東の封印
炎下家の大広間に集まった。
玄弥、葛葉、ミユキ、ナギサ、ムツミ、ユカリ。そして四家の当主、炎下、水瀬、風木、土雲も同席していた。
「状況を説明する」
炎下家当主が地図を広げた。
「東京の東側、千葉県の方角で強い妖気が感知された」
地図には、印がつけられていた。
千葉県の海沿いの場所に。
「ここは……」玄弥が地図を見た。
「封印の地じゃ」葛葉が答えた。
「四つある封印の一つ、東の封印がある場所じゃ」
「東の封印?」ミユキが聞いた。
「そうじゃ」葛葉は説明した。
「妖怪の王は、四つの封印によって封じられておる」
葛葉は地図の四箇所に指を置いた。
「東西南北、それぞれに封印がある。その全てが破られると、王が完全に復活する」
「つまり東の封印が狙われている?」
「そうじゃ、おそらく王の配下が封印を破りに来ている」
水瀬が口を開いた。
「配下、ということは、王はまだ完全には復活していない?」
「そうだと思われます」
炎下家当主が答えた。
「王が完全に復活するには、四つの封印を全て破る必要がある。今は、その準備段階でしょう」
風木が腕を組んだ。
「では、封印を守らなければならんのう」
「そうじゃ」
土雲も頷いた。
「封印が破られたら、王の復活が早まるのう」
玄弥が、地図を見た。
「俺たちが、行きます」
「封印を守って、配下を倒してきます」
ミユキが、立ち上がった。
「いつ出発する?」
「今すぐじゃ」葛葉が答えた。
「封印が破られる前に、到着せねばならん」
「わかった」
六人は、準備を整えた。
玄弥は刀を腰に差し、ミユキ、ナギサ、ムツミ、ユカリはそれぞれの術具を持った。
朱雀、青龍、白虎、玄武も顕在化した。
「行くばい」朱雀がミユキの肩に乗った。
「はい」青龍もナギサの肩に乗った。
「やっと戦えるな」白虎がムツミの肩に乗った。
「頑張ろう」玄武もユカリの肩に乗った。
六人は、炎下家を出た。
葛葉が結界を張り、一瞬で千葉県の海沿いに転移した。
そこは、岬だった。
断崖絶壁が海に面していて、荒々しい波が岩に打ち付けていた。
風が、強く吹いていた。
「ここか」玄弥が周りを見回した。
「そうじゃ」
葛葉が頷いた。
「東の封印は、この岬の地下にある」
葛葉は、岬の中央にある石碑を指差した。
古い石碑が、風雨に晒されて立っていた。
文字が刻まれているが、読めないほど古い。
「この石碑が、封印の要じゃ」
「……」
「この石碑を守れば、封印は破られん」
その時、空気が変わった。
冷たい気配が、流れてきた。
妖怪の気配が。
「来たぞ」
玄弥が刀に手をかけた。
「……強い気配ね」ミユキも構えた。
「はい」ナギサも水を集めた。
空から、何かが降りてきた。
黒い影が、岬に降り立った。
人型の妖怪だった。
黒い着物を着た、人間のような姿をしていた。
でも、その目は赤く、妖気が身体から溢れ出ていた。
「……人間か」
妖怪の声が、低く響いた。
「封印を守りに来たか」
玄弥は、妖怪を睨んだ。
「お前が、封印を破りに来たのか」
「そうだ」
妖怪が頷いた。
「我は、東を司る者。東の鬼、鬼童丸」
鬼童丸が、六人を見た。
「お前たちが、四聖獣と契約した者たちか」
「……知っているのか」
「ああ。我が主が、教えてくれた」
鬼童丸は笑った。
「四聖獣と契約した人間たちが、邪魔をしに来ると」
「主?」玄弥が聞いた。
「妖怪の王、禍津様だ」
その名前を聞いて、葛葉の表情が変わった。
「……禍津」
「葛葉さん、知ってるんですか」ミユキが聞いた。
「ああ」
葛葉の声が、重かった。
「数百年前、わらわたちが封印した妖怪の王の名じゃ」
鬼童丸が、笑った。
「そうだ。禍津様は、数百年前に封印された。だが、今、復活しようとしている」
「復活を、させない」玄弥が刀を抜いた。
「させないだと?」鬼童丸の目が、光った。
「はっ、お前たちに、止められるか」
鬼童丸の周りに、妖気が溢れた。
強い妖気が、岬全体を包んだ。
「これが、我の力だ」
鬼童丸が、腕を振った。
妖気が、六人に向かって襲いかかった。
玄弥は、刀を振った。
「《紫電》——!」
斬撃が、妖気を切り裂いた。
ミユキが、炎を放った。
「《蒼炎・朱雀》——!」
炎の朱雀が、妖気を焼いた。
ナギサが、水を放った。
「《水刃・青龍》——!」
水の龍が、妖気を切り裂いた。
ムツミが、風を放った。
「《風刃・白虎》——!」
風の白虎が、妖気を吹き飛ばした。
ユカリが、土の壁を作った。
「《土壁・玄武》——!」
土の壁が、残りの妖気を防いだ。
六人の攻撃で、鬼童丸の妖気が消えた。
でも、鬼童丸は笑っていた。
「……ほう」
鬼童丸の声が、楽しそうだった。
「やるではないか」
鬼童丸は、構えた。
「なら、本気を出そう」
鬼童丸の身体が、変わった。
身体が大きくなり、角が生えた。鬼の姿に変わった。
「これが、我の真の姿だ」
鬼童丸の声が、響いた。
「さあ、戦おう」
玄弥は、刀を構えた。
ミユキ、ナギサ、ムツミ、ユカリも、それぞれ構えた。
鬼童丸が、動いた。
巨大な拳が、六人に向かって振り下ろされた。




