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呪壊の陰陽師 ―霊力ゼロの陰陽師が最強の妖狐と結ぶ仮初の契約―  作者: 仁科異邦
九尾との出会い、覚醒編

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転校生の正体

 最初に飛んできたのは、音だった。


 ――ヒュッ。


 空気が裂ける、細く鋭い音。

 玄弥は反射的に横へ跳んだ。


 次の瞬間、背後の電柱が斜めに切断され、火花を散らして倒れる。


 「……かまいたち、か」


 刺客――人の形を半ば捨てたそれが、ゆっくりと腕を振る。

 指先の動きに合わせて、透明な刃が空間に生まれていた。


 風でも霊力でもない。

 妖気で圧縮された、殺意そのものの刃。


 「街で戦う選択をしたのは、お前だ」

 「なら――守りながら死ね」


 笑い声と同時に、無数のかまいたちが放たれた。


 玄弥は走った。


 逃げるのではない。

 人から引き離すために、前へ出る。


 「伏せろ!!」


 叫びながら、霊符を投げる。

 簡易結界が一瞬だけ展開され、通行人を包む。


 だが、結界は一撃で裂けた。


 「くっ……!」


 守りに霊力を割けば、攻撃に回せる分が減る。

 かといって、無視すれば被害が出る。


 刺客は、それを理解した上で動いていた。


 かまいたちは、玄弥“本人”を狙わない。

 常に、人の背後、足元、逃げ道を切り裂く。


 「……っ、卑怯だろ……!」


 「賢いと言え」


 次の瞬間、子どもの悲鳴が上がった。


 玄弥は歯を食いしばり、地面を蹴る。


 間に合え――!


 霊力を一点に集中し、かまいたちを素手で弾く。

 皮膚が裂け、血が飛ぶ。


 だが、止めた。


 「だ、大丈夫……?」


 震える声に、玄弥は短くうなずく。


 「すぐ離れて!」


 呼吸が、重い。


 尾を出せば、状況は一気に変わる。

 一本目だけでも、刺客を押し返せる。


 だが――。


 (ここで出したら……)


 九尾の力は、制御が甘い。

 街で暴走すれば、人も建物も巻き込む。


 守るために、出せない。


 刺客は、その逡巡を見逃さなかった。


 「まだか?」

 「まだ“その力”を隠すのか?」


 かまいたちが、重なる。

 十、二十、三十。


 玄弥は防ぎきれず、地面を転がる。


 背中が切れ、息が詰まる。


 「……っ、ぐ……!」


 立ち上がろうとして、膝が笑った。


 刺客が、ゆっくりと近づく。


 「人を守る選択は、嫌いじゃない」

 「だがな――」


 腕を振る。


 今度のかまいたちは、一撃。


 一直線。

 玄弥の背後には、逃げ遅れた人影。


 (――間に合わない)


 霊符はもう残り少ない。

 身体は限界に近い。


 そのとき。


 背中で、何かが疼いた。


 熱。

 獣の気配。


 ――まだだ。


 玄弥は、自分に言い聞かせる。


 (ここで出したら……終わる)


 歯を食いしばり、最後の力で跳び出す。


 かまいたちが、肩を裂いた。


 血が噴き出す。


 それでも、玄弥は立っていた。


 「……行け」


 震える声で、言う。


 「今のうちに……逃げろ……!」


 刺客は、目を細めた。


 「……なるほど」


 「だからこそ――壊す価値がある」


 妖気が、さらに膨れ上がる。

 空気が、悲鳴を上げる。


 玄弥の背中で、一本目の尾が、輪郭だけを持ち始めていた。


 まだ出ていない。

 だが、抑えきれない。


 (……もう、限界だ)


 街を守るか。

 自分を抑えるか。


 その二択が、残酷なほど鮮明に迫っていた。


 ――戦いは、ここからさらに苛烈になる。

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