! 早くして! MP(マジックポイント)が持たないわよ!」


「(……くそっ、焦らせるな! さすがに軍事用OSだ。セキュリティが堅い。ファイアウォールが三重構造になってやがる)」


『アクセス拒否。管理者権限が必要です』

『不正な操作を検知しました。強制ログアウトまであと10秒』


「権限がないなら、こじ開けるまでだ! ……こちとら、仕様書なしのスパゲッティコードを解読してきた実績があるんだよ! SQLインジェクション……いや、バッファオーバーフローを狙う!」


『エラー。エラー。処理落ちが発生しています』


「まだ足りないか! 物理メモリが追いつかん! ……なら、これだ!」


 ガシャッ。ドボドボドボ……。


「……ナオト? 今、端末に何を流し込んだの? それ、高い薬じゃない?」


魔力増幅薬(マナ・ポーション)だ! 物理的なドーピング! 回路に直接魔力を注ぎ込んで、CPUをオーバークロックさせる!」


 バチバチッ! ボンッ!


『認証……バイパス成功。ルートディレクトリに接続』


「よし、入った! 煙が出てるが知ったことか! ……さあ、イタズラの時間だ。エネルギーの出力先を砲身から内部タンクへ変更」


『パラメータ変更を確認。……承認』


「さらに、安全弁(リミッター)を全解除! 冷却システム、オフ! 循環ポンプ、逆回転!」


『警告! エネルギー逆流! 炉心温度、急上昇中!』

『パイプ内圧力、限界突破!』


「な、何をした貴様!」


「エネルギーを逆流させたんだよ。このままだと5分後に、この列車砲は自分自身のエネルギーでパンクする。……いわゆる自爆だ」


「く、狂っている! そんなことをしたら、ここも吹き飛ぶぞ! 貴様らも死ぬんだぞ!」


「ああ、そうだな。だから逃げた方がいいぞ? ……まあ、俺たちは逃げるがな! 退避ルートの確保は済ませてある!」


「おのれ……! よくも私の最高傑作を! 許さん……許さんぞぉぉぉ! 私の出世街道を! 将軍への道を!」


 カチッ。


 ウィィィィン……ガシャン!  ズシンッ! ズシンッ!


「……おいおい。床が割れたぞ。隠し玉かよ」


「ナオト! なんかデカいの出てきた! ロボット!? 床下から!?」


「プロトタイプ・重機動兵器アレスだ! 貴様らをミンチにして、新たな燃料にしてやる!」


 プシューッ! ガシャン!


「乗り込むタイプかよ! お約束だな! 死亡フラグ建築士かお前は!」


「ナオト! ハッキングは!?」


「あと少しだ! 自爆シークエンスの確定まであと60秒! 最終確認画面が出てる!」


「60秒!? 長いわよ! コンビニ弁当の温め待ちだって長く感じるのに!」


「耐えろ! あのデカブツを60秒間足止めしろ! それが俺たちの退職手続きだ!」


「……上等じゃない! 残業代、高くつくわよ! かかってきなさい、鉄クズ!」


「死ねェッ! 裏切り者!」


 ダダダダダダダダッ!!


「プロテクション・ウォール! ……くっ、重い! ガトリング砲!? 遠距離の物理攻撃はずるいわよ!」


「ハハハ! どうした! 魔法剣士と言っても、所詮は生身か! この圧倒的な火力を前には無力だ! その薄っぺらい障壁ごと挽肉にしてやる!」


「うるさいわね! 火力なら負けてないわよ! ……ナオト、まだ!? 障壁の耐久値がもう赤ゲージよ!」


「あと30秒! ……くそっ、最後のプロテクトが堅い! パスワードか!? ここでパスワード要求とか、ユーザビリティ最悪だな!」


『パスワードを入力してください』

『ヒント:私が最も愛するもの』


「(……ゾルダークの性格からして、自己顕示欲の塊だ。自分の名前か? それともプロジェクト名?)」


「ナオト! 障壁が割れる! 早く! 死ぬ! 本当に死ぬ!」


「……待てよ。あいつ、さっき最高傑作って言ったな。……なら、これか!」


 カチャカチャ……ターンッ!


『パスワード不一致』


「ちがう! くそっ、じゃあ『EMPIRE (帝国)』か?」


 ターンッ!


『パスワード不一致。残り試行回数1回』


「あと1回!? ファンブルしたら終わりだぞ!」


「ナオトォォォッ! もう限界ッ!」


 パリンッ!  ミオの障壁が砕け散る音がした。


「(落ち着け。あいつの言動を思い出せ。……『私の夢』『私の出世』『将軍への道』……)」


「……そうか。こいつが一番愛してるのは、自分自身でも兵器でもない。階級だ!」


 ナオトは震える指でキーボードを叩いた。打ち込んだ単語は『GENERAL (将軍)』。


 ターンッ!


『アクセス承認』

『自爆シークエンス……起動』


「……ビンゴだ。セキュリティ意識の低い、権力欲まみれの上司で助かったぜ」


「なっ……!? システムがロックされただと!? 私のアレスの制御まで!?」


『緊急警報! 緊急警報! 動力炉の臨界点突破! 総員、退避してください! 爆発まであと300秒!』


「やったわねナオト!」


「ああ! これであの列車砲はただの巨大な花火だ! ついでに基地のゲートも全開放した!」


 ズシンッ!  ジャキィィィン!!


「……おのれ……おのれぇぇぇ! 私の夢を! 出世を! よくも!」


「……あいつ、ヒートホーク抜いたわよ。完全にキレてる」


「心中する気満々だな。……ミオ、逃げるぞ! ここから脱出するには、あのデカブツを突破して出口へ向かうしかない!」


「OK! ラスボス戦ね! ……ねえ、勝ったらボーナス出る?」


「金庫の中身はまだ回収できてない! だが、あいつを倒せば部品が高く売れるかもな!」


「商魂たくましいわね! ……いくわよ! 最終業務、開始ッ!」

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