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幽霊彼女はツッコミ大魔王  作者: リンダ
彼女いない歴=年齢の優馬と美人な幽霊みすずのドタバタ喜劇
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音が紡ぐ夢

子どもたちの願いと、つながる笑顔


〜うにゃ〜あじゃぱーカップル、Zoomで登場!〜


ある日、NPO法人の事務所での活動後。

子どもたちが、美鈴に向かって口々に言った。


「ねえ、美鈴先生」

「この前の演奏のお兄ちゃんお姉ちゃんたち、また来ないの?」

「また会いたいなぁ…今度はしゃべってみたい!」


光子と優子も目を輝かせて賛同する。

「うんうん! うにゃ〜あじゃぱーのおにーちゃんとおねーちゃんやろ? かっこよかったもん!」

「うにゃ〜! って、やりたーい!」


その言葉を聞いた美鈴と優馬は顔を見合わせて、にっこり。


「じゃあ、ズームでつないでみよっか? きっと喜ぶばい」

「おぉ、それ名案! よし、俺が連絡してみるけんね!」


その日の夕方。


パソコンの前に並ぶ子どもたちと、小倉ファミリー。

画面がピコンとつながった先には――

山口第一中学の音楽室に集まった、温也・郷子・たかやん・ながちゃんそして恋たちの姿が!


「やっほー! 久しぶりー!」と郷子が手を振る。

温也は「うにゃ〜……会えてうれしいのぉ〜」と、いきなりのお決まりボケでスタート。


その瞬間、画面の向こうの子どもたちから、どっと笑い声が上がった。


「うにゃ〜きたー!」

「ほんとに言ったー!」

「生“うにゃ〜”やん! これ、録画していいやつ!?」


美鈴も優馬も、画面越しに笑いながら頷く。


郷子は画面に顔を近づけて、「あんたたち、元気にしちょった? 郷子お姉ちゃんは、みんなにまた会いたかったけぇね」

優しい山口弁に、子どもたちはふわっと表情を緩めた。


すると、ひとりの男の子がぽつりと。


「また……音楽、聴きたいな……」

「おれ、初めて“かっこいい”って思ったもん。中学生でも、あんなふうになれるんだって」


画面の向こうで、郷子が一瞬きゅっと唇を結び――そして、にっこり。


「そんなん言われたら、調子のるで~! よっしゃ、次ももっとかっこよぉしちゃるけぇね!」

温也もすかさず、「うにゃ〜! 俺も練習しちょるけぇ、期待しとってくれや!」


その言葉に、画面のこちら側の子どもたちは拍手喝采。


光子と優子が前に出て、マイクに向かって叫ぶ。


「みんなー! 今度はこっちに来てねーっ!」

「泊まりに来てーっ! みちゅことゆーこが、お布団準備しとくけん!」


郷子が笑いながら、「うちとこの温也、いびきうるさいけぇ、耳栓も準備しちょってね〜」と返すと、Zoomの画面はまた爆笑の渦に。


──

たった一度の演奏でつながった絆が、

少しずつ、確かに、笑顔の輪を広げていく。


Zoom越しの出会いでも、

画面越しの声でも、

心がふれると、ちゃんとあったかい。


それを、子どもたちは感じていた。




お盆スペシャル・音と笑いのスマイルセッション!


〜吹奏楽部と小倉ファミリー、再びNPO法人へ〜


夏の盛り。お盆休みに突入したある日、

山口第一中学校吹奏楽部のメンバーが再びNPO法人の事務所を訪れた。


コンクール前でスケジュールが過密な中、

「この日だけは、どんなことがあっても子どもたちに会いに行こう」

そう心に決めて来てくれたのだった。


玄関を開けた瞬間――


「わあああっ! きたあああっ!!」

「おにーちゃんおねーちゃん! うにゃ〜の人ーっ!!」


子どもたちが我先にと走ってきて、

温也や郷子、響子たちの手を取って、満面の笑みで迎えた。


その光景に、郷子は目を細める。


「ん〜…ほんとに来てよかったわぁ」

「今日はガチ演奏しちゃるけぇね!」と温也。


第一部:吹奏楽スペシャルステージ


広めのプレイルームにセッティングされた演奏スペース。

子どもたちは床に座ってワクワクしながら待つ。


響子の指揮のもと、演奏が始まる。


1曲目は『In the Mood』

ジャズの軽快なリズムに、子どもたちが体を揺らし始める。

自然と手拍子が湧き、笑顔が弾けた。


2曲目は『威風堂々』

力強い旋律に、目を丸くして聞き入る子もいれば、

「なんか、心が“ぐわっ”てなる!」と胸に手を当てる子も。


3曲目『アルルの女』では、

クラリネットのしっとりした音色に、目を閉じて静かに聞く子どもたちの姿もあった。


そしてラストは『美しき青きドナウ』

優雅な旋律が部屋を包み込み、まるで映画の中の世界にいるような空気が流れた。


演奏が終わると、大きな拍手と歓声が響く。


「すごかった……」

「おれ、楽器やってみたい!」

「また来てくれる?」


涙ぐむスタッフの姿もあった。


第二部:小倉ファミリー漫才ステージ!


そしてお待ちかね、後半戦は小倉ファミリーのボケツッコミ漫才!


マイクを前に立つは、美鈴と優馬。

その背後から、光子と優子がこっそり登場し、ネタに乱入!


「おとーしゃん! おかーしゃん! またギャグやろーっとぉ?」

「このまえの、しりとりギャグ、まだ覚えとーけんね!」


\\ドッ// (←すでに笑いが)


「また来たー!」「ギャグツインズやー!」


優馬「おいおい! 台本にないぞっ!」

美鈴「なんば言いよーと! うちらが主役ばい!」


優馬「主役は俺たい!」

光子「はいはい、脇役おとーしゃん!」

優子「出番おわったら、お昼寝しときー!」


\\ドカーン!//(爆笑)


最後は、恒例の――

「うにゃ〜……あじゃぱー!」


郷子と温也も飛び入り参加して、見事なツッコミ返しで締めくくり!


「いよっ! 本家本元の“うにゃ〜あじゃぱー”!」

「これぞ西の爆笑座!」


子どもたちの笑い声が、夏の空に吸い込まれていった。


──


演奏と笑い。

二つの力が、たしかに子どもたちの心を、

もう一段、やわらかくしていった日だった。


そして、次の夢が生まれ始める。

「音楽、やってみたい」

「舞台に立ってみたい」

「わたしも、ギャグ言いたい!」


小さな希望の芽が、

この夏の陽射しの中で、そっと芽吹きはじめた。




日差しが少し傾き始めた午後。

 お盆休みの最後の日。山口第一中学吹奏楽部のメンバーが、バスに荷物を積み終えたころ、NPO法人の事務所の前には、たくさんの子どもたちが集まっていた。


 「……そろそろ、行かんといけんね」

 郷子がそう言うと、吹奏楽部のメンバーのひとりが苦笑いしながら、後ろ髪を引かれるように事務所のドアを見つめる。


 「ほんま、帰りたないわー……」

 温也はぼそっと呟いたが、その表情はどこか誇らしげだった。


 かつては目も合わせようとしなかった子どもたちが、今は泣きそうな目で吹奏楽部の仲間たちを見送ろうとしていた。けれど――誰も泣いていなかった。泣かない代わりに、しっかりと前を向いていた。


 「バイバイじゃなくて、またねやろ?」

 光子がそう言うと、優子もにこにこしながら「うん!またね〜!」と手を振った。


 「みんな、また絶対来てよ!ぜったいやけんね!」

 小さな子が叫ぶと、郷子が笑って言った。


 「ほいじゃけ、また来るゆうたら来るっちゃ!」


 温也も続けて、大阪弁でぐっと決める。

 「うちらな、もう“笑いの親戚”や。離れてても、気持ちはつながっとるっちゅうねん!」


 バスに乗り込む前、全員で円になり、最後の「うにゃ〜あじゃぱー!」を唱和。

 その声は、夏の空に響き渡った。


 そしてバスが走り出すと、残された子どもたちは手を振り続けた。

 中には、ギュッと胸の前で拳を握る子もいた。


 「次に会う時は、もっとおもろいこと考えてくるけん!」

 バスの中から、郷子が窓越しに叫ぶと、優馬が笑いながら応えた。


 「そっちも、負けんくらい鍛えとるけんね〜!」


 美鈴もにっこりと手を振る。

 「あんたたちのおかげで、こっちもパワーもらったけんね。ありがと〜!」


 光子と優子は肩を組んで、小さな声で言った。


 「なんかさ……さびしいけど、また会えるって思ったら、うれしいね」

 「うん。ばいばいじゃなくて……またね、やけんね」


 ――こうして、特別な夏の日々はひとまず幕を下ろした。

 けれど、絆は確かに結ばれた。


 次に会う日まで、それぞれの場所で。

 みんな、笑顔を忘れずに、生きていこうと思っていた。


 夏の余韻がまだ空気に残る、8月の終わり。

 それぞれの場所で、静かに、でも確かに、変化が始まっていた。


 NPO法人の事務所。あのイベントのあとも、子どもたちの声が響き渡っている。

 以前は、壁のような沈黙が支配していたあの空間で――今は、笑い声が混じっていた。


 「せんせい、オレな、トランペットやってみたい……!」

 小さな男の子が、スタッフにそう打ち明けた。

 自分から夢を口にしたのは、初めてだった。


 別の女の子は、掃除道具を手に、笑顔で言った。

 「おねえちゃん(美鈴)たちみたいになりたいから、がんばる!」

 気がつけば、自発的にNPOの手伝いをする子どもたちが増えていた。


 学校に通えなかった子が、登校するようになったという連絡もあった。

 教室で「また来たのかよ」と言われるのが怖くて、長い間行けなかった少年が、

 ある日、吹奏楽部の動画を何度も再生しながら、小さな声で言った。


 「……オレも、変わってみたい」


 一方、光子と優子も、幼稚園で泣いている子の手を取り、

 「だいじょーぶやけん。あそぼっか?」と微笑みかけるようになっていた。


 「先生〜、みちゅこちゃんと、優ちゃんがね、お姉ちゃんみたいだった〜!」

 先生も思わず目を細める。


 小倉家のギャグだけじゃない“強さと優しさ”が、確実に娘たちにも伝わっていた。


 そして山口では――。


 吹奏楽メンバーも、それぞれの胸に灯った火を抱えていた。

 「もっと、心に届く音を吹きたい」

 「私、音楽で誰かの力になれる人になりたい」


 あの日、子どもたちがくれた涙と笑顔が、彼らを大きく成長させた。

 楽譜の音符一つひとつが、今は“願い”や“希望”のように見える。


 「うちらの音が、誰かの支えになる日がくるなら……」

 「がんばる意味、ちゃんとある気がするんよ」


 その目は、未来を見据えていた。


 ――誰かのために、何ができるか。

 自分のために、どう生きるか。


 小さな火種が、やがて灯火になり、

 この世界のどこかで、誰かを温める光になる。


 出会いがくれた「変化」は、確かに、今を生きる子どもたちの中に息づいていた。




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