決勝戦クライマックス――暴走と制御
決勝戦のグラウンドに、異様な緊張が張り詰めていた。
玄弥は尾一本で必死に刺客の攻撃を防いでいたが、異常な強さに押され、胸の奥に疼きが広がる。
「……もう……尾を……二本……」
決意と焦りの中で、尾がもう一本伸び、体を覆うように旋回した。
尾二本の解放と同時に、圧倒的な力が全身を貫く。
◆
尾の速度と威力は桁違いだった。
剣を弾き、霊力波を返し、空気を裂く音が戦場全体に轟く。
刺客は一歩も退けず攻撃を試みるが、次第に押され、膝をつく瞬間も増えていく。
だが、制御は不完全だった。
尾二本の動きは、まるで自ら意志を持ったかのように暴れ、刺客だけでなくグラウンドの砂や障害物、霊障まで巻き込む。
観客席から悲鳴が上がる。砂が舞い上がり、石片や霊具が飛び散る。
「……やばい……!」
自分の力を完全に制御できないことに、玄弥は焦る。
尾の動きは止めどなく、敵味方問わず周囲を巻き込む暴力となった。
◆
マトリは駆け寄り、声を張り上げる。
「玄弥くん、落ち着いて! 大丈夫、私がここにいる!」
その言葉は叫びではなく、心を直接揺さぶるような温かさを帯びていた。
尾の暴走は玄弥の意識に響き、視界は赤く滲む。
しかし、マトリの声を聞いた瞬間、胸の奥で小さな光が灯る。
その光に導かれるように、マトリが玄弥の背中に回り、抱きしめた。
「大丈夫……私がいる……安心して……」
小さく震える声と柔らかな体温が、暴走しそうな力を一瞬だけ鎮める。
◆
尾の力が少しずつ安定し、荒れ狂う旋回も収まっていく。
地面の破壊はまだ残るが、玄弥自身の制御は戻り、深呼吸と共に力を整えることができた。
刺客は圧倒され、力尽きて倒れる。
玄弥はまだ尾を完全に引っ込められないが、暴走は抑えられた。
「……ありがとう……マトリ……」
胸に熱が残る中、玄弥はかすかに微笑む。
マトリは肩越しに頷き、安心した表情で抱き続ける。
◆
グラウンドは静まり返り、観客たちは戦いの余韻に息を呑む。
しかし、尾二本の暴走と制御の危険性は、まだ完全には過ぎ去っていない。
玄弥は勝利を手にしたが、同時に力と代償の現実を思い知った。
大会の決勝――勝利の代償と、仲間の支えが、戦場に刻まれる。
それは、これからの戦いの覚悟を、玄弥の胸に深く刻み込む出来事だった。




