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呪いで霊力を封印された俺が、九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。[★毎日更新★]  作者: 三科異邦
九尾との出会い、覚醒編

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仮初の力

面白いと思った方、差し支えなければ評価なほどお願いします

放課後、校舎の一室に学園の先生たちが集まった。

 机の上には資料が広げられ、窓の外には夕暮れの光が差し込む。


 「最近、巷で流行っているという薬の件だが……」

 一人の中堅の教師が資料を指さし、口を開く。

 「霊力を急激に上げられると噂されていますが、副作用も甚大で、身体や精神に取り返しのつかない影響を与える可能性があります」


 別の教師が眉をひそめて続ける。

 「生徒たちにこれを使わせてはいけません。急激に霊力が上がった場合、制御できず暴走する例も報告されています」


 主任教諭が机を叩き、声を張る。

 「覚えておけ。霊力は特訓でしか強くならない!薬や短絡的な方法で得たものはすべて仮初だ。仮初の力は必ず破滅に繋がる!」


 部屋の空気が一瞬張り詰め、全員が真剣な表情で頷く。


 「生徒たちにも、しっかりと注意喚起をしなければならない」

 主任教諭は資料に目を落としながら続ける。

 「放課後や休日、街中で怪しい薬や霊力を操作する話を耳にしたら、必ず相談させること。軽い気持ちで手を出すことの危険性を理解させるんだ」


 若手教師が少し不安げに尋ねる。

 「しかし、もし既に使ってしまった生徒がいた場合は……」


 主任教諭は深いため息をつき、言葉を選ぶ。

 「その場合も、まずは制御不能にならないよう監視し、できるだけ安全に力を収める訓練を施すしかない。力は訓練で育てるものだ。近道は存在しない」


 会議は厳格な空気のまま続き、各教師は生徒への対応策を次々と確認していく。

 窓の外の街灯が点き始め、静かに日が沈む中、学園の中で芽生えつつある危険に、教師たちは神経を尖らせていた。


翌日、男子生徒は早めに登校した。

 心の奥で沸き上がる高揚感と、まだ制御しきれていない力を確かめたい衝動が彼を急がせる。


 教室に入ると、普段通りの雑談や笑い声が響いていた。

 だが、男子生徒にはその景色が遠く、すべての動きが力の感触として捉えられる。


 机に座り、さりげなく手のひらを握る。

 指先から微かに光が漏れ、空気がわずかに震えるのを感じる。

 ――まだ小さな力だが、自分のものだ。

 胸の中で、先ほどの自宅での陶酔感が再び広がる。


 授業が始まる前のわずかな時間、彼は密かに力を試す。

 机の上の鉛筆やノートが、指先の霊力で浮き上がる。

 小さく笑みを漏らす。

 「……これで……少しは使える……」


 だが、力を使うたびに制御が追いつかず、机の角にぶつかってノートが飛び散る。

 隣の席のクラスメイトが驚いて振り向くが、男子生徒は平静を装い、何事もなかったかのように手を下ろす。


 その時、教室の片隅にあった小さな観葉植物が、彼の意図せぬ霊力で揺れ、鉢が倒れそうになる。

 慌てて手を伸ばすが、光の奔流は完全には止まらず、窓際の椅子にぶつかり、小さな音が響いた。


 「……やっぱり、まだ完全には制御できない……」

 男子生徒は拳を握りしめ、唇を噛む。

 だが、その目は燃えていた。

 ――もっと力を使いこなしたい、もっと強くなりたい――


 授業が始まると、彼はわずかに力を抑えながらも、心の中で満たされない渇望を強く感じていた。

 小さな暴走はまだ誰にも気づかれないが、教室の空気の片隅には、既に異変の兆しが漂っていた。


昼休みの放送が終わり、授業が始まる直前。

 教室に、学園の主任教諭が入ってきた。

 普段とは違う厳しい表情で、全員の視線を集める。


 「皆、聞いてくれ」

 主任の声は静かだが、確かな重みがあった。


 「最近、街や学園の周辺で、霊力を急激に高めるという薬が出回っているという報告がある」


 生徒たちのざわめきが一瞬止まる。

 「この薬は、決して手を出してはいけない。確かに短期間で力を得たように感じられるかもしれない。しかし……」

 主任は一歩前に進み、机を叩く。

 「その力は仮初のものでしかない。制御できず暴走することがほとんどで、身体や精神を破壊する危険がある!」


 別の教師が補足する。

 「霊力は特訓でしか強くならない。日々の努力で少しずつ培うものだ。薬や安易な方法で得た力は、長続きせず、危険性だけが残る」


 主任は教室をゆっくり見渡す。

 「力を求める気持ちは理解できる。しかし、焦って近道を選ぶな。誰も皆、最初は無力で、努力で強くなるんだ」


 生徒たちは重く頷き、教室の空気は真剣そのものになる。

 男子生徒も自分の胸に手を当て、小さな緊張と罪悪感を感じる。

 ――俺は、あの薬を……


――男子生徒side


主任の声が最後に響く。

 「もしも、力に関する不安や誘惑を感じたら、必ず教師に相談すること。無理に自分を変えようとするな。力は、守るべきものだ」


 教室に静かな沈黙が残ったまま、授業が始まる。

 

 先生の声が教室に響く。

 「霊力は特訓でしか強くならない!薬や安易な方法で得たものは仮初の力だ!」


 男子生徒は胸の奥で、熱いものがこみ上げるのを感じた。

 ――仮初の力? あの感覚が仮初だっていうのか?

 指先に残る霊力の余韻は、確かに自分のものだ。

 それなのに、先生は自分を信じてくれない。


 机を握る手に力が入り、指先が白くなる。

 怒りと苛立ち、そして嫉妬。

 ――あいつら(玄弥たち)は、自然に強いんだろう……

 ――俺は、何もできなかった……


 でも、今は違う。薬で得た力が胸を満たしている。

 その感覚を、先生が「仮初」と切り捨てることに、抑えきれない反発が湧き上がる。


 「……くそ……何で俺まで、そんな目で見られなきゃならねぇんだ……」

 小さく舌打ちをする。心臓が高鳴り、血の熱さまで感じる。


 理性の一角では注意の意味を理解している。

 だがその声は、胸の奥で渇望する欲望にかき消される。

 ――もっと強くなりたい……

 ――誰にも負けたくない……

 ――あの無力な自分には、もう戻らない……


 男子生徒の目に、ほんのわずかだが光が宿った。

 怒りと反発が混じった、決意の光だ。

 先生の言葉は届いたが、それを押し返す欲望の方が、今の自分には勝っていた。

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