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呪壊の陰陽師 ―霊力ゼロの陰陽師が最強の妖狐と結ぶ仮初の契約―  作者: 仁科異邦
妖怪の王の復活編

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圧倒される力

 南の封印が、砕けた。

 石碑が粉々になり、地面に散らばる。


 六人は、呆然と立ち尽くしていた。

 守ったはずの封印が、一瞬で破壊された。


 酒呑童子は、瓢箪から酒を飲んだ。

「ぷはー。うまい」

 その声は、余裕に満ちていた。

「お前ら、よく炎鬼を倒したな」


 玄弥は、刀を構えた。

 でも、手が震えていた。酒呑童子から放たれる妖気が、あまりにも強すぎた。

「……お前が、酒呑童子か」

「そうだ」酒呑童子は笑った。

「俺は、四大天魔の一人。酒呑童子だ」


「四大天魔……」葛葉の声が、震えていた。

「知っておるのか、九尾」酒呑童子が葛葉を見た。

「……ああ」葛葉は頷いた。

「妖怪の王、禍津の配下の中で最強の四体。それが、四大天魔じゃ」


 酒呑童子は、嬉しそうに笑った。

「よく知ってるな。そうだ、俺たち四大天魔は、禍津様直属の配下だ」

 酒呑童子は続けた。

「俺、酒呑童子。そして、三尺坊、だいたらぼっち、大獄丸」

「……」

「俺たち四人が、禍津様の復活のために動いている」


 ミユキが、前に出た。

「封印を、破るために?」

「そうだ」酒呑童子が頷いた。

「東西南北、四つの封印を破れば、禍津様が完全に復活する」


 ナギサが、歯を食いしばった。

「東の封印は、守りました」

「ああ、鬼童丸が失敗したからな」酒呑童子は笑った。

「だが、もう問題ない」


 酒呑童子は、瓢箪を腰に下げた。

「なぜなら、俺がここにいるからだ」

 その瞬間、酒呑童子の妖気が爆発した。

 洞窟全体が、妖気に包まれた。


 六人は、その妖気に押された。

 膝をつきそうになる。息が、できない。

「——っ」


 妖気が、あまりにも強すぎた。

 炎鬼とは、比べ物にならない。

 鬼童丸とも、比べ物にならない。

 桁が、違った。


 玄弥は、遠見を使おうとした。

 でも、未来が見えなかった。妖気が強すぎて、遠見が機能しない。

「——っ、見えない」


 朱雀、青龍、白虎、玄武が、それぞれの巫女の肩に乗った。

「み、ミユキ、こいつは強すぎるばい」朱雀の声が震えていた。

「わかってる……」ミユキも震えていた。

「ナギサ、逃げましょう」青龍も焦っていた。

「で、でも……」

「ムツミ、こいつと戦うのは無理だ」白虎も言った。

「……わかってる」

「ユカリ、俺たちでも勝てない」玄武も言った。

「そ、そんな……」


 酒呑童子は、六人を見た。

「お前ら、俺と戦うつもりか」

「……」

「やめておけ。お前らでは、俺には勝てん」

 酒呑童子の声が、冷たくなった。

「だが、殺しはしない」


 酒呑童子は、手を振った。

 その一撃で、六人全員が吹き飛んだ。


 玄弥は、洞窟の壁に叩きつけられた。

 全身に激痛が走る。意識が、遠のきそうになった。

「——っ」


 ミユキ、ナギサ、ムツミ、ユカリも、同じように壁に叩きつけられた。

 四人とも、立ち上がれない。


 葛葉だけが、なんとか立っていた。

 九本の尾を展開して、酒呑童子を睨む。

「……酒呑童子」

「九尾か」酒呑童子が葛葉を見た。

「お前なら、少しは楽しめるかもしれんな」


 葛葉は、霊気を溜めた。

「《狐火・連弾》——!」

 九本の尾から、金色の霊気が連続で放たれた。


 酒呑童子は、それを手で払った。

 ただ手を振っただけで、葛葉の霊気が全て消えた。

「……っ」葛葉の表情が、変わった。


「その程度か、九尾」酒呑童子が笑った。

「数百年前、お前は禍津様と戦ったそうだな」

「……ああ」

「だが、今のお前では、俺にも勝てん」


 酒呑童子は、葛葉に向かって歩いた。

 そして、葛葉の額に指を当てた。

「眠れ」


 葛葉の意識が、途切れた。

 その場に、倒れた。


 玄弥は、それを見て叫んだ。

「葛葉——!」


 酒呑童子は、玄弥を見た。

「お前が、西園寺玄弥か」

「……」

「鵺から聞いているぞ」


 玄弥は、驚いた。

「鵺……?」

「ああ。鵺が、お前のことを話していた」

 酒呑童子は笑った。

「世話になったと、言っていたぞ」


 玄弥の脳裏に、鵺との戦いが蘇った。

 鵺を倒した時、鵺は消える前に何か言っていた。

 ——また、会おう。


「鵺は、生きているのか」

「ああ」酒呑童子が頷いた。

「あいつは、禍津様の配下だからな。完全には死なん」

「……」

「そして、あいつはお前に感謝していた」


 酒呑童子は続けた。

「お前に倒されたことで、あいつは自分の弱さを知った」

「……」

「だから、お前に世話になったと言っていた」


 酒呑童子は、玄弥の前に来た。

 そして、玄弥の頭に手を置いた。

「だから、俺もお前を殺さない」

「……」

「ただ、眠ってもらう」


 酒呑童子の手から、妖気が流れ込んできた。

 玄弥の意識が、途切れそうになる。

「——っ」


 玄弥は、必死に抵抗した。

 でも、酒呑童子の妖気が強すぎた。

 意識が、だんだん遠のいていく。


 最後に、酒呑童子の声が聞こえた。

「また会おう、西園寺玄弥」

「次は、もっと強くなっておけ」

 玄弥の意識が、途切れた。


 酒呑童子は、六人全員を眠らせた。

 それから、洞窟を出た。


 外に出ると、夕日が沈みかけていた。

 空が、オレンジ色に染まっている。


 酒呑童子は、瓢箪から酒を飲んだ。

「さて、次は西と北だな」

 酒呑童子の身体が、霧のように消えた。

 風に乗って、移動する。


 酒呑童子は、西の封印へと向かった。

 そして、北の封印へと。

 その日のうちに、酒呑童子は全ての封印を破壊した。

 東の封印も、西の封印も、北の封印も。

 四つの封印が、全て破られた。


 玄弥が目を覚ました時、夜になっていた。

 洞窟の中は、暗かった。

 月明かりが、洞窟の入り口から差し込んでいる。


 玄弥は、身体を起こした。

 全身が痛い。でも、動ける。

 周りを見ると、五人も倒れていた。

 葛葉、ミユキ、ナギサ、ムツミ、ユカリ。みんな、眠っている。


 玄弥は、五人を起こした。

「葛葉、起きてくれ」

「ミユキ、ナギサ、ムツミ、ユカリ」


 五人が、ゆっくりと目を覚ました。

「……う」葛葉が目を開けた。

「げ、玄弥……」

「大丈夫か」

「……ああ、なんとか」


 ミユキも目を覚ました。

「……何があったの」

「酒呑童子に、眠らされたんだ」

「そう……」


 ナギサ、ムツミ、ユカリも目を覚ました。

 六人は、立ち上がった。


 玄弥は、石碑があった場所を見た。

 石碑は、粉々になっていた。

 南の封印が、破壊されていた。


「……封印が」ナギサが呟いた。

「ああ」玄弥は頷いた。

「破られた」


 葛葉が、携帯電話を取り出した。

 焰一郎に、連絡を取る。。、

 電話に出た焰一郎の声は、沈んでいた。

「葛葉か」

「はい。南の封印が、破られました」

「……そうか」


 焰一郎は続けた。

「西も、北も、東も破られた」

「——っ、全てですか」

「ああ。酒呑童子が、全ての封印を破壊した」


 葛葉の表情が、絶望に染まった。

「……では」

「ああ」焰一郎の声が、震えていた。

「四つの封印が、全て破られた」

「妖怪の王、禍津が……」

「完全に、復活する」


 葛葉は、電話を切った。

 六人を見た。


「……全ての封印が、破られたのじゃ」


 六人は、言葉を失った。


 ミユキが、地面に座り込んだ。

「そんな……」

 ナギサも、膝をついた。

「嘘……」

 ムツミも、俯いた。

「守れなかった……」

 ユカリも、涙を流した。

「わ、私たち……」


 玄弥は、拳を握った。

 爪が、手のひらに食い込んだ。

 ——守れなかった。

 ――俺たちは、何もできなかった。


 葛葉が、空を見上げた。

 月が、赤く染まっていた。


「……禍津の、復活が始まったのじゃ」

 葛葉の声が、震えていた。

「もう、止められん」


 六人は、沈黙した。

 絶望が、六人を包んだ。


 遠くで、地面が揺れた。

 何かが、目覚めようとしていた。

 妖怪の王、禍津が。

 完全な姿で、復活しようとしていた。


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