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呪壊の陰陽師 ―霊力ゼロの陰陽師が最強の妖狐と結ぶ仮初の契約―  作者: 仁科異邦
四聖獣編

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眠れる聖獣 玄武


 翌朝。

 六人は旅館の食堂で朝食を取った。

 焼き魚、味噌汁、卵焼き、漬物。

 シンプルだが美味しい朝食だった。


「さて」

 葛葉が箸を置いた。

「今日は玄武を探すのじゃ」


「‥玄武様は、どこにいるんですか」

ユカリが、おずおずと聞いた。


「どのかの洞窟におるはずじゃ」

 葛葉は答えた。

「深い洞窟の、最深部に」


 朱雀がミユキの肩に顕在化した。

「玄武は、いっつも寝とるけんね」

「寝てるんですか?」

 ムツミが聞いた。

「そうたい。あいつは、寝るのが好きでのう」

 朱雀は羽を揺らした。


「起こすのが、大変やけんね」

 青龍もナギサの肩に顕在化した。

 「玄武は、数十年単位で眠り続けることもあります」

「数十年……」

 ユカリは青ざめた。


「そ、そんなに‥?」


 白虎もムツミの肩に顕在化した。


「ああ。あいつは、眠りが深いからな」

 白虎は続けた。


「起こすのに、苦労するぞ」

「で、でも、い、居場所はわかるんですよね」

 ユカリが不安そうに聞いた。


「わかるはずじゃ」

 葛葉が頷いた。

「ユカリ、お主が繋がりを辿れば」


 六人は旅館を出た。

 外に出ると、朝の空気が冷たかった。

 山の空気が、清々しい。

「じゃあ、ユカリ」葛葉がユカリに向き直った。「玄武との繋がりを感じてみるのじゃ」

「は、はい」

 ユカリは目を閉じた。

 自分の中にある玄武との繋がりを探す。


 でも‥。

 何も感じられなかった。


 ユカリは目を開けた。

「……わ、わかりません」

「わからん?」

 葛葉が聞いた。

「は、はい。げ、玄武様との繋がりが、か、感じられません」


「繋がりが、ふむ‥?」


 朱雀が首を傾げた。

「おかしかね。繋がりは、残っとるはずやけど」

「もしかして」

 青龍が口を開いた。

「玄武が深く眠りすぎているのかもしれません」

「深く眠りすぎている?」

 玄弥が聞いた。


「はい。玄武は眠ると、霊気を完全に閉じてしまいます、気配を消して、眠るんです」


「つまり」

 ナギサが続けた。

「繋がりはあっても、気配が感じられない?」


「そういうことです」

 青龍が頷いた。

「厄介じゃのう」

 葛葉が腕を組んだ。

 白虎が笑った。

「だから、玄武を探すのは大変なんだ」


 ユカリは焦った。

「ど、どうしましょう」

「大丈夫じゃ」

 葛葉がユカリの肩を叩いた。

「玄武がおる場所の見当は、ついておる」

「け、見当?」

「そうじゃ。洞窟があるのは、この近くの山じゃ」


 葛葉は山を指差した。

「あの山の、どこかに洞窟がある。その洞窟の最深部に、玄武がおるはずじゃ」

「で、でも、ど、どの洞窟かは?」

「それは、わからん」

 葛葉は正直に言った。

「じゃから、探すのじゃ」


 ユカリは不安になった。

 自分が玄武を見つけられなかったら。

 みんなに迷惑をかけてしまう。

 ——わ、私が、しっかりしないと。


「大丈夫よ、ユカリちゃん」

 ムツミがユカリの手を握った。

「む、ムツミさん」

「あたしたちも、一緒に探すから」

 ムツミは笑った。

「そうですよ」

 ナギサも頷いた。

「一緒に、頑張りましょう」

「あんた一人じゃないわ」

 ミユキも言った。


 玄弥も、ユカリを見た。

「焦らなくていい。ゆっくり探そう」

「さ、西園寺さん……」

 ユカリは、少し安心した。

「……は、はい。が、頑張ります」


 六人は、山に向かって歩き始めた。

 木々が生い茂る山道を、ゆっくりと登っていく。


 歩きながら、ユカリは時々立ち止まって、目を閉じた。

 玄武との繋がりを探す。

 でも、何も感じられない。

 また歩き出す。また立ち止まる。

 それを繰り返した。

「……だ、ダメです」ユカリは落ち込んだ。「や、やっぱり、わ、わかりません」

「気にするな」

 玄弥が言った。

「まだ始まったばかりださ」


 一時間ほど歩いて、最初の洞窟を見つけた。

 小さな洞窟で、入り口は人一人が通れるくらいの大きさだった。


「ここかもしれんのう」

 葛葉が洞窟を見た。

「中に、入ってみますか」

 玄弥が聞いた。

「入ってみるか」


 六人は洞窟に入った。

 暗い洞窟の中を、懐中電灯で照らしながら進む。

 だんだん深くなっていく。

 でも、十分ほど進んだところで、洞窟は行き止まりになった。

「……違うようじゃのう」

 葛葉が言った。

「そうですね」ナギサも頷いた。


 六人は洞窟を出て、また山道を歩いた。

 さらに一時間ほど歩いて、二つ目の洞窟を見つけた。

 こちらは最初の洞窟より大きかった。

「ここは、どうかのう」

 六人は中に入った。

 でも、この洞窟も途中で行き止まりになった。

「……違うのう」


 三つ目の洞窟、四つ目の洞窟どれも、違った。


 昼を過ぎた頃、六人は山道で休憩を取った。

 木陰に座って、持ってきたおにぎりを食べる。ユカリは、落ち込んでいた。

「……ご、ごめんなさい」

 小さく、呟いた。

「なにが?」ミユキが聞いた。

「わ、私が、げ、玄武様を見つけられないから……」

「気にするな」

 玄弥が言った。

「玄武が気配を消してるんだから、仕方ない」


 朱雀がミユキの肩から飛んで、ユカリの頭に乗った。

「ユカリ、元気出しんしゃい」

「す、すみません」

「謝らんでよかばい。あんたは、ようやっとるけんね」

 青龍もナギサの肩から飛んで、ユカリの肩に乗った。

「ユカリさん、焦らないでください」

 青龍の声が優しかった。

「玄武は、必ず見つかります」


 白虎もムツミの肩から飛んで、ユカリの膝に乗った。

 「だから、安心しろ」

「……み、みなさん」

 ユカリは、三体の聖獣を見た。

 涙が、出そうになった。

「あ、ありがとうございます」


 昼食を終えて、六人はまた歩き出した。

 ユカリは、時々立ち止まって玄武との繋がりを探した。

 でも、やはり何も感じられない。

 ——わ、私、本当にダメなのかな。

 ——こ、こんなに探しても、見つからない。


 夕方近くになった。

 六人は、山の奥深くまで来ていた。

 もう五つも六つも洞窟を探したが、どれも違った。

「……そろそろ、今日は引き上げるか」玄弥が言った。

「そうじゃのう」

 葛葉も頷いた。

「日が暮れると、危ないからのう」


 ユカリは、それを聞いて焦った。

 ——今日、見つけられなかった。

 ——明日も、見つけられないかもしれない。

 ——わ、私のせいで……。


 ユカリは、もう一度目を閉じた。

 必死に、玄武との繋がりを探した。

 心を研ぎ澄ませて、わずかな繋がりでも感じ取ろうとした。

 ——お願い、玄武様。

 ——どこにいるか、教えてください。


 その時。

 ユカリの足元の石が、動いた。

「——っ」

 ユカリは、バランスを崩した。足が滑る。

「きゃっ——」


 玄弥が、すぐに駆け寄った。

 ユカリの腕を掴んで、支える。

「大丈夫か」

「す、すみません」

 ユカリは、玄弥に支えられながら立った。顔が、真っ赤になった。


 玄弥の腕が、ユカリの腰に回っていた。

 距離が、近い。

 ユカリの心臓が、早鐘を打った。

「さ、西園寺さん……」

「立てるか」

「は、はい」


 ユカリは、玄弥から離れた。

 でも、まだ心臓がドキドキしていた。


 その瞬間、ユカリは感じた。

 玄弥に触れられたことで、心が落ち着いた。そして、心が落ち着いたことで、感覚が研ぎ澄まされた。


 玄武との繋がりが、微かに感じられた。


「——っ」

 ユカリは、目を見開いた。

「ど、どうした」

 玄弥が聞いた。

「……か、感じます」

 ユカリは、呟いた。

「感じる?」

「は、はい。げ、玄武様との繋がりが……み、微かですが、か、感じます」


 葛葉が、駆け寄った。

「本当か、ユカリ」

「は、はい」

 ユカリは、目を閉じた。もっと深く、集中する。


 繋がりが、少しずつはっきりしてきた。

 玄武が、どこかで眠っている。

 深い場所で。暗い場所で。


 ユカリは、方角を感じ取った。

「……あ、あっちです」

 ユカリは、左側を指差した。

「あっち、に、玄武様がいます」


 六人は、ユカリが指差した方向に向かった。

 木々の間を抜けて、獣道を進む。

 十分ほど歩いたところで、崖が見えてきた。

 崖の下に、大きな洞窟があった。


「……あ、あそこです」

 ユカリは、洞窟を指差した。

「げ、玄武様が、あ、あの中にいます」


 葛葉が、洞窟を見た。

「……確かに、強い気配を感じるのう」


 朱雀が、洞窟を見た。

「間違いなかね。玄武の気配がするばい」

 青龍も頷いた。


「ここです。玄武が、この中にいます」

 白虎も尾を揺らした。

「やっと見つけたな」


 玄弥が、ユカリを見た。

「よくやった、ユカリ」

「……あ、ありがとうございます」

 ユカリは、顔を赤くした。


 ムツミが、ユカリの肩を抱いた。

「すごいよ、ユカリちゃん」

「見つけられましたね」

 ナギサも微笑んだ。

「よくやったわ」

 ミユキも頷いた。


 ユカリは、涙が出そうになった。

 でも、我慢した。

 今は、泣いている場合じゃない。

「……い、行きましょう」

 ユカリは、洞窟を見た。

「げ、玄武様に、あ、会いに」


 六人は、洞窟に向かった。

 崖を降りて、洞窟の入り口に立つ。


 洞窟の中は、暗かった。

 懐中電灯で照らしながら、中に入る。

 最初の洞窟よりも、ずっと広い。

 天井が高く、奥が深そうだった。


 六人は、洞窟の奥へと進んだ。

 足音が、洞窟の中に響く。

 どんどん深くなっていく。

 空気が、ひんやりとしていた。


 十分ほど歩いたところで、洞窟が広い空間に出た。

 そこは、巨大な空洞だった。

 天井が見えないほど高く、広い空間が広がっていた。


 そして、その奥に。

 玄武が、いた。


 巨大な亀が、眠っていた。

 黒い甲羅を持った、巨大な亀が。

 その甲羅の上には、蛇が巻きついていた。

 長い蛇が、亀の首に絡まるように巻きついている。


 玄武は、静かに眠っていた。

 呼吸をしているのか、わからないほど静かに。


 ユカリは、その姿を見て息を呑んだ。

「……げ、玄武様」

 玄弥も、玄武を見た。


「……でかいな」

「そうじゃのう」葛葉も頷いた。「四聖獣の中で、一番大きいかもしれんのう」


 朱雀が、玄武を見た。

「相変わらず、寝とるね」

「ええ」

 青龍も頷いた。

「起こすのが、大変です」

「さあ、どうやって起こすかな」白虎が笑った。


 ユカリは、玄武に近づいた。

 足が、震えていた。

 でも、進んだ。


 玄武の前に立った。

 巨大な玄武を、見上げた。


「……げ、玄武様」

 ユカリは、小さく呼びかけた。


 でも、玄武は目を覚まさなかった。

 静かに、眠り続けていた。


ここまでお読み頂きありがとうございます。


玄弥が迷いながらも立ち上がるように。

葛葉が支え続けるようにこの物語も、少しずつ前に進んでいます。


正直に言えば――

書きながら、いつも不安になります。


この選択は間違っていないか。

この戦いは、ちゃんと熱を届けられているか。


もし、どこか一場面でも。


玄弥の覚悟や、葛葉の言葉が少しでも心に残ったなら。

その気持ちを、そっと形にしていただけると嬉しいです。


ブックマークや評価は、この物語にとっての“力の制御”ではなく。


「続きを読みたい」という、あなたの意思そのものです。

無理のない範囲で構いません。


もしよろしければ、この物語の続きを一緒に見届けてください。


よろしくお願いします。

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