禍津の影響
翌日。
東京都内で、妖怪の目撃情報が入った。
六人は、現場に急行した。場所は、都内の繁華街だった。夜の街に、ネオンが輝いている。でも、人通りはなかった。
妖怪が現れたことで、警察が封鎖していた。
「ここか」
玄弥が周りを見回した。
「そうじゃ」
葛葉が頷いた。
「妖怪の気配が、はっきりと感じられる」
その時。
ビルの屋上から、何かが飛び降りてきた。
黒い影が、六人の前に着地した。
狼の妖怪だった。
巨大な狼が、六人を睨んでいた。体長は三メートルほど、黒い毛並み、赤い目。牙を剥いて、唸り声を上げている。
「……狼の妖怪か」玄弥が刀に手をかけた。
「ああ」葛葉が頷いた。
「じゃが、普通の狼の妖怪ではないのう」
「どういうことですか」
ミユキが聞いた。
「妖力が、強すぎる」
葛葉の声が、緊張していた。
「禍津の復活で、力が底上げされておるのじゃ」
狼の妖怪が、吠えた。
その声が、ビル全体に響いた。窓ガラスが、震えた。
狼が、動いた。
六人に向かって突進してきた、速い。
あまりにも速い。
玄弥は、遠見で未来を見た。
——右から来る。
玄弥は、刀を構えた。
「《紫電》——!」
斬撃が、狼に向かった。
でも。
狼は、斬撃を避けた。空中で身体を捻って、斬撃をかわす。
「——っ、避けた——!?」
狼が、玄弥に迫った。
鋭い爪が、玄弥を狙う。
玄弥は、刀で受け止めた。金属音が響く。
でも、狼の力が強すぎる。
玄弥の身体が、押される。
「——っ」
ミユキが、炎を放った。
「《蒼炎刃》——!」
炎の刃が、狼の脇腹を狙った。
狼は、尾で炎を払い、炎が散った。
「——っ、尾で払った——!?」
ナギサが、水を放った。
「《水刃》——!」
水の刃が、狼の背中を狙った。
狼は、跳んで避けた。
高く跳んで、ビルの壁に着地する。そして、壁を蹴って六人に向かって飛んできた。
ムツミが、風を放った。
「《風刃・連》——!」
連続で風刃を放つ。狼に向かって。
狼は、空中で身体を回転させて、全ての風刃を避けた。
そして、ムツミに向かって落ちてきた。
「——っ、危ない——!」
ユカリが、地面から土の壁を出した。
「《土壁》——!」
土の壁が、ムツミの前に立ち上がる。
狼が、土の壁にぶつかる
土の壁が、砕けた。
なんとかムツミを守った。
狼が、地面に着地して六人を、睨んでいる。
玄弥は、歯を食いしばった。
——強い。
――普通の狼の妖怪とは、比べ物にならない。
朱雀が、ミユキの肩に乗った。
「ミユキ、こいつは強かばい」
「わかってる」
「わたしの力を使いんしゃい」
「わかった」
ミユキは、両手を前に出した。
朱雀の力を、引き出す。
「《蒼炎・朱雀》——!」
炎の朱雀が、現れた。赤と青が混ざった、巨大な鳥が。
炎の朱雀が、狼に向かった。
翼を広げて、襲いかかる。
狼は、牙を剥いた。
炎の朱雀に向かって、噛みついた。
牙が、炎を噛んだ。
炎の朱雀が、崩れた。
「——っ、炎を噛んだ——!?」ミユキが驚いた。
青龍が、ナギサの肩に乗った。
「ナギサ、私の力を使ってください」
「はい」
ナギサは、両手を前に出した。
青龍の力を、引き出す。
「《水龍・青龍》——!」
水の龍が、現れた。
青く輝く、長い龍が。
水の龍が、狼に巻きついた。
身体を縛り付けて、動きを止める。
狼は、暴れた。
力任せに、水の龍を引きちぎろうとする。
「——っ、持ちこたえて——!」ナギサが叫んだ。
でも、狼の力が強すぎた。
水の龍が、引きちぎられた。
「——っ」
白虎が、ムツミの肩に乗った。
「ムツミ、俺の力を使え」
「わかった」
ムツミは、両手を前に出した。
白虎の力を、引き出す。
「《暴風・白虎》——!」
風の虎が、現れた。白く輝く、巨大な虎が。
そして風の虎が、狼に向かった。
爪を振るって、攻撃する。
狼も、爪を振るった。
風の虎と、正面からぶつかり合う。
爪と爪が、ぶつかり風が爆発した。
衝撃波が、周りのビルの窓を割る。
風の虎が、押された。
狼の力が、上だった。
「——っ、負けてる——!?」ムツミが驚いた。
玄武が、ユカリの肩に乗った。
「ユカリ、俺たちの力を使え」
「は、はい」
ユカリは、地面に両手をついた。
玄武の力を、引き出す。
「《大地・玄武》——!」
土の亀が、現れた。
黒く輝く、巨大な亀が。
土の亀が、地面から土の柱を何本も出した。
狼の足元から、土の柱が突き出る。
狼の動きが、止まった。
足が、土の柱に絡め取られた。
「——っ」
玄弥は、その隙を逃さなかった。
「今だ——!」
玄弥は、狼に向かって走った。
葛葉の霊力が、玄弥に流れ込んできた。
金色の霊力が、玄弥の身体を満たす。
玄弥は、刀を構えた。
全ての霊力を、刀に込める。
「《紫電・連》——!」
五連続の斬撃が、狼に向かった。
一撃目が、狼の右前脚を切った。
二撃目が、左前脚を切った。
三撃目が、右後脚を切った。
四撃目が、左後脚を切った。
五撃目が、狼の首を切った。
狼の身体が、崩れた。
地面に、倒れた。
玄弥は、息が荒かった。
霊力を、かなり使った。
狼の身体が、消え始めた。
妖気が散って、風に流されていく。
「……た、倒した」ミユキが呟いた。
「なんとか……」ナギサも息を吐いた。
「強かったね……」ムツミも疲れた顔をした。
「つ、強すぎます……」ユカリも座り込んだ。
葛葉が、六人を見た。
「……これが、禍津の復活の影響じゃ」
「……」
「妖怪たちの力が、底上げされておる」
葛葉は続けた。
「普通の狼の妖怪なら、お主らなら簡単に倒せたはずじゃ」
「でも、今のは……」
「ああ。禍津の力で、強化されておった」
玄弥は、拳を握った。
——普通の妖怪でさえ、これほど強い。
――四大天魔や、禍津は、どれほど強いんだ。
その時。
玄弥の携帯が鳴った。
炎下家当主からだった。
玄弥は、電話に出た。
「はい」
「西園寺くんか。今、どこだ」
「東京の繁華街です。狼の妖怪を、倒しました」
「そうか」
当主の声が、緊迫していた。
「すまないが急いで、次の場所に向かってくれ」
「次の場所?」
「大阪で、複数の妖怪が現れた」
「鬼、蛇、鳥の妖怪が同時に現れた。正直大阪の陰陽師だけでは、対処しきれない」
玄弥は、五人を見た。
みんな、疲れた顔をしている。
でも、まだ戦える。
「わかりました。すぐに向かいます」
「頼む」
玄弥は、電話を切った。
五人に、状況を説明する。
「大阪に、妖怪が現れた。行くぞ」
「わかった」
葛葉が、結界を張った。
六人は、一瞬で大阪に転移した。




