閑話 朱雀、顕在化
阿蘇山から下山して、旅館に戻った。
六人は、部屋で休んでいた。
ミユキは、窓際に座っていた。
胸の紋章が、まだ温かかった。
その時。
紋章が、光った。
「——っ」
ミユキは、胸を押さえた。
「なに、これ」
光が、ミユキの胸から溢れ出した。
赤い光が、部屋中に広がった。
みんなが、驚いて見た。
「ミユキ——」
光が、形を成していった。
小さな鳥の形に。
光が消えると。
そこに、小さな朱雀がいた。
手のひらサイズの、真っ赤な小鳥。
金色の目をした、綺麗な小鳥。
長い尾羽を持った、優雅な小鳥。
「……っと」
小鳥が、ミユキの肩に止まった。
「やっと出てこれたばい」
みんなが、固まった。
え、喋るの?しかも博多弁‥。
小鳥が、首を傾げた。
「どげんしたと? みんな、固まっとるばい」
ミユキが、小鳥を見た。
「……あなた、朱雀様?」
「そうたい。わたしが朱雀ばい」
小鳥は、羽を広げた。
「この姿やけん、びっくりしたと?」
葛葉が、笑った。
「ほほう、顕在化したのか」
「おう、九尾の姐さん」
朱雀は、葛葉を見た。
「久しぶりやね」
「久しぶりじゃのう」
玄弥が、朱雀に近づいた。
「顕在化って、なんだ」
「契約した聖獣が、外に出てくることじゃ」
葛葉が説明した。
「普段は、器の中におるんじゃが、こうして外に出ることもできるのじゃ」
朱雀が、玄弥を見た。
「あんたが、玄弥っちゃんな?」
「……っちゃん?」
「ミユキから聞いとるばい」
朱雀は、羽を揺らした。
「よろしゅう頼むばい」
ムツミが、目を輝かせた。
「かわいい——」
「かわいいって言うなや」
朱雀は、むっとした。
「わたしは四聖獣の一体ばい。かわいいとか、そげな言葉で——」
ムツミが、朱雀を撫でた。
「ふわふわ——」
「あ、あんた——」
「すごい、温かい——」
「……ったく」
朱雀は、諦めたように羽を下ろした。
「‥まあ、よかばい。撫でたいなら撫でんしゃい」
ナギサも、近づいた。
「触っても、いいですか」
「よかよか」
朱雀は、頷いた。
「みんな、遠慮せんでよかけん」
ナギサが、朱雀を優しく撫でた。
「……本当に、温かいです」
「当然ばい。わたしは炎の聖獣やけんね」
ユカリも、おずおずと近づいた。
「わ、私も、触って、い、いいですか」
「もちろんばい」
朱雀は、ユカリを見た。
「あんたが、土雲の巫女っちゃんな」
「は、はい」
「玄武のことは、わたしから頼んどくけん」
朱雀は、優しく言った。
「あいつは、ちょっと頑固やけど、優しかとよ」
ユカリは、朱雀を撫でた。
温かかった。
柔らかかった。
ミユキが、朱雀を見た。
「朱雀様、これからよろしくお願いします」
「よろしゅう頼むばい、ミユキ」
朱雀は、ミユキの頬を尾羽で撫でた。
「あんたは、よう頑張ったばい」
ミユキの目が、少し潤んだ。
「……ありがとうございます」
「礼はいらんばい」
朱雀は、笑った。
「わたしたちは、もう仲間やけんね」
玄弥が、口を開いた。
「朱雀、一つ聞いていいか」
「なんね?」
「他の三体も、こうして出てこれるのか」
「出てこれるばい」
朱雀は、頷いた。
「契約さえ結べば、みんな顕在化できるけん」
朱雀は続けた。
「青龍は、真面目な奴ばい」
「真面目?」
「そうたい。礼儀正しゅうて、きっちりしとる」
朱雀は、羽を揺らした。
「白虎は、元気な奴ばい」
「元気?」
「ああ。いつも走り回っとるとよ」
朱雀は、少し困ったように言った。
「玄武は……ちょっと変わっとる」
「変わってる?」
「寝てばっかりやけんね」
朱雀は、笑った。
「起こすのが、大変ばい」
ユカリが、少し不安そうに聞いた。
「げ、玄武様は、お、怖くないですか」
「怖くなかよ」
朱雀は、優しく言った。
「ちょっと無口やけど、優しか奴ばい」
「そ、そうですか」
「ああ。安心しんしゃい」
葛葉が、口を開いた。
「朱雀、次は青龍を探すのじゃが」
「あー青龍な」
朱雀は、頷いた。
「あいつは確か湖におるばい」
「場所はわかるか」
「わかるばい」
朱雀は、窓の外を見た。
「東北の方やね」
「東北?」
「ああ。深い湖があるところたい」
朱雀は続けた。
「十和田湖っちゃったかな」
葛葉が、頷いた。
「十和田湖か」
「そうばい」
「わかった。早速明日、向かうのじゃ」
「よかよか」
朱雀は、ミユキの肩に戻った。
「じゃあ、わたしはミユキの中に戻るばい」
「もう戻るの?」
「うん」
朱雀は、羽を揺らした。
「外におると、疲れるけんね」
朱雀は、みんなを見た。
「また会おうね、みんな」
「うん」
「はい」
「ま、また」
朱雀の身体が、光った。
赤い光が、ミユキの胸に吸い込まれていった。
光が消え、朱雀の姿も消えた。
ミユキは、胸に手を当てた。
紋章が、温かかった。
朱雀が、中にいるのを感じた。
「……不思議ね」
ミユキは、呟いた。
「朱雀が、ここにいるのを感じる」
葛葉が、笑った。
「それが、契約じゃ」
「そうね」
ムツミが、ミユキを見た。
「朱雀様、可愛かったね」
「可愛いって言ったら、怒られるわよ」
「でも、可愛かった」
ムツミは、笑った。
「あたしも、白虎と早く契約したいな」
ナギサも、静かに言った。
「私も、青龍様に会いたいです」
「会えるわよ」
ミユキは、二人を見た。
「あんたたちなら、大丈夫」
ユカリも、小さく頷いた。
「わ、私も、げ、玄武様に会いたいです」
「大丈夫よ、ユカリ」
ミユキは、ユカリの頭を撫でた。
「朱雀も言ってたでしょ。玄武は優しいって」
「は、はい」
玄弥が、立ち上がった。
「じゃあ、明日に備えて休もう」
「そうね」
みんなは、それぞれの部屋に戻った。
ミユキは、ベッドに横になった。
温かい気持ちで、眠りについた。
顕在化した時の朱雀の口調はこんな感じになります。
もしかしたら途中で直すかもしれないです。




