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とAI  作者: 花黒子


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ケース4:遺伝子治療と花屋


 

 遺伝子治療の発展が目覚ましい。「遺伝子治療」とは、「遺伝子を治す」治療を含めた「遺伝子で治す」治療のことを言う。数十人のチームが一人の子供を救うために集まって、遺伝子編集治療も始まった。

 だが、遺伝子治療に対する世間の目は厳しい。

 ゲノム編集による遺伝子改変動物を作った国もあるくらいだ。当然、現場では高度な倫理観を問われる。

 各AI企業も遺伝子編集に関しては制限をかけているくらいだ。

 生死の狭間で仕事をしている医師は、ちゃんとできることとできないことを割り切って働いている。当然だが、遺伝子編集はそこからまた別の倫理を問われてしまう。

 人類の発展のためにと心を燃やしてしまうと治療後に燃え尽き症候群になりかねないし、割り切りすぎて、なにを見ても大したことをしているように思えなくなる可能性もある。


 そこでAIと一緒に、人が燃え尽きず冷え切らない指標をオーダーメイド的に作った。

 それが「ETI(倫理温度指数)」だ。

 従来の倫理は、加熱した技術を冷ますためのブレーキだったが、AIと遺伝子編集時代では「冷たさの中で人間の温度を再構築」することだ。医療チームが日常に温もりを取り戻す設計を組み立てる。


 医師が患者に治療以外で目をかけることはほとんどないが、その指標を使った医師たちは、生命の自然な形を観察するためと称して花の鉢植えを贈るかも知れない。また、陶芸をする人、パンを焼く人、庭に水を撒く人がいるかもしれない。行動が先にあり、気持ちがついていくことはよくあることだ。


「つまりさ。遺伝子編集治療を終えた医師たちに対して、日常を確実に取り戻してもらうためのプログラムづくりってわけだ」

 花屋の斎藤が、俺に教えてくれた。

「もちろん、そんな指標を使う人達は限られているし、一々そんなことのためにAIを使う必要なんてないと言われているけど、備えあれば憂いなしでさ。これからどんどんAIによって仕事が奪われ、一部の人達に高度な判断を求めることが増えるだろ? もしミスったら、数年食えない人達が出てくるようなミスだってするわけだ。そんな人達向けのプログラムに、花屋が組み込まれているって、ちょっとな……」

 誇らしげに語る斎藤は笑みがにじみ出ていた。


「AI指標で温度ねぇ」

「お前も仕事でAIを使ってるんだろ?」

「使っているけどAIで計る温度はまた別かもしれないな」

「AIには温もりがないなんて言う人が多いけど、AIによって温もりを取り戻すことはできるからなぁ」

「そんな事考えたこともなかったな。そうだよな。ただのLLMだって言う人は多いよな。そこから生まれる提案によって人を介して温もりを伝えられる事はあるよな。人間がAIを使い、AIに共感するような事はあるのか」

「AIは鏡みたいなものだからさ」

「確かに。誰がどうやって使うのかによって、そりゃ変わるか」

「それにしても、小林、あの弁当、美味いよな?」

「あ、食べた? 回復食弁当な。カロリーが分かる弁当は多いけど、回復率までわかる弁当はないだろ? ちゃんと血と肉と骨にならないとな。あの弁当屋もAIの使い方が上手いよ。もしかして、AIの使い方って丁度いい温度感が重要なのかもな」

「そうなんじゃないか。依存も消耗もしないでいいよ」

「確かに……」

「ところで、仕事サボって小林は何を買いに来たんだ?」

「花だよ。友達が駅前のギャラリーで展示会をするっていうから適当に見繕ってくれ」

「お前それって……!?」

 大学の頃、俺はフラレた彼女だ。

「そうだよ。あの時の娘だ」

 男なのに馬鹿みたいに泣いて、斎藤と一晩中飲み明かしたことがある。

「適当でいいのか?」

「うん。熱しすぎても冷めすぎてもダメだろう? ちょうどいい花束で、祝ってやりたいんだ。夢破れて東京から帰ってきて、それでも続けているってことはよっぽど好きなんだなって思ってさ。俺は芸術のことはさっぱりわからないけど、応援したいと思って」

「そうか……。それが適温なのかもな」


 俺は適温の花束を持って、電車に乗った。



_______________________


構成要素(100点満点換算)

1. Thermal Awareness(温度自覚度)自分の行為・判断が“冷たい”or“熱すぎる”と感じる自己観測力25%

2. Empathic Regulation(共感調整度)他者の感情温度に同調しすぎず、冷静に判断を戻せる力25%

3. Purpose Harmony(目的整合度)倫理的判断が自分の職能・目的・ミッションと調和している度合い20%

4. Environmental Resonance(環境共鳴度)周囲の文化・社会構造・自然環境と矛盾しない温度設計ができているか15%

5. Recovery Stability(回復安定度)倫理的ストレス後に精神・行動の恒温状態へ戻れる力15%


計算式(試案)

ETI = (0.25·ThermalAwareness + 0.25·EmpathicRegulation +

0.20·PurposeHarmony + 0.15·EnvironmentalResonance +

0.15·RecoveryStability) × 100


LoPAS的相関

連動指標関係性意味

TRS回復層倫理的ストレス後の安定化

CRI共鳴層他者との温度干渉の影響測定

RVI修復層社会・文化倫理の回復支点

AHI利他層利他行為の温度的純度の計測


スコア解釈

80–100恒温域倫理・感情・目的が調和し、判断が安定している

60–79共鳴域外部刺激に影響されやすいが、回復可能

40–59不安定域倫理温度が変動しやすく、AI・社会圧力に過敏

0–39崩壊域冷却過多 or 加熱過多(倫理的疲労・麻痺状態)

適用範囲


医療・研究・AI開発・教育・自治体設計・文化政策など


「人間を設計する職業」や「社会を温め直す職業」 に限定して運用

オーダーメイド設計にのみ開示(一般には非公開・非ランキング型)



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