連戦
大阪の繁華街。
道頓堀の近くに、三体の妖怪が現れていた。
鬼の妖怪は身長二メートルほど、赤い肌、角が一本、手には金棒を持っている。
蛇の妖怪は全長五メートルほど、緑色の鱗、鋭い牙、長い身体をくねらせていた。
鳥の妖怪は翼を広げると五メートルほど、黒い羽根、鋭い嘴、白銀の目をしている。
三体の妖怪が、暴れていた。
ビルを壊し、車を投げ、道路を破壊している。
大阪の陰陽師たちが、必死に応戦していた。
でも、妖怪たちが強すぎた。
陰陽師たちの術が、ほとんど効かない。
六人が、現場に到着した。
「……三体も」ミユキが呟いた。
「しかも、全部強そう」ナギサも言った。
「どうする、玄弥」ムツミが聞いた。
玄弥は、三体の妖怪を見た。
それから、五人を見た。
「仕方ない、分かれて戦おう」
「分かれて?」
「ああ。俺が鬼を。ミユキとナギサが蛇を。ムツミとユカリが鳥を」
玄弥は続けた。
「葛葉は、援護をお願いします」
「わかったのじゃ」
六人は、それぞれの相手に向かった。
玄弥は、鬼の妖怪に向かった。
鬼は、金棒を振り下ろした。玄弥に向かって。
玄弥は、遠見で未来を見た。
——上から来る。
玄弥は、横に跳んだ。金棒が、地面に叩きつけられる。地面が、大きく陥没した。
玄弥は、刀を振った。
「《紫電》——!」
斬撃が、鬼の腕を切った。浅い傷だが、確かに傷ついた。
鬼は、怒る。
「小癪な——!」
鬼は、金棒を横に振った。玄弥を薙ぎ払おうとする。
玄弥は、風で跳んだ。
高く跳んで、金棒を避ける。
そして、空中から斬撃を放った。
「《紫電・連》——!」
五連続の斬撃が、鬼に向かった。
ミユキとナギサは、蛇の妖怪と対峙していた。
蛇は、長い身体を使って、二人を包囲しようとした。身体を地面に這わせて、円を描くように動く。
「——っ、包囲される——!」ミユキが叫んだ。
ナギサが、水を放った。
「《水壁》——!」
水の壁が、蛇の身体を押し返した。
蛇は、牙を剥いた。
毒が、牙から滴っている。
「……毒を持ってる」ナギサが呟いた。
「噛まれたら、まずいわね」ミユキも言った。
ミユキは、炎を放った。
「《蒼炎・朱雀》——!」
炎の朱雀が、蛇に向かった。
蛇は、尾で炎を払った。
でも、炎が熱すぎた。尾が、焼けた。
「——っ」
ナギサは、その隙を逃さなかった。
「《水龍・青龍》——!」
水の龍が、蛇に巻きついた。身体を縛り付ける。
蛇は、暴れた。
力任せに、水の龍を引きちぎろうとする。
ミユキが、炎を溜めた。
「ナギサ、そのまま押さえて——!」
「わかりました——!」
ミユキは、両手を前に出した。
朱雀の力を、全て引き出す。
「《蒼炎・爆》——!」
巨大な炎の球が、蛇に向かった。
炎の球が、蛇を飲み込んで爆発した。
ムツミとユカリは、鳥の妖怪と戦っていた。
鳥は、空を飛んでいた。
高く飛んで、二人を見下ろしている。
「空を飛ばれたら、攻撃しにくいわ」
ムツミが呟いた。
「ど、どうしましょう」ユカリも困った顔をした。
すると鳥が、急降下してきた。
鋭いくちばしで、ムツミを狙う。
ムツミは、風を纏って跳んだ。
横に跳んで、くちばしを避ける。
「《風刃》——!」
風刃を、鳥に向けて放った。
でも、鳥は空中で方向を変えた。
風刃を避けて、また上昇する。
「——っ、避けられた——!」
ユカリが、地面から土の柱を出した。
「《土柱・連》——!」
無数の土の柱が、鳥に向かって伸びた。
鳥は、土の柱の間を縫って飛んだ。
器用に避けていく。
「——っ、当たらない——!」
ムツミは、考えた。
——空を飛ばれたら、攻撃が当たらない。
――なら、空で戦うしかない。
ムツミは、白虎を見た。
「白虎、あたしを空に飛ばせる?」
「できるが……危険だぞ」
「大丈夫。やって」
白虎の力が、ムツミに流れ込んだ。
風が、ムツミの足元に集まる。
ムツミは、風に乗って跳んだ。
高く、高く。空中に。
鳥と、同じ高さに。
鳥は、驚いた顔をした。
人間が、空を飛んでいる。
ムツミは、両手に風を集めた。
「《暴風・白虎》——!」
風の虎が、現れた。
風の虎が、鳥に向かった。
空中で、襲いかかる。
鳥は、避けようとした。
でも、空中では動きが制限される。
風の虎が、鳥を捉えた。
爪が、鳥の翼を切り裂いた。
「——っ」
鳥が、落ちた。
翼を傷つけられて、飛べなくなった。
ユカリが、地面に両手をついた。
「《大地・玄武》——!」
土の亀が、現れた。
土の亀が、落ちてくる鳥を捕まえた。
甲羅で、鳥を押し潰す。
鳥が、悲鳴を上げそれから、動かなくなった。
玄弥は、鬼の妖怪を追い詰めていた。
鬼の身体には、無数の傷がついていた。
玄弥の斬撃で、切り刻まれていた。
鬼は、息が荒かった。
金棒を、杖のようにして立っている。
「……人間め」
玄弥は、刀を構えた。
「もう、終わりだ」
葛葉の霊力が、玄弥に流れ込んできた。
金色の霊力が、玄弥の刀に集まる。
「《紫電・円舞》——!」
紫色と金色の光が、円を描いた。
全方位に、斬撃が放たれた。
無数の斬撃が、鬼を切り裂いた。
鬼の身体が、バラバラになった。
鬼が、倒れ動かなくなった。
こうして三体の妖怪が、全て倒された。
六人は、集まった。
息が荒く、疲れた顔をしている。
「……な、なんとか、勝った」
ミユキが呟いた。
「疲れました……」
ナギサも座り込んだ。
「もう、無理……」
ムツミも地面に倒れ込んだ。
「つ、疲れました……」
ユカリも座った。
玄弥も、疲れていた。
でも、なんとか立っていた。
葛葉が、六人を見た。
「……よくやったのう」
「ありがとうございます」
でも、葛葉の表情は、暗かった。
「じゃが、これはまだ始まりじゃ」
「……」
「これから、もっと強い妖怪が現れるじゃろう」
玄弥は、拳を握った。
——もっと、強くならないと。
――禍津が完全に復活する前に。
六人は、立ち上がった。
まだ、戦いは終わらない。




