表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊装使いになれなかった俺が、九尾と契約した日  作者: 三科異邦


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/35

刺客現る

日が暮れ、校庭は影で覆われる。


 昨日の野良妖怪の件は、まだ学校では噂程度。

 だが、玄弥の胸の奥には、まだ微かな熱が残っていた。

 ――代償の兆候は小さくても、体内に存在する。


 そんなとき、風が変わった。


 冷たく鋭い風。

 空気の密度が変わる。

 霊力が、明らかに外から流れ込んでくる。


 ――野良妖怪ではない。

 明確に意図を持った、狙いがある霊気だ。


     ◆


 暗がりから現れた影。


 人の形をしているが、目が光り、動きは異常に俊敏。

 姿勢の低い、奇妙な体型。

 ――玄弥は直感で理解した。


 これは、ただの下位妖怪ではない。


 胸の奥の熱が増す。

 血が、身体の中で小さく震えている。


「……来たか」


 葛葉の声が、耳元で囁く。


『奴は、四天王の刺客……

 四尺坊の配下だ』


 四天王――妖怪の王直属の四人の部下の一角。

 その一人の名前を聞くだけで、緊張が胸に押し寄せる。


『能力は……針を操る』


「……針?」


『そうだ。飛ばす針で、遠距離からでも命を奪える。

 下手をすれば一撃で死ぬ』


     ◆


 影が動く。

 小さく、瞬間移動のように、位置を変えながらこちらを試す。


 ――全身が、危険信号を発している。


 玄弥は呼吸を整える。

 尾はまだ出せない。

 使えば、代償が一気に膨れ上がる。


 だから基礎術で防ぐしかない。


     ◆


 刺客は、無言のまま針を飛ばす。


 光の筋となって空中を突き抜ける。

 鋭く、正確。

 教室の窓ガラスをかすめるだけでも恐怖が走る。


「……くっ!」


 反応が遅れれば、致命傷。

 玄弥は必死に結界を展開し、手で弾く。

 脚で跳び、距離を取る。


 だが胸の奥が熱くなる。

 代償の兆候――

 血が小さく暴れ、痛みをともなう。


     ◆


 何本も、何十本も針が飛んでくる。

 刺客の動きは俊敏で、わずかな隙も与えない。

 基礎術だけでは限界が近い。


「……まだ、尾は……使えない!」


 必死に霊力を循環させ、衝撃を和らげる。

 だが、一瞬の痛みが身体を襲う。

 代償の兆候が、明確に現れた瞬間だった。


 刺客はそれを見抜いたかのように、距離を保ちながら鋭く攻撃を続ける。


     ◆


 玄弥はふらつきながらも立ち上がる。

 足先から頭まで、再び霊力を通す。

 手のひら、胸の奥――全身で経路を意識し、衝撃を最小限に抑える。


 刺客の針が迫る。

 視界の端で、霧のように小さく揺れる影。

 呼吸を止め、集中する。


 ――これで凌ぐしかない。


 空に夕日が赤く染まる。

 刺客は無言。

 その目は、まるで遊ぶかのように、全力で玄弥を追い詰める。


 玄弥は胸の奥で血の感覚を押さえながら、

 基礎術だけで反撃を模索する。


 ――まだ尾は出せない。

 だが、今日の戦いは、

 尾を使わずとも凌げるかもしれないという可能性を示す。


     ◆


 しかし次の瞬間。


 刺客が一瞬姿を消し、空間をすり抜けるように距離を詰めてきた。

 背後から、光のような針が高速で飛来する。


 反応が間に合わない――

 基礎術で押し返そうとするが、霊力の循環だけでは限界が近い。


 胸の奥の熱が、じくりと痛みに変わる。

 身体が悲鳴を上げ、呼吸も荒くなる。


 ――このままでは押し切られる。


 葛葉の声が頭の中で囁く。


『尾……使うしかないのか、』


 思わず固まる。

 まだ封印は完全に解けていない。

 尾を出せば代償は確実に跳ね上がる。


 だが、敵の圧倒的速度と攻撃範囲を考えれば、

 基礎だけではもう耐えられない――


 胸の奥で血が熱く踊る。

 全身の霊力が反応している。


 ――尾を呼び込むしかない。


 玄弥の指先がわずかに震える。

 尾を出せば、代償は避けられない。

 だが、倒されるよりは、代償を受けても力を使うしかない。


 次の瞬間、刺客が再び針を飛ばしてくる。

 逃げ場はない。


 胸の奥で熱がうねり、身体が自然に反応する――


 尾を出す、覚悟の瞬間が迫っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ