刺客との戦い1
夕陽は校庭を真紅に染め、長い影を落としている。
風はひんやりとして、不穏な気配を運んでくる。
四尺坊の刺客――針を操る妖――は無言で突っ込んでくる。
その速度は常人の視覚では追えず、光の筋となって迫る。
玄弥の胸の奥は熱く、血が小さく沸き立つ。
基礎術だけで守ろうとするが、針の数と速度の前に限界が近い。
視界の端に、次々と針が光の帯となって迫る。
「……これ以上は……無理だ」
胸の奥がぎゅっと熱くなり、筋肉が硬直する。
代償の兆候――小さな痛みが確実に現れていた。
尾を出せば、代償は一気に膨れ上がる。
だが、このままでは押し切られる――
葛葉の声が、頭の奥で低く響く。
『……尾を……一本……』
身体が反応する。
胸の奥で血が騒ぎ、力を求める。
呼吸が乱れ、足元から頭まで霊力の流れが暴れそうになる。
覚悟を決める。
「……行く!」
胸の奥で霊力を一点に集中させる。
身体を裂くような痛みが走り、血が熱を帯びる。
代償は確実に跳ね上がるが、尾が必要だ。
◆
背後から赤い尾が一本だけ現れる。
太く、力強く、霊力の流れを受け止める管のように伸びる。
尾の先端は光を帯び、触れたものを押し返す力を持つ。
尾が現れた瞬間、胸の奥の痛みは増幅した。
しかし、尾が霊力を逃がし、代償が暴走するのをぎりぎりで抑える。
刺客が再び針を飛ばす。
一本の尾で弾き返す。
針が尾に当たるたび、衝撃が腕を伝い、胸の奥の痛みが増す。
だが、尾は1本しかない。
防げる範囲は限られる。
逃げ場はほとんどなく、反撃の隙を慎重に探るしかない。
◆
刺客は攻撃を変化させてくる。
針を旋回させ、空中で折り重なるように飛ばしてくる。
一本の尾では全てを弾ききれず、胸の奥に鋭い痛みが走る。
玄弥は尾を旋回させ、針を弾き返す。
赤い尾の光が空中で弾け、針が散る。
尾の反動が腕を揺らし、足元のバランスを崩す。
胸の奥の痛みが一気に増幅し、呼吸が乱れる。
それでも、尾1本だけで何とか防げる。
基礎術で押し返し、尾を使い、わずかに反撃の隙を生む。
◆
刺客が一瞬、位置を変える。
高速で移動し、針を集中させる。
今度は縦横無尽に飛ばしてきた。
尾1本で防ぐには限界だ。
胸の奥が痛みに変わり、足の筋肉も痙攣する。
身体の悲鳴が聞こえるほどだ。
「……くっ……!」
玄弥は地面を蹴り、跳躍しながら尾を振る。
尾は針を弾き返す。
その衝撃で、刺客がわずかに怯む。
――その瞬間を逃さず、反撃に転じる。
尾を旋回させ、刺客の肩に衝撃を叩きつける。
刺客は吹き飛び、地面に倒れる。
だが、完全に倒したわけではない。
まだ立ち上がる力が残っている。
◆
呼吸は荒く、胸の奥は焼けるように痛い。
全身の筋肉が痙攣し、尾を使うだけで精一杯だ。
代償は体の奥深くで確実に進行している。
だが、尾1本で凌げたことは、確実な手応えだ。
――尾1本でも、戦いを切り抜けることはできる。
しかし、力の制限と代償の恐怖が次の戦いを強く意識させる。
四尺坊の配下――針を操る妖――は、まだ立ち上がる。
玄弥の胸の奥は焼けるように熱く、代償の痛みが全身に広がる。
尾1本だけでは限界に近い。
しかし、引き下がることはできない。




