表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪壊の陰陽師 ―霊力ゼロの陰陽師が最強の妖狐と結ぶ仮初の契約―  作者: 仁科異邦
四聖獣編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

196/207

聖獣 玄武2


 ユカリは、拳を握った。

 ――資格がない。

 ――そう言われた。


 でも、ユカリは諦めなかった。

「……わ、私には、資格があります」

「何?」

「わ、私は、げ、玄武様の器です」

 ユカリは、真っ直ぐ蛇を見た。

「け、契約を結ぶために、こ、ここに来ました」


「器だと?」

 蛇は、ユカリを見た。

「お前が、土雲の巫女か」

「は、はい」

「……弱そうだな」


「ぐ、弱いです」

 ユカリは認めた。

「わ、私は、弱いです。で、でも——」

 ユカリは続けた。

「で、でも、強くなりたいです。げ、玄武様と一緒に、戦いたいです」


「戦いたい?」

「は、はい。わ、私は、今まで逃げてばかりでした。よ、妖怪が怖くて、戦えませんでした」

 ユカリの目から、涙が溢れた。


「で、でも、みんながいてくれました。に、西園寺さんも、ミユキさんも、ナギサさんも、ムツミさんも、葛葉さんも」

「……」

「み、みんなが、私を助けてくれました。だ、だから、私も強くなりたいです。み、みんなを守りたいです」


 ユカリは、玄武の甲羅に手を置いた。

「げ、玄武様。お、お願いします。わ、私と、契約してください」


 蛇は、しばらくユカリを見ていた。

 それから。

「……お前、本気か」

「ほ、本気です」

「本当に、玄武と戦うのか」

「は、はい」

ユカリは頷いた。

「わ、私、頑張ります」


 蛇は、少し黙った。

 それから。

「……玄武」蛇が、亀に呼びかけた。「起きろ」


 亀が、ゆっくりと目を開けた。

 金色の目が、ユカリを見た。

「……誰だ」

 低い声が、響いた。亀の声だった。

「土雲の巫女だ」

蛇が答えた。

「契約を結びに来た」


「契約……」


 亀は、ユカリを見た。

 じっと、見つめた。

「……お前、泣いているのか」

「な、泣いてません」

 ユカリは涙を拭った。

「な、泣いてなんか——」

「嘘をつくな」


 亀の声は、優しかった。

「涙が、出ているではないか」


 ユカリは、また涙が溢れた。

「……す、すみません」

「謝る必要はない」

 亀は、ゆっくりと立ち上がった。

 そしてユカリの前に、立った。

「お前、名前は」

「つ、土雲ユカリです」

「ユカリか」


 亀は、ユカリの頭に顔を近づけた。

「なぜ、泣いている」

「わ、私……」

 ユカリは、言葉に詰まった。

「わ、私、弱いです。だ、だから、げ、玄武様を起こせないんじゃないかって、ふ、不安で——」


「弱くない」

 亀の声が、響いた。

「え?」

「お前は、弱くない」

 亀は続けた。

「ここまで来たではないか。俺の精神世界に、一人で入ってきた」

「で、でも——」

「それは、強い証拠だ」


 亀は、ユカリの涙を拭った。

 優しく。

「お前は、強い。だから、泣くな」


 ユカリは、亀を見た。

 金色の目が、優しく自分を見ていた。


「……げ、玄武様」

「ああ」

「わ、私と、け、契約してくれますか」


 亀は、少し黙った。

 それから。

「……ああ」

 頷いた。

「契約しよう、土雲ユカリ」


 ユカリの目が、輝いた。

「ほ、本当ですか——!」

「本当だ」

 亀は続けた。

「お前の覚悟、確かに受け取った」


 蛇も、ユカリを見た。

「しゃーないか俺も、認めよう」

 蛇の声が、柔らかくなった。

「まぁお前なら、玄武の器に相応しい」


「……あ、ありがとうございます」

 ユカリは、涙を流しながら笑った。


 亀と蛇の身体が、光り始めた。

「では、契約を結ぼう」

 亀の声が響いた。

 光が、ユカリを包んだ。温かい光が。


 ユカリの意識が、現実世界に戻っていく。

 光の中で、玄武の声が聞こえた。

「これから、よろしく頼む、ユカリ」

「は、はい——!」


 次の瞬間、ユカリは現実世界に戻っていた。

 洞窟の中、玄武の前に立っていた。


 みんなが、ユカリを見ていた。

「ユカリ——!」

 ムツミが駆け寄った。

「大丈夫——!?」

「だ、大丈夫です」

 ユカリは笑った。

「げ、玄武様が、起きます」


 その瞬間、玄武が動いた。

 巨大な身体が、ゆっくりと動いた。


 玄武が、目を開け金色の目が、ユカリを見た。


「……久しぶりだな」

 低い声が、洞窟に響いた。

「人間と話すのは」


 玄武の身体が、光り始めた。

 黒い光が、玄武を包んだ。


 光が、ユカリに向かって流れていく。

 ユカリの身体に入っていく。

 胸の中心に、流れ込んでいく。


 ユカリの身体が、重くなった。

 でも、安心する重さだった。大地のような、どっしりとした重さだった。


 光が、消え玄武の姿も、消えた。


 ユカリの胸に、黒い紋章が浮かんでいた。

 玄武の紋章が。


「……契約、完了じゃ」

 葛葉が、満足そうに言った。

「よくやったのう、ユカリ」


 ユカリは、自分の胸を見た。

 紋章が、静かに輝いていた。

「……げ、玄武様がいる私の中に」


 玄弥が、駆け寄った。

「お疲れ様、ユカリ」

「あ、ありがとうございます」

 ユカリは、笑った。

「や、やりました」


 ミユキ、ナギサ、ムツミも駆け寄ってきた。

「すごかったわよ、ユカリ」

「本当に、よく頑張りましたね」

「ユカリちゃん、かっこよかった——!」


 ユカリは、みんなを見た。

 それから、涙が溢れた。嬉し涙が。

「……あ、ありがとうございます。み、みなさん」


 朱雀、青龍、白虎が、ユカリの周りに集まった。

「お疲れさまばい、ユカリ」

 朱雀が言った。

「よくやりました」

 青龍も頷いた。

「玄武を起こすなんて、すごいぞ」

 白虎も尾を揺らした。


 ユカリの胸の紋章が、光った。

 そして、小さな玄武が顕在化した。

 手のひらサイズの、小さな亀と蛇が。


「……よくやったな、ユカリ」

 亀の声が、優しかった。

「あ、ありがとうございます、げ、玄武様」

「これから、よろしく頼む」

「お前は、強くなれる」

 蛇も言った。

「俺たちが、鍛えてやる」


 ユカリは、玄武を見た。

 涙が、また溢れた。

「……は、はい——! よ、よろしくお願いします——!」


 四体の聖獣が、並んだ。

 朱雀、青龍、白虎、玄武。

 四聖獣が、全て揃った。


 玄弥は、四人の巫女を見た。

 ミユキ、ナギサ、ムツミ、ユカリ。

 四人とも、胸に紋章を刻んでいた。


「……やったな、みんな」

 玄弥は、笑った。

「四聖獣、全員と契約できた」


 葛葉も、満足そうに頷いた。

「うむ。これで、準備は整ったのじゃ」

「準備?」

「そうじゃ。妖怪の王と戦う、準備が」


 六人と四体の聖獣は、洞窟を出た。

 外は、夕日が沈みかけていた。

 空が、オレンジ色に染まっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ