幕間、潜む影
グラウンドの観客席は、昼下がりの光に照らされていた。
前半戦を終え、玄弥たちは短い休憩時間を取っている。
息を整えるために座る者、装備を見直す者、友人と笑い合う者――
日常のような雰囲気が大会会場を包んでいた。
だが、その光景の端で、誰も気づかない影が動く。
灰色のコートを翻し、フードで顔を隠した人物。
足音はなく、風に紛れるようにゆっくりと、観客席をすり抜ける。
目の端には、戦闘の興奮で浮かれる生徒たちが映る。
刺客は、四天王の一人、四尺坊の直属。
普段なら直属の命令を待つが、今回は勝手に動き、玄弥の行方を探していた。
観客のざわめきや歓声に紛れ、彼は冷たい目を光らせる。
◆
「……ここか」
低くつぶやき、周囲を確認する。
空気に微かな異変が走る。
普通の生徒には何も感じられないが、霊力の感覚が敏感な者なら、背筋に寒気が走るような……そんな気配。
刺客は人混みに紛れ、微かな霊力の波を探る。
誰にも気づかれないよう、視線を合わせず、動きを最小限にする。
その冷徹さは、観客の楽しげな笑顔と対照的だった。
◆
一方、玄弥たちはまだ休憩に集中していた。
マトリは、前回の戦いでの玄弥の動きを思い返し、無意識に小声でつぶやく。
「……あの動き、やっぱりすごかった……」
ムツミは軽口を叩き、風で砂を舞い上げて笑う。
「ねえ、次の試合も楽しみだよね!」
その無邪気さに、周囲の生徒たちも自然に笑顔になる。
だが、その楽しげな空間の端で、刺客は静かに息を潜める。
尾一本を出す玄弥の制御も知らない、観客に紛れた危険――
その存在が、まだ誰にも気づかれていないのだった。
◆
刺客は一瞬、風に紛れて観客の列を抜け、グラウンドの端で様子を窺う。
前半戦の戦いの残り香――霊力の残滓が空気に微かに漂う。
その波を嗅ぎ分けるように、彼は玄弥の匂いを探す。
目の奥に冷たい光。計算され尽くした緊張感。
「……そろそろ、行動を開始するか」
小さな声でつぶやき、動き出す準備を整える。
◆
会場では、観客も選手もまだ気づいていない。
生徒たちの笑顔、試合の興奮、風に揺れる旗――
すべてが、刺客の冷たい視線に晒されていることを知らない。
遠くでムツミが笑い声を上げる。
マトリは静かに玄弥を見守る。
玄弥は尾の感覚を思い返し、次の試合に備えようとしていた。
しかし、影は確実に近づいている。
その存在は、日常の楽しさに紛れ込みながら、静かに、確実に――次の戦いへの不穏な伏線となっていた




