表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪壊の陰陽師 ―霊力ゼロの陰陽師が最強の妖狐と結ぶ仮初の契約―  作者: 仁科異邦
妖怪の王の復活編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

206/207

限界

 大阪での戦いが終わって、まだ十分も経っていなかった。


 六人は、その場で休んでいた。地面に座り込んで、息を整えている。霊力を、かなり使い果たしていた。


「……疲れたわね」

 ミユキが呟いた。

「そうですね……」

 ナギサも疲れた顔をしている。


 その時。

 玄弥の携帯が、また鳴った。

 炎下家当主からだった。


 玄弥は、嫌な予感がした。

 でも、電話に出た。

「はい」

「西園寺くんか。すまない、また頼みたいことがある」


 玄弥の表情が、曇った。

「……どこですか」

「名古屋だ。複数の妖怪が現れた」炎下家当主の声が、申し訳なさそうだった。

「名古屋の陰陽師が対処しているが、妖怪が強すぎて……」


 玄弥は、五人を見た。

 みんな、疲れ切っている。でも、行くしかない。

「……わかりました。すぐに向かいます」

「すまない。頼む」


 玄弥は、電話を切った。

 五人に、状況を説明する。

「名古屋に、妖怪が現れた」


 ミユキが、立ち上がった。

「……また?」

「ああ」

「でも、あたしたち、もう霊力がほとんど残ってないわよ」

「わかってる。でも、行くしかない」


 ナギサも、立ち上がった。

「行きましょう。他に、誰もいないんです」

 ムツミも、頷いた。

「そうね。あたしたち、頑張らないと」

 ユカリも、小さく頷いた。

「わ、私も、頑張ります」


 葛葉が、結界を張った。

 六人は、一瞬で名古屋に転移した。


 名古屋の市街地。

 そこに、四体の妖怪が現れていた。


 一体目は、巨大な熊の妖怪だった。

 体長四メートルほど、黒い毛並み、鋭い爪、赤い目をしている。


 二体目は、猿の妖怪だった。

 身長二メートルほど、長い腕、鋭い牙、素早い動きをしている。


 三体目は、虎の妖怪だった。

 体長三メートルほど、黄色い毛並みに黒い縞模様、鋭い牙と爪を持っている。


 四体目は、狐の妖怪だった。

 体長二メートルほど、白い毛並み、尾が三本、妖しい雰囲気を放っている。


 名古屋の陰陽師たちが、必死に応戦していた。

 でも、妖怪たちが強すぎた。陰陽師たちが、次々と倒されていく。


 六人が、現場に到着した。


「……四体も」ミユキが呟いた。

「しかも、全部強そう……」ナギサも言った。

「ど、どうしましょう……」ユカリが不安そうに言った。


 玄弥は、四体の妖怪を見た。

 それから、五人を見た。

「……戦うしかない」


 六人は、妖怪たちに向かった。

 熊の妖怪が、最初に動いた。

 巨大な拳を振り下ろして、六人に向かってきた。


 玄弥は、刀を振った。

「《紫電》——!」

 斬撃が、熊の拳にぶつかった。


 でも、玄弥の霊力が足りなかった。

 斬撃が、弱い。熊の拳を、止められない。

「——っ」


 熊の拳が、玄弥を吹き飛ばした。

 玄弥の身体が、地面を転がった。

「——っ、がっ」

 全身に激痛が走る。


 ミユキが、炎を放った。

「《蒼炎刃》——!」

 炎の刃が、猿の妖怪に向かった。


 でも、猿は素早かった。

 炎の刃を避けて、ミユキに接近する。


 猿の拳が、ミユキの腹を打った。

「——っ、かはっ」

 ミユキが、吹き飛んだ。地面に倒れる。


 ナギサが、水を放った。

「《水刃》——!」

 水の刃が、虎の妖怪に向かった。


 虎は、爪で水の刃を弾いた。

 そして、ナギサに向かって突進した。


 ナギサは、水の壁を作った。

「《水壁》——!」

 でも、霊力が足りなかった。壁が、薄い。


 虎の爪が、水の壁を突き破った。

 ナギサの肩を、切り裂いた。

「——っあ!」

 ナギサが、地面に倒れた。血が、流れた。


 ムツミが、風を放った。

「《風刃》——!」

 風の刃が、狐の妖怪に向かった。


 狐は、妖術を使った。

 炎を口から吐いて、風の刃を焼き払った。


 そして、狐の炎が、ムツミに向かった。

「——っ、危ない——!」


 ユカリが、土の壁を作った。

「《土壁》——!」

 でも、霊力が足りなかった。壁が、脆い。


 狐の炎が、土の壁を焼き払った。

 そして、ムツミとユカリを飲み込んだ。

「——っあああ!」

 二人が、地面に倒れた。服が焦げ、火傷を負っている。


 葛葉が、霊気を放った。

「《狐火・連弾》——!」

 金色の霊気が、四体の妖怪に向かった。


 でも、葛葉も疲れていた。

 霊気が、弱い。妖怪たちを、止められない。


 四体の妖怪が、六人を取り囲んだ。


 玄弥は、立ち上がろうとした。

 でも、身体が動かなかった。全身が痛い。霊力も、ほとんど残っていない。

「——っ、くそ」


 ミユキも、立ち上がろうとした。

 でも、腹を打たれたダメージで、動けない。

「——っ、動いて……」


 ナギサは、肩から血を流していた。

 傷が、深い。立てない。

「——っ、痛い……」


 ムツミとユカリは、火傷を負って倒れていた。

 意識が、朦朧としている。

「——っ、うう……」


 葛葉だけが、まだ立っていた。

 九本の尾を展開して、妖怪たちを睨む。

「……わらわが、守るのじゃ」


 でも、葛葉も限界だった。

 霊力が、ほとんど残っていない。


 四体の妖怪が、一斉に攻撃してきた。


 熊の拳、猿の蹴り、虎の爪、狐の炎。

 四つの攻撃が、六人に向かった。


 葛葉は、霊気の壁を作った。

「《狐火・壁》——!」

 でも、霊力が足りなかった。壁が、薄い。

 四つの攻撃が、壁を突き破った。

 六人に、迫った。


 ——このままでは、死ぬ。

 玄弥は、そう思った。

 その瞬間。


 空が、暗くなった。

 巨大な影が、空を覆った。

 そして、八つの頭を持った巨大な蛇が、降りてきた。


 八岐大蛇だった。


 八岐大蛇の八つの頭が、一斉に動いた。

 一つ目の頭が、熊の妖怪に噛みついた。

 二つ目の頭が、猿の妖怪に噛みついた。

 三つ目の頭が、虎の妖怪に噛みついた。

 四つ目の頭が、狐の妖怪に噛みついた。


 四体の妖怪が、一瞬で拘束された。


 残りの四つの頭が、口を開けた。

 そして、毒を吐いた。

 紫色の毒が、四体の妖怪を溶かした。

 一瞬で、妖怪たちが消えた。

 八岐大蛇は、六人の前に降り立った。

 巨大な身体が、地面を揺らした。


「……やれやれ」

 八岐大蛇の声が、響いた。

「お前たち、無茶をしすぎだ」


 玄弥は、八岐大蛇を見た。

「……八岐大蛇」

「久しぶりだな、玄弥」


 八岐大蛇の一つの頭が、玄弥に近づいた。

「随分と、ボロボロではないか」

「……すまない」

「謝るな。お前たちは、よくやった」


 八岐大蛇は、六人を見回した。

「だが、このままでは死ぬぞ」

「……」

「治してやる」


 八岐大蛇の身体が、光り始めた。

 緑色の光が、八岐大蛇を包んだ。

 そして、その光が、六人に流れ込んできた。

 玄弥の身体に、光が入ってきた。

 温かい光が、全身を包んだ。


 傷が、治っていく。

 痛みが、消えていく。

 霊力が、回復していく。


 ミユキの腹の痛みが、消えた。

 ナギサの肩の傷が、塞がった。

 ムツミとユカリの火傷が、消えた。

 葛葉の霊力も、回復した。


 六人は、立ち上がった。

 全員、完全に回復していた。


 玄弥は、自分の身体を見た。

 傷が、一つもない。

「……これは」


 八岐大蛇が、答えた。

「我の治癒の力だ」

「治癒の力?」

「ああ。我は、毒だけでなく、治癒の力も持っている」


 八岐大蛇は続けた。

「お前たちの傷を治し、霊力を回復させた」

「……ありがとうございます」

「礼はいらん」


 八岐大蛇の八つの頭が、六人を見た。

「それより、お前たち、無茶をしすぎだ」

「……」

「疲れ切った状態で、戦い続ければ死ぬぞ」


 玄弥は、俯いた。

「でも、他に誰もいないんです」

「わかっている」八岐大蛇の声が、優しかった。

「だから、我が来た」


 玄弥は、八岐大蛇を見た。

「八岐大蛇様、助けてくれるんですか」

「ああ」八岐大蛇が頷いた。

「禍津が復活した。このままでは、世界が滅ぶ」


 八岐大蛇は続けた。

「我は、禍津を許さん」

「……」

「だから、お前たちに協力する」


 八岐大蛇の八つの頭が、空を見上げた。

「禍津が完全に復活するまで、あと六日」

「六日……」

「その間、我がお前たちを守る」


 八岐大蛇は、玄弥を見た。

「そして、お前たちには、もっと強くなってもらう」

「強く?」

「ああ。今のままでは、四大天魔にも勝てん」


 八岐大蛇は続けた。

「我が、お前たちを鍛える」

「鍛える……」

「そうだ。異界での修行の時のように」


 玄弥は、八岐大蛇を見た。

 それから、頷いた。

「……お願いします」


 ミユキも、頷いた。

「お願いします」

 ナギサも、頷いた。

「お願いします」

 ムツミも、ユカリも、頷いた。

「お願いします」


 葛葉も、頷いた。

「頼むのじゃ、八岐大蛇」


 八岐大蛇は、六人を見た。

「よし。ならば、今すぐ始めるぞ」

「今すぐ?」

「ああ。時間がない」


 八岐大蛇の身体が、光った。

 そして、六人を光が包んだ。

 次の瞬間、六人は別の場所に転移していた。

 そこは、深い森の中だった。

 木々が生い茂り、静かな場所だった。


 八岐大蛇が、そこにいた。

「ここで、修行をする」

「ここは……」

「我の住処だ」


 八岐大蛇は続けた。

「ここは、結界が張られている。外からは、見えない」

「……」

「妖怪も、ここには来られない」


 八岐大蛇の八つの頭が、六人を見た。

「六日間、ここで修行する」

「六日……」

「ああ。禍津が完全に復活する前に、お前たちを強くする」


 玄弥は、拳を握った。

 ——六日間。

 ――その間に、強くなる。


 六人は、決意を新たにした。

 八岐大蛇との修行が、始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ