模擬戦大会3
午後の光がグラウンドを照らす。
大会も3回戦に入り、観客席は熱気で満ちていた。
玄弥は尾を一本だけ出し、心を落ち着ける。
まだ完全な制御はできていないが、前回までの訓練で得た感覚を信じるしかない。
相手は実力派のチーム。霊力、剣術、霊具のバランスが良く、油断できない。
開始の号令が響く。
◆
試合開始と同時に、相手の剣術使いが前に出る。
玄弥は尾を旋回させ、攻撃を受け流す。
風を操るムツミが、砂や紙を巻き上げて相手の視界を制御。
軽やかな風の動きが、微妙に敵の動きを狂わせる。
「玄弥、今だ!」
マトリの声が耳に届く。
冷静で慎重な助言が、玄弥の集中をさらに研ぎ澄ます。
相手の霊力使いが霊波を放つ。
尾一本で防ぎきるには微妙な威力。体にわずかに熱が走り、心拍が速くなる。
代償の兆候はまだ軽く、息を整えれば耐えられる範囲だ。
玄弥は体を低く構え、尾を振り回して攻撃を受け流す。
連続攻撃の間を縫い、わずかな隙に尾を刺すように当てて反撃する。
◆
相手は動きを読んで攻めてくる。
剣の軌道、霊力の波、そして連携のリズム。
玄弥は尾の感覚と自分の体の動きを同期させ、辛うじて優位を維持する。
ムツミは笑顔を崩さず、風で仲間の動きを支援する。
「ほら、これで少しは動きやすいでしょ!」
軽口に見えるが、戦闘補助として非常に有効だ。
マトリは少し離れた位置から、戦況を冷静に観察し、声をかける。
「落ち着いて……焦らないで」
その声が、玄弥の心を支え、尾の動きを滑らかにさせる。
◆
戦闘は中盤、激しい攻防が続く。
相手の霊力使いが強烈な波動を放つが、玄弥は尾で受け流しつつ体を回転させ、反撃の態勢を整える。
胸の奥に熱が走るが、集中を切らさず、動きのリズムを崩さない。
尾一本での攻防は限界が近い。
しかし、相手の隙を狙い、ムツミの風とマトリの声を合図にして動くことで、着実にポイントを重ねる。
相手チームも焦りを見せ始める。
動きがわずかに乱れ、攻撃の精度が下がる。
玄弥は冷静に距離を取り、尾の先端で相手の剣を弾き、霊力攻撃をかわす。
◆
終盤。
玄弥は尾一本を最大限に使い、連続反撃を仕掛ける。
剣を弾き、霊力波をかわし、最後の一撃で相手の防御を崩す。
笛が鳴り、試合終了。
観客席から歓声。
玄弥は尾を引っ込め、深呼吸する。
体の奥に微かに熱が残るが、制御の感覚を少し掴めた気がする。
◆
マトリが駆け寄る。
「……無事でよかったです。やっぱり玄弥くんは強い」
少し照れた表情だが、心からの賞賛。
ムツミは笑顔で手を叩く。
「ふふ、今日も楽しかったね!」
その明るさに、玄弥は自然と笑みを返す。
◆
試合の余韻に浸る中、観客席や控え室の端で、微かな違和感を覚える者もいた。
人混みに紛れる冷たい視線――昨日の刺客の影が、ちらりと気配を残している。
だが、玄弥たちはまだ何も気づかない。
大会は続く。
4回戦、決勝――その舞台で、影は確実に動き始めている。
戦いの影は消えない。
しかし、仲間とともに歩む日常と大会の熱気の中で、光は少しずつ差し込み始めていた




