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霊装使いになれなかった俺が、九尾と契約した日  作者: 三科異邦


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29/39

模擬戦大会3

 午後の光がグラウンドを照らす。

 大会も3回戦に入り、観客席は熱気で満ちていた。

 玄弥は尾を一本だけ出し、心を落ち着ける。

 まだ完全な制御はできていないが、前回までの訓練で得た感覚を信じるしかない。


 相手は実力派のチーム。霊力、剣術、霊具のバランスが良く、油断できない。

 開始の号令が響く。


     ◆


 試合開始と同時に、相手の剣術使いが前に出る。

 玄弥は尾を旋回させ、攻撃を受け流す。

 風を操るムツミが、砂や紙を巻き上げて相手の視界を制御。

 軽やかな風の動きが、微妙に敵の動きを狂わせる。


 「玄弥、今だ!」

 マトリの声が耳に届く。

 冷静で慎重な助言が、玄弥の集中をさらに研ぎ澄ます。


 相手の霊力使いが霊波を放つ。

 尾一本で防ぎきるには微妙な威力。体にわずかに熱が走り、心拍が速くなる。

 代償の兆候はまだ軽く、息を整えれば耐えられる範囲だ。


 玄弥は体を低く構え、尾を振り回して攻撃を受け流す。

 連続攻撃の間を縫い、わずかな隙に尾を刺すように当てて反撃する。


     ◆


 相手は動きを読んで攻めてくる。

 剣の軌道、霊力の波、そして連携のリズム。

 玄弥は尾の感覚と自分の体の動きを同期させ、辛うじて優位を維持する。


 ムツミは笑顔を崩さず、風で仲間の動きを支援する。

 「ほら、これで少しは動きやすいでしょ!」

 軽口に見えるが、戦闘補助として非常に有効だ。


 マトリは少し離れた位置から、戦況を冷静に観察し、声をかける。

 「落ち着いて……焦らないで」

 その声が、玄弥の心を支え、尾の動きを滑らかにさせる。


     ◆


 戦闘は中盤、激しい攻防が続く。

 相手の霊力使いが強烈な波動を放つが、玄弥は尾で受け流しつつ体を回転させ、反撃の態勢を整える。

 胸の奥に熱が走るが、集中を切らさず、動きのリズムを崩さない。


 尾一本での攻防は限界が近い。

 しかし、相手の隙を狙い、ムツミの風とマトリの声を合図にして動くことで、着実にポイントを重ねる。


 相手チームも焦りを見せ始める。

 動きがわずかに乱れ、攻撃の精度が下がる。

 玄弥は冷静に距離を取り、尾の先端で相手の剣を弾き、霊力攻撃をかわす。


     ◆


 終盤。

 玄弥は尾一本を最大限に使い、連続反撃を仕掛ける。

 剣を弾き、霊力波をかわし、最後の一撃で相手の防御を崩す。

 笛が鳴り、試合終了。


 観客席から歓声。

 玄弥は尾を引っ込め、深呼吸する。

 体の奥に微かに熱が残るが、制御の感覚を少し掴めた気がする。


     ◆


 マトリが駆け寄る。

 「……無事でよかったです。やっぱり玄弥くんは強い」

 少し照れた表情だが、心からの賞賛。


 ムツミは笑顔で手を叩く。

 「ふふ、今日も楽しかったね!」

 その明るさに、玄弥は自然と笑みを返す。


     ◆


 試合の余韻に浸る中、観客席や控え室の端で、微かな違和感を覚える者もいた。

 人混みに紛れる冷たい視線――昨日の刺客の影が、ちらりと気配を残している。

 だが、玄弥たちはまだ何も気づかない。


 大会は続く。

 4回戦、決勝――その舞台で、影は確実に動き始めている。


 戦いの影は消えない。

 しかし、仲間とともに歩む日常と大会の熱気の中で、光は少しずつ差し込み始めていた

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