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霊装使いになれなかった俺が、九尾と契約した日  作者: 三科異邦


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35/36

影の策略――四天王の会議

 深い霧に包まれた森の奥。

 そこには巨大な古城のような建物が、霊力で揺らめく空気の中に静かに佇んでいた。


 城の最深部、大広間には四天王が揃っていた。

 高くそびえる天井、壁には異形の紋章が刻まれ、蝋燭の炎が揺れるたび、影が蠢く。


 酒呑童子が低く声を響かせる。

 「……先日の件、まったく見込み違いだったな」


 四尺坊が椅子の背にもたれ、針のような目で前方を見据える。

 「我が部下が無断で行動した……あれほど忠告したのに」


 妖怪王直属の四天王――彼らは、魔王軍でも特に強力な存在だ。

 人間界を侵食するための計画を練り、部下を指揮する力を持つ。


     ◆


 「玄弥の力……ただの少年ではないな」

 酒呑童子の言葉に、部下の一人が頭を下げる。

 「尾二本の解放まで行ったと聞きました。制御はまだ甘いようですが……」


 「甘い? あの力は……危険だ」

 四尺坊が眉をひそめる。

 「力の暴走を利用できれば、我々の計画に大きな追い風となる。

 だが、完全に掌握できなければ、こちらも損害を被る」


 ――先日の刺客の暴走は、四天王の部下による“勝手な行動”だった。

 それは酒呑童子も予期していなかった。

 部下は処罰される運命にあるが、被害状況は彼らにとっても学びであった。


     ◆


 四天王は各々の策略を語る。


 「玄弥を“器”として活用するべきだ。

 九尾との契約で覚醒した力……血筋の秘密……

 全てを計算に入れれば、学園は格好の舞台となる」


 「まずは学園内の監視を強化するべきだ。

 生徒たちに乗り移る手段を増やし、能力を強制的に引き出す」

 四尺坊は冷たく言い放つ。針のような霊力が空間に漂い、まるで大広間の空気を切り裂くかのようだった。


 酒呑童子は唇を薄く歪める。

 「……だが、あの少年は予想以上に制御が効かない。

 尾二本の暴走は、我々の計算を狂わせる」


 「ならば……計画を分割する」

 別の四天王が静かに提案する。

 「直接的な行動は控え、情報操作と心理的揺さぶりで徐々に追い込む」


     ◆


 四天王の間で静かな戦略会議が進む。

 それぞれの視線には冷酷さと、目的達成への執念が宿っていた。


 「学園は、我々の駒で埋め尽くす」

 酒呑童子の低い声が響く。

 「玄弥を焦らせ、力を引き出す。

 暴走の危険を利用し、最終的にはこちらの意志に従わせる」


 四尺坊が頷き、針のような指を組む。

 「そうすれば、学園は自然に我々の掌中に落ちる」


 しかし、四天王の一角にある不安もちらつく。

 “もし玄弥が制御を取り戻し、仲間の支えを得た場合”

 その力は我々の予測を超える――


     ◆


 大広間の蝋燭が一斉に揺れる。

 その揺らぎに、四天王の影が壁に大きく歪んで映る。


 「……準備は万端だ」

 酒呑童子が呟く。

 「次は……直接、動かねばならぬ」


 異形の計画が静かに、しかし着実に動き始める。

 魔王軍――その影は、すでに学園を覆う準備を整えていた。

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