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呪壊の陰陽師 ―霊力ゼロの陰陽師が最強の妖狐と結ぶ仮初の契約―  作者: 仁科異邦
四聖獣編

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光の中で


 玄弥たちは、ライブ会場に来ていた。

 大きなホールの前に、人が並んでいた。

 若い女性が多かった。


 看板に、『Lumière Crown ワンマンライブ』と書かれていた。


「すごい人ね」

 ミユキが呟いた。

「人気あるのかしら」

「みたいだな」

 玄弥も、人の多さに驚いていた。

「ムツミ、こんなところで活動してたのか」


 葛葉が、看板を見た。

「Lumière Crown、というのがグループ名か」

「そうみたいです」

 ナギサが答えた。

「六人組のアイドルグループらしいです」

「よく調べたな」

「昨日、調べました」


 玄弥は、スタッフらしき人に声をかけた。

「すみません」

「はい?」

「風木ムツミさんに、用があるんですが」

「ムツミちゃんに?」

 スタッフは、玄弥を見た。

「ファンの方ですか」

「いえ、知り合いです」

「知り合い?」


 玄弥は、説明した。

「同じクラスだったんです。少し話がしたくて」

「なるほど」

 スタッフは、少し考えた。

「ライブ前なので、今は難しいですね」

「ライブ後でもいいです」

「わかりました。ライブ後に控え室に案内します」

「ありがとうございます」


 四人は、チケットを買った。

 ホールの中に入った。

 客席が、埋まっていた。

 ステージが、大きかった。


「すごいのう」

 葛葉が、周りを見回した。

「こんなにたくさんの人が集まるのか」

「アイドルって人気なんだな」

 玄弥も、驚いていた。


 ライブが始まった。

 照明が落ちた。

 歓声が上がった。


 ステージに、六人が現れた。

 派手な衣装を着た、六人の女性が。

 音楽が流れた。

 ダンスが始まった。


 玄弥は、六人の中に見つけた。

 ムツミが、いた。

 ピンク色の衣装を着て、笑顔で踊っていた。


 元気だった。

 学校で見ていた時より、ずっと輝いていた。

 楽しそうだった。


「……あれがムツミか」

 葛葉が呟いた。

「元気な子じゃのう」

「ああ」

 玄弥も頷いた。


 ミユキが、ムツミを見ていた。

「……楽しそうね」

「そうね」

 ナギサも、静かに言った。

「本当に、楽しそうです」


 ライブは、一時間続いた。

 歌って、踊って、MCもあった。

 ムツミは、ずっと笑っていた。

 本当に、楽しそうに笑っていた。


 ライブが終わった。

 アンコールがあった。

 六人が、また出てきた。

 最後の曲を歌った。


 終演。

 拍手が響いた。

 歓声が上がった。

 ムツミが、手を振っていた。


 ライブが終わって、四人は控え室に案内された。

 スタッフが、ドアをノックした。

「ムツミちゃん、お客さん」

「お客さん?」

 中から、明るい声が聞こえた。

「誰ー?」


 ドアが開いた。

 ムツミが、顔を出した。

 まだ衣装を着たままだった。


 玄弥を見て、目を見開いた。

「——西園寺くん!?」

「久しぶり、ムツミ」

「なんでここにいるの!?」

 ムツミは、驚いた顔で玄弥を見た。


「っていうか、ライブ見てたの!?」

「見てた」

「マジで!? 恥ずかしい!」


 ムツミは、顔を赤くした。

 それから、慌てて四人を中に招き入れた。

「とりあえず、入って入って」


 控え室は、広かった。

 鏡が並んでいた。

 衣装が、いくつも掛かっていた。


 ムツミは、椅子を勧めた。

「座って座って」

「ありがとう」


 四人は、座った。

 ムツミも、向かいの椅子に座った。


「で、なんでここに?」

 ムツミが聞いた。

「わざわざライブ見に来てくれたの?」

「それもあるけど」

 玄弥は、真剣な顔になった。

「話がある」


 ムツミの表情が、少し変わった。

「……話って、なに」

「風木家のことだ」

「……」

 ムツミの顔が、曇った。

「お父さんから聞いたの?」

「聞いた」


 玄弥は、説明した。

 四聖獣のこと。

 四家の巫女が必要なこと。

 妖怪の王のこと。

 全部。


 ムツミは、黙って聞いていた。

 最後まで、黙って聞いていた。


 玄弥が話し終えた。

 ムツミは、少し黙った。

 それから。

「……ごめん」

 小さく、言った。

「協力できない」


「ムツミ」

「あのね、西園寺くん」

 ムツミは、玄弥を見た。

「あたし、やっとここまで来たの」

「……」

「風木家にいた時、毎日修行ばっかりだった」

 ムツミの声が、少し震えた。

「術の練習、戦い方の訓練、妖怪についての勉強」


「あたし、それが嫌だった」

 ムツミは続けた。

「もっと普通に生きたかった。友達と遊びたかった。好きなことをしたかった」

「……」

「だから、家を出た」


 ムツミは、自分の手を見た。

「姉さんのところに来て、アイドルになった」

「それで、今は楽しいのか」

「楽しいよ」

 ムツミは、笑った。

 でも、その笑顔は少し寂しそうだった。

「すごく楽しい。毎日が充実してる」


「メンバーも優しいし、ファンの人たちも応援してくれる」

 ムツミは続けた。

「やっと、あたしの居場所を見つけたの」

「……そうか」

「だから、ごめん」

 ムツミは、頭を下げた。

「今、メンバーから抜けるのは無理」


 玄弥は、少し黙った。

 それから。

「わかった」

「……え」

「無理強いはしない」

 玄弥は立ち上がった。

「お前が決めたことなら、尊重する」


 ムツミは、驚いた顔で玄弥を見た。

「……いいの?」

「いい」

 玄弥は、ムツミを見た。

「でも、困ったことがあったら連絡してくれ」

「……うん」

「妖怪のことでも、何でも」

「わかった」


 四人は、控え室を出ようとした。

 その時、ムツミが呼び止めた。

「西園寺くん」

「なんだ」

「……ありがとう」

 ムツミは、小さく笑った。

「理解してくれて」


 玄弥は、少し笑った。

「気にするな」


 四人は、控え室を出た。

 ホールを出た。

 外に出た。


 夜だった。

 星が、出ていた。


 ミユキが、玄弥を見た。

「……いいの?」

「なにが」

「諦めるの?」

「諦めてない」

 玄弥は答えた。

「ただ、今は無理強いできない」


 葛葉が、静かに言った。

「ムツミは、今の生活が大切なんじゃろうな」

「そうみたいだ」

「無理に連れ出すわけにはいかんのう」

「ああ」


 ナギサが、口を開いた。

「でも、四聖獣には四人の巫女が必要です」

「わかってる」

「どうしますか」

「……」

 玄弥は、少し考えた。

「もう少し、様子を見る」


 その時。

 ホールの中から、悲鳴が聞こえた。

「——きゃあああ!」


 玄弥は、振り返った。

「今の声——」

「ホールの中からじゃ」

「まさか——」


 四人は、ホールに戻った。

 駆け足で。


 控え室の前に、人が倒れていた。

 スタッフたちが、倒れていた。

 意識がなかった。

「なんだ、これ——」


 控え室のドアが、開いていた。

 中から、黒い気配が漏れていた。

 妖怪の気配が。


「——妖怪か」

 玄弥は、刀を構えた。

「みんな、気をつけろ」

「うむ」


 四人は、控え室に入った。

 中に、妖怪がいた。

 黒い霧のような姿をした妖怪が。

 六人のメンバーを、囲んでいた。


 ムツミが、怯えた顔で立っていた。

 他のメンバーも、怯えていた。

「……っ、西園寺くん!」

 ムツミが、玄弥を見た。

「妖怪が——」

「わかってる」


 妖怪が、玄弥たちを見た。

 赤い目が、光った。

「……人間か」

 低い声が響いた。

「邪魔をするな」


 玄弥は、刀を構えた。

「何が目的だ」

「……この女たちを、乗っ取る」

 妖怪は、メンバーたちを見た。

「霊力の高い人間は、良い器になる」


「させるか」

 玄弥は、踏み込んだ。

「《紫電》——!」


 斬撃が、妖怪に向かった。

 でも、妖怪は霧になって避けた。

「無駄だ」


 妖怪は、ムツミに向かった。

 速い。

「——っ」

 ムツミは、動けなかった。


 葛葉の尾が、妖怪を弾いた。

「《狐火・弾》——!」

 金色の弾が、妖怪を打った。


 妖怪が、吹き飛んだ。

 壁にぶつかった。

「……っ、九尾か」

 妖怪の声が、歪んだ。

「まさか、ここにいるとは」


「ムツミ、他のメンバーを連れて逃げろ」

 玄弥が叫んだ。

「でも——」

「早く」

「……わかった」


 ムツミは、メンバーを連れて控え室を出た。

 玄弥たちと、妖怪だけが残った。


 妖怪が、笑った。

「……逃がしたか。だが」

 霧が、広がった。

「すぐに追いつく」


 玄弥は、刀を構えた。

「追わせない」

「できるか」

「できる」


 こうして戦いが、始まった。


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