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呪壊の陰陽師 ―霊力ゼロの陰陽師が最強の妖狐と結ぶ仮初の契約―  作者: 仁科異邦
妖怪の王の復活編

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201/207

炎の鬼、そして


 翌朝。

 六人は、阿蘇山に向かった。

 葛葉の結界で一瞬で転移する。

 着いた場所は阿蘇山の麓だった。

 朱雀と契約した場所からそう遠くない。


「懐かしいわね」ミユキが山を見上げた。

「ここで、朱雀様と契約したんですよね」ナギサも言った。

「そうたい」朱雀がミユキの肩に顕在化した。「ここは、わたしの思い出の場所ばい」


 葛葉が、前方を指差した。

「南の封印は、あの山の中腹にある」

「中腹?」

「そうじゃ。洞窟の中に、封印がある」


 六人は、山を登り始めた。

 木々の間を抜けて、山道を進む。

 一時間ほど歩いて、洞窟の入り口が見えてきた。

「あれか」玄弥が洞窟を指差した。

「そうじゃ」


 洞窟の入り口は、人が二人並んで入れるくらいの大きさだった。

中は暗く、奥が見えない。

「入るぞ」

 六人は、洞窟に入った。懐中電灯で照らしながら、奥へと進む。


 洞窟は、だんだん広くなっていった。

 天井が高くなり、空間が広がる。

 そして、十分ほど歩いたところで、広い空洞に出た。


 そこに、石碑があった。

 古い石碑が、空洞の中央に立っていた。

 東の封印と同じような石碑だった。

「これが、南の封印か」玄弥が石碑に近づいた。


 その時。

 空気が変わった。

 熱い気配が、流れてきた。


「……来たぞ」玄弥が刀に手をかけた。

「ええ」ミユキも構えた。


 洞窟の奥から、炎が現れた。

 赤い炎が、洞窟を照らした。そして、炎の中から、何かが歩いてきた。


 炎鬼だった。


 全身が炎に包まれた鬼が、六人の前に立った。赤い身体、二本の角、口から炎を吐いている。

「……人間か」

 炎鬼の声が、荒々しく響いた。

「封印を守りに来たか」


 玄弥は、炎鬼を睨んだ。

「そうだ」

「ならば、邪魔だ」炎鬼の周りに、炎が激しく燃え上がった。

「ここで、死んでもらう」


 炎鬼が、手を振った。

 炎の球が、六人に向かって飛んできた。無数の炎の球が、連続で襲いかかる。


 ミユキが、前に出た。

「《蒼炎壁》——!」

 青い炎の壁が、展開された。炎の球が、壁にぶつかって弾かれる。


 でも、炎鬼の炎が強すぎた。

 壁が、軋んだ。

「——っ、強い」ミユキが歯を食いしばった。


 朱雀が、ミユキの肩から飛んだ。

「ミユキ、わたしも手伝うばい——!」

 朱雀の力が、ミユキに流れ込む。青い炎の壁が、赤い光を帯びた。壁が、強化される。


 炎の球が、全て防がれた。

 ミユキは、息を吐いた。

「……なんとか、防げた」


 炎鬼は、笑った。

「ほう、朱雀の力を使うか」

「知ってるの?」

「当然だ。我は炎を司る者。朱雀のことは、よく知っている」


 炎鬼は、構えた。

「だが、朱雀の力を借りたところで、我には勝てん」

 炎鬼の全身から、炎が噴き出した。洞窟全体が、炎に包まれる。

「これが、我の炎だ——!」


 炎鬼が、拳を振るった。

 巨大な炎の拳が、六人に向かった。洞窟を埋め尽くすほどの、巨大な拳が。


 玄弥は、刀を抜いた。

「《紫電・連》——!」

 五連続の斬撃が、炎の拳に向かった。斬撃が、拳を切り裂く。


 でも、炎の拳は消えなかった。

 切り裂かれても、すぐに再生する。そして、六人に迫る。

「——っ、再生する——!」


 ナギサが、前に出た。

「《水壁》——!」

 水の壁が、展開された。青龍の力を込めた、強力な水の壁が。


 炎の拳が、水の壁にぶつかった。

 水が蒸発して、蒸気が上がる。壁が、炎に押されていく。

「——っ」ナギサは、必死に水を維持した。


 青龍が、ナギサの肩から飛んだ。

「ナギサ、私の力を全て使ってください——!」

 青龍の力が、ナギサに流れ込む。水の壁が、厚くなった。


 炎の拳が、ついに止まった。

 水の壁が、なんとか炎を防いだ。


 炎鬼は、少し驚いた顔をした。

「……ほう、青龍の力も使うか」

「当然よ」ミユキが答えた。


 炎鬼は、笑った。

「面白い。なら、もっと強い炎を見せてやろう」

 炎鬼の身体が、さらに大きくなった。炎が、より激しく燃え上がる。

「《業火・爆炎》——!」


 炎鬼が、両手を上に上げた。

 洞窟の天井に、巨大な炎の球が現れた。直径十メートルはある、巨大な球が。

「喰らえ——!」

 炎の球が、六人に向かって落ちてきた。


 玄弥は、遠見で未来を見た。

 ——避けられない。

 ——防ぐしかない。


「みんな、防御——!」玄弥が叫んだ。


 ミユキが、炎の壁を作った。

 ナギサが、水の壁を作った。

 ムツミが、風の壁を作った。

 ユカリが、土の壁を作った。

 葛葉が、霊気の壁を作った。


 五つの壁が、重なった。

 炎の球が、壁にぶつかった。


 すさまじい衝撃が走った。

 洞窟全体が揺れ、地面が割れた。五つの壁が、軋んだ。ひびが入る。

「——っ、持ちこたえて——!」ミユキが叫んだ。


 朱雀、青龍、白虎、玄武が、それぞれの巫女に力を送った。

 壁が、強化される。


 なんとか、炎の球を防いだ。

 壁が砕けて、炎が消えた。


 六人は、息が荒かった。

 霊力を、かなり使った。


 炎鬼は、まだ余裕の表情だった。

「よく防いだ。だが、次はどうする」

 炎鬼は、また炎を溜め始めた。

「もう一度、耐えられるか」


 玄弥は、歯を食いしばった。

 ——このままじゃ、ジリ貧だ。

 ——攻めないと。


「みんな、聞いてくれ」玄弥が言った。

「なに?」

「俺が炎鬼の注意を引く。その間に、みんなで一斉攻撃をしてくれ」

「でも、危険よ」ミユキが言った。

「大丈夫だ。遠見がある」


 玄弥は、刀を構えた。

「行くぞ」

 玄弥は、炎鬼に向かって突進した。


 炎鬼は、玄弥を見た。

「来るか、人間」

 炎鬼は、炎の拳を振るった。玄弥に向かって。


 玄弥は、遠見で未来を見た。

 ——右から来る。

 玄弥は、左に跳んだ。炎の拳が、空を切った。


 玄弥は、炎鬼に接近した。

 刀を振るう。

「《紫電》——!」

 斬撃が、炎鬼の腕を切り裂いた。浅い傷だが、確かに傷ついた。


 炎鬼は、怒った。

「小癪な——!」

 炎鬼は、連続で炎の拳を振るった。玄弥に向かって、何度も何度も。


 玄弥は、遠見で全て避けた。

 右に、左に、上に、下に。炎の拳を全て躱しながら、炎鬼の周りを回る。


 その隙に。

 四人の巫女が、術を準備していた。


 ミユキが、両手を前に出した。

 朱雀の力を、全て引き出す。

「《蒼炎・朱雀・極》——!」


 ナギサが、両手を前に出した。

 青龍の力を、全て引き出す。

「《水龍・青龍・極》——!」


 ムツミが、両手を前に出した。

 白虎の力を、全て引き出す。

「《暴風・白虎・極》——!」


 ユカリが、地面に両手をついた。

 玄武の力を、全て引き出す。

「《大地・玄武・極》——!」


 四体の聖獣が、現れた。

 炎の朱雀、水の龍、風の虎、土の亀。


「玄弥、避けて——!」ミユキが叫んだ。


 玄弥は、風で後方に跳んだ。

 炎鬼から、距離を取る。


 四体の聖獣が、同時に炎鬼に襲いかかった。


 炎の朱雀が、炎鬼を焼いた。

 水の龍が、炎鬼を拘束した。

 風の虎が、炎鬼を切り裂いた。

 土の亀が、炎鬼を押し潰した。


 四つの力が、重なった。

 一つになった。


 爆発が起きた。

 巨大な爆発が、洞窟全体を包んだ。光が、空洞を覆った。


 爆発が、収まった。

 煙が、晴れた。


 炎鬼が、まだ立っていた。


 全身が傷だらけで、炎が弱くなっている。

 でも、まだ倒れていない。

「……やるな、お前たち」

 炎鬼の声が、苦しそうだった。

「だが、まだ終わらん」


 炎鬼の身体が、再び炎に包まれた。

 傷が、再生していく。

「我は、炎の化身。炎がある限り、何度でも蘇る」


 玄弥は、歯を食いしばった。

 ——再生能力がある。

 ——どうすれば、倒せる。


 その時、葛葉が前に出た。

「玄弥、お主に任せるのじゃ」

「葛葉?」

「お主の最強の技を使え」

「最強の技……」


 玄弥は、気づいた。

 ——《紫電・円舞》。

 ――全方位に斬撃を放つ技。


「でも、あの技は霊力を使いすぎる」

「構わん。わらわが、霊力を送るのじゃ」

 葛葉は、玄弥の背中に手を当てた。

「九尾の力を、全て使え」


 葛葉の霊力が、玄弥に流れ込んできた。

 金色の霊力が、玄弥の身体を満たす。

「……っ、すごい力」


 玄弥は、刀を構えた。

 全ての霊力を、刀に込める。葛葉の霊力も、自分の霊力も、全て。


 刀が、紫色と金色の光を放った。


「行くぞ、炎鬼——!」

 玄弥は、炎鬼に向かって走った。


 炎鬼も、構えた。

「来い、人間——!」

 炎鬼は、全ての炎を両手に集めた。最後の一撃を放つために。


 二人が、同時に動いた。


 玄弥は、刀を円を描くように振った。

「《紫電・円舞》——!」


 紫色と金色の光が、円を描いた。

 全方位に、斬撃が放たれた。無数の斬撃が、炎鬼に向かった。


 炎鬼は、炎の拳を振るった。

「《業火・焦熱拳》——!」


 巨大な炎の拳が、玄弥に向かった。


 斬撃と拳が、ぶつかった。


 すさまじい衝撃が走った。

 洞窟全体が揺れ、天井から岩が落ちてきた。地面が大きく割れ、亀裂が広がる。


 光と炎が、激しくぶつかり合った。

 数秒間、拮抗した。

 でも。

 玄弥の斬撃が、炎の拳を切り裂いた。


 無数の斬撃が、炎鬼を切り裂いた。

 全方位から、同時に。

 炎鬼の身体が、バラバラになった。

 炎が、消えた。

 炎鬼が、地面に倒れた。

 もう、動かない。


 玄弥は、刀を下ろした。

 息が、荒い。霊力を、全て使い果たした。


 葛葉が、玄弥を支えた。

「よくやったのう、玄弥」

「……ありがとう、葛葉」


 四人の巫女も、駆け寄ってきた。

「玄弥くん——!」

「西園寺さん——!」

「大丈夫——!?」


 玄弥は、四人を見た。

 それから、笑った。

「大丈夫だ。勝った」


 炎鬼の身体が、消え始めた。

 妖気が散って、風に流されていく。

「……また、会おう」

 炎鬼の最後の言葉が、響いた。

 炎鬼が、完全に消えた。


 六人は、石碑を見た。

 石碑は無事だ、南の封印を守った。


「やった……」ミユキが呟いた。

「守れましたね」ナギサも微笑んだ。

「よかった……」ムツミも安堵した。

「か、勝ちました……」ユカリも嬉しそうだった。


 でも。

 玄弥は、何か違和感を感じていた。

 ――こんなに簡単に、勝てるのか。


 その時。

 洞窟の入り口から、誰かが入ってきた。


 巨大な影が。


 六人は、振り返った。


 そこに、巨大な鬼がいた。


 今までの鬼とは、比べ物にならないほど大きな鬼が。

 三メートルはある、巨大な身体。角が四本、赤い肌、筋肉質な身体。手には、巨大な瓢箪を持っている。


 その鬼は、笑っていた。

「……よくやったな、人間ども」

 その声は、低く、重かった。

「俺の名は、酒呑童子」


 玄弥の背筋が、凍った。

 ——酒呑童子。


 酒呑童子は、石碑を見た。

「南の封印、守ったつもりか」

 それから、笑った。

「だが、無駄だ」


 酒呑童子は、手を振った。

 その一撃で、石碑が砕けた。

 一瞬で。


「——っ!?」

 六人は、驚愕した。


 南の封印が、破られた。


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