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霊装使いになれなかった俺が、九尾と契約した日。陰陽師見習いが大成するまで。  作者: 三科異邦
九尾との出会い、覚醒編

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33/52

決勝戦クライマックス――暴走と制御

 決勝戦のグラウンドに、異様な緊張が張り詰めていた。

 玄弥は尾一本で必死に刺客の攻撃を防いでいたが、異常な強さに押され、胸の奥に疼きが広がる。


 「……もう……尾を……二本……」

 決意と焦りの中で、尾がもう一本伸び、体を覆うように旋回した。

 尾二本の解放と同時に、圧倒的な力が全身を貫く。


     ◆


 尾の速度と威力は桁違いだった。

 剣を弾き、霊力波を返し、空気を裂く音が戦場全体に轟く。

 刺客は一歩も退けず攻撃を試みるが、次第に押され、膝をつく瞬間も増えていく。


 だが、制御は不完全だった。

 尾二本の動きは、まるで自ら意志を持ったかのように暴れ、刺客だけでなくグラウンドの砂や障害物、霊障まで巻き込む。

 観客席から悲鳴が上がる。砂が舞い上がり、石片や霊具が飛び散る。


 「……やばい……!」

 自分の力を完全に制御できないことに、玄弥は焦る。

 尾の動きは止めどなく、敵味方問わず周囲を巻き込む暴力となった。


     ◆


 マトリは駆け寄り、声を張り上げる。

 「玄弥くん、落ち着いて! 大丈夫、私がここにいる!」

 その言葉は叫びではなく、心を直接揺さぶるような温かさを帯びていた。


 尾の暴走は玄弥の意識に響き、視界は赤く滲む。

 しかし、マトリの声を聞いた瞬間、胸の奥で小さな光が灯る。

 その光に導かれるように、マトリが玄弥の背中に回り、抱きしめた。


 「大丈夫……私がいる……安心して……」

 小さく震える声と柔らかな体温が、暴走しそうな力を一瞬だけ鎮める。


     ◆


 尾の力が少しずつ安定し、荒れ狂う旋回も収まっていく。

 地面の破壊はまだ残るが、玄弥自身の制御は戻り、深呼吸と共に力を整えることができた。


 刺客は圧倒され、力尽きて倒れる。

 玄弥はまだ尾を完全に引っ込められないが、暴走は抑えられた。


 「……ありがとう……マトリ……」

 胸に熱が残る中、玄弥はかすかに微笑む。

 マトリは肩越しに頷き、安心した表情で抱き続ける。


     ◆


 グラウンドは静まり返り、観客たちは戦いの余韻に息を呑む。

 しかし、尾二本の暴走と制御の危険性は、まだ完全には過ぎ去っていない。

 玄弥は勝利を手にしたが、同時に力と代償の現実を思い知った。


 大会の決勝――勝利の代償と、仲間の支えが、戦場に刻まれる。

 それは、これからの戦いの覚悟を、玄弥の胸に深く刻み込む出来事だった。

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