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呪壊の陰陽師 ―霊力ゼロの陰陽師が最強の妖狐と結ぶ仮初の契約―  作者: 仁科異邦
四聖獣編

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風の聖獣 白虎との契約その1



 風が強くなってきた。

 木々が激しく揺れていた。

 葉が舞い散っていた。


 六人は山道を登る。

 どんどん高い場所へと。

 空気が薄くなってきた。


「すごい風ね」

 ミユキが、髪を押さえながら言った。

「まともに立ってられないわ」

「白虎が近いんやね」

 朱雀が、ミユキの肩から言った。

「こげん風が吹いとるのは、あいつのせいたい」


「白虎様は、風を操るのですか」

 ナギサが聞いた。

「はい」

 青龍が答えた。

「風の聖獣ですから」


 さらに登ると木々が途切れた。

 開けた場所に出た。


 そこは、巨大な崖だった。

 何百メートルもある、垂直の崖が。

 目の前に、そびえ立っていた。


「……すごい」

 ユカリが、息を呑んだ。

「た、高いです」

「ここじゃ」

 葛葉が、崖を見上げた。

「白虎がおるのは」


 ムツミは風を感じた、強い風を。

 崖の上から吹き降ろす、激しい風を。


 その風の中に。

 白虎の気配を感じた。


「……上にいます」

 ムツミが、呟いた。

「白虎様が」


 その時崖の上から、何かが降りてきた。


 白い影が風に乗って。

 六人の前に、降り立った。


 白虎。


 白い毛並み、黒い縞模様。

 鋭い牙に金色の瞳。

 巨大な虎が六人を見下ろしていた。

 それにその目が冷たかった。


「……人間か」

 低い声が響いた。

 若々しい、でも威圧的な声だった。

「よく来たな」


 ムツミが、前に出た。

「白虎様」

「……」

 白虎は、ムツミを見た。

「お前が、風木の巫女か」

「はい」


 白虎の目が、鋭くなった。

「何の用だ」

「契約を、結びに来ました」

「契約?」

 白虎の声が、冷たくなった。

「笑わせるな」


「……え」

「契約など、もう結ばない」

 白虎は、牙を剥いた。

「四家は、俺たちを見捨てた」


「それは——」

「言い訳は聞きたくない」

 白虎の周りに、風が巻き起こった。

「俺は、もう人間を信用しない!」


 朱雀が、飛び出した。

「白虎——!」

「朱雀」

 白虎は、朱雀を見た。

「お前、炎下の巫女と契約したのか」

「したばい」

「……莫迦が」

 白虎の声が、怒りを帯びた。

「また裏切られるぞ」


「裏切られんよ」

 朱雀は、首を横に振った。

「ミユキは、わたしを裏切らん」

「どうしてわかる」

「わかるけんね」


 青龍も、顕在化した。

「白虎」

「青龍まで——」

 白虎は、驚いた顔をした。


「お前もか」

「ああ」

 青龍は、頷いた。

「ナギサと契約した」


「……」

 白虎は、二体の式神を見た。

 それから。

「お前たちは、また騙されている」

「騙されていません」

 青龍は、静かに言った。

「この者たちは、本気です」


「本気?」

「はい。私たちと共に戦う覚悟があります」

「……」

「だから、信じてください」


 白虎は告げる。

「なら証明してみせろ」


 白虎の周りに、風が激しく巻き起こった。

 六人を、包み込むように。


「俺と戦え。お前たちの力を、見せてみろ」

白虎の声が響く。


 玄弥が、前に出た。

「戦うのか」

「ああ」

 白虎は、牙を剥いた。

「お前たち全員でかかって来い」


「全員で?」

「そうだ。俺は、お前たち全員を試す」

 白虎の目が、光った。

「巫女だけではない。お前たち全員だ」


 玄弥は、刀を抜いた。

「わかった」


 ミユキも、炎を灯した。

 ナギサも、水を集めた。

 ムツミも、風を纏った。

 ユカリも、地面に手を当てた。

 葛葉も、尾を展開した。


 六人が、構えた。

 白虎が、笑った。

「いい目だ」


 その声が、少し楽しそうだった。

「なら、来い」


 白虎が、動いた。

 風に乗って、一瞬で距離を詰めた。

 玄弥に向かって、爪を振り下ろした。

 玄弥は、刀で受け止めた。

「《紫電》——!」

 斬撃が、白虎を弾いた。


 でも。

 白虎は、風に乗って空中で体勢を立て直した。

 そして、すぐに反撃した。


 風の刃が、玄弥に向かった。

 無数の風刃が。


 葛葉の尾が、玄弥を守った。

「《狐火・壁》——!」

 金色の壁が、風刃を防いだ。


 ミユキが、炎を放った。

「《蒼炎・朱雀》——!」

 炎の朱雀が、白虎に向かった。


 白虎は、風で弾いた。


「その程度か」

 白虎の声が、冷たかった。

「朱雀の力を借りても、その程度か」


 ナギサが、水を放った。

「《水刃・青龍》——!」

 水の龍が、白虎を狙った。

 白虎は、躱した。

 風に乗って、高く跳んだ。


「遅い」


 白虎は、空中から風を放った。

 巨大な風の塊が、六人に向かった。


「——っ」

 六人は、散った。

 風の塊が、地面に叩きつけられた。

 地面が、大きく抉れた。


「すごい威力ね」

 ミユキが、息を整えた。

「まともに食らったら、やばいわ」


 白虎が、地面に降り立った。

「お前たちは、バラバラだ」

「……」

「連携が、できていない」

 白虎は、六人を見回した。

「それでは、俺には勝てない」


 玄弥は、みんなを見た。

「……連携するぞ」

「わかった」


 六人は、位置を取り直した。

 白虎を、囲むように。


 玄弥が、前から。

 ミユキが、右から。

 ナギサが、左から。

 ムツミが、上空から。

 ユカリが、地面から。

 葛葉が、後ろから。


 六方向から、同時に攻撃した。


 白虎は、その場で回転した。

 風を纏いながら、高速で回転した。

 竜巻が、発生した。

 白虎を中心に、巨大な竜巻が。


 六つの攻撃が、全て竜巻に吸い込まれた。

 そして、弾かれた。


「——っ」

 六人が、吹き飛んだ。

 竜巻の風圧で。


 地面に、叩きつけられた。


「……っ、強い」

 玄弥は、立ち上がった。

「朱雀や青龍より、強い」


「当然たい」

 朱雀が、ミユキの肩から言った。

「白虎は、戦闘特化の聖獣やけんね」


「戦闘特化?」

「そうばい。四聖獣の中で、一番戦いが得意なんよ」

 朱雀は続けた。

「わたしたちは、それぞれ得意分野があるけんね」


「わたしは炎の制御」

「私は水の操作と精神的な試練」

 青龍が続けた。

「そして、白虎は純粋な戦闘力です」


 白虎が、六人を見た。

「まだやるか」

「当然だ」

 玄弥は、刀を構え直した。


 ムツミが、前に出た。

「白虎様」

「なんだ」

「私に、戦わせてください」


 白虎は、ムツミを見た。

「お前が?」

「はい」

 ムツミは、風を纏った。

「私と、一対一で」


 白虎の目が、鋭くなった。

「……面白い」

「お願いします」

「いいだろう」

 白虎は、頷いた。

「お前の覚悟、見せてもらおう」


 玄弥が、ムツミを見た。

「ムツミ——」

「大丈夫」

 ムツミは、笑った。

「あたし、やってみせる」


 ムツミは、白虎の前に立った。

 風が、二人の間を吹き抜けた。


「準備はいいか」

「はい」

「なら——」

 白虎の目が、光った。

「来い」


 ムツミは、踏み込んだ。

 風を足に纏って、加速した。

「《風刃・連》——!」

 複数の風刃が、白虎に向かった。

 白虎は、躱した。

 最小限の動きで、全て避けた。


「遅い」


 白虎の爪が、ムツミに向かった。

 速い。

 ムツミは、風で身体を逸らした。

 ギリギリで、避けた。


 でも。

 白虎の尾が、ムツミを打った。

「——っあ!」

 ムツミが、吹き飛んだ。

 地面を、転がった。


「ムツミ——!」

 玄弥が、駆け寄ろうとした。


 でも。

 ムツミは、手を上げた。

「大丈夫——」

 立ち上がった。

「まだ、やれる」

 ムツミは、また白虎に向かった。

 今度は、風で空中に跳んだ。

 上から、攻撃した。


「《風刃・乱》——!」

 無数の風刃が、上から降り注いだ。


 白虎は、風の壁を作った。

 風刃が、全て弾かれた。

「その程度では——」


 でも。

 ムツミは、風刃の隙間を縫って突進していた。

 風を纏って、白虎に肉薄した。


「《風刃》——!」

 ゼロ距離で、風刃を放った。


 白虎の身体を、切り裂いた。

 浅く、でも確かに。


「——っ」

 白虎が、後退した。


 ムツミは着地して息をつく。

 息が、荒かった。


 白虎は、自分の傷を見た。

 それからムツミを見た。


「……面白い」

 白虎の声が、楽しそうだった。

「お前、やるな」

 白虎の周りに、風が激しく巻き起こった。

 さっきより、ずっと強い風が。


「なら、俺も本気を出そう」


 白虎の身体が、風に包まれた。

 白い毛並みが、風で逆立った。

 金色の瞳が、輝いた。


「来い、風木ムツミ」

 白虎の声が、響いた。

「お前の全てを、見せてみろ」


 ムツミは、構えた。

 風を、全身に纏った。

 二人の間に緊張が走った。


 風が、激しく吹いた。

 次の瞬間二人が、同時に動いた。


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