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邪眼のバロールは、絶対に、あたしが殺す!

 ハヤトとケイ、そして、今、ここにいるケイの部下たちは、邪眼のバロールの討伐隊に選ばれたメンバーであり、当時の団長はミーネ、副団長はケイだった。そして、討伐隊は、激しい追跡劇の末、寸でのところでバロールを取り逃がしてしまう。


 それからまもなく、団長のミーネは、竜骨回収クエストに重きを置くため、ブルグント魔導団を脱退し、団長の座をケイに譲った。


 そして、二年の月日が流れる。


 その間、ケイたちは、任務の傍ら、邪眼のバロールの探索を行っていた。


「彼女は、バロールと同じ、フォモル族の血を引く魔族です」


 ケイに紹介され、角の生えた長身の魔導士が、静かに前へと出た。


「バラーと申します。私は、父方の祖先にフォモル族がいまして、代々、その魔力を受け継いでおります。フォモル族は、神々との戦争に敗れ、故郷を追われ、大海へと投げ出された哀れな種族です」


 バラーは続けた。


「フォモル族は、広大な海で、種族が散り散りにならないため、魔力の波動をぶつけ合って、互いの居場所を教え合うようになりました。いわゆる魔力探知のようなものです」


 魔力探知の原理は、自らの魔力を波動として放射線状に放ち、その波動に触れた存在から受ける反動を利用して、その存在の魔力量を計っている。反動が小さければ、魔力量が少なく、逆に反動が大きければ、魔力量が多いことになる。


「その結果、フォモル族は、特殊な魔力探知を取得することができました」


「特殊な魔力探知?」


「それは、フォモル族同士であれば、距離や魔力量に関係なく、魔力探知を行うことができるようになったのです」


 バラーの言葉に、ケイが付け加えた。


「現在、ハーデブルク周辺は、《竜骨生物群集帯(ドラゴン・フォールズ)》となっているため、魔力探知が非常に困難な状況です。しかし、バラーのフォモル族専用の魔力探知であれば、距離や魔力量に関係なく魔力探知を行うことができるため、邪眼のバロールを探知することができたのです」


 ハヤトが眉間にシワを寄せる。


「だが、不可解なのは、今まで、国中どこを探しても、一度も魔力探知に引っかからなかったバロールが、何で急に魔力探知に引っかかったんだろうな」


「バロールの魔力は、ハーデブルク司教座都市に、何の予兆もなく、突如として現れました。原因は、まったくもって不明です」


「なんだそりゃ、瞬間移動でもしてきたのか?」


 俺が訊くと、ケイが頭を振った。


「いえ、テレビゲームのRPGによくあるような瞬間移動魔法は、この世界において、私の知る限り存在していません。太古の昔に、空間を掌握することのできる次元魔法というものがありましたが、千年前の戦争で、魔導書が消失しているため、習得するのは不可能だと言われています」


「じゃあ、いったいどうやって、奴は、姿を現したんだ? それに《竜骨生物群集帯(ドラゴン・フォールズ)》が発生した直後に姿を現したってことは、今回の事態に、奴も関わっているのか?」


「正直、その辺りは、まったく分かっていません」


 謎が謎を呼んでいる。


「!!」


 ハッとあることに気付いた俺は、恐る恐る、ルピナスのほうへと視線を向けた。


 彼女は、冷たい表情を浮かべていた。


 だが、その表情の中に、憎悪の炎がチリチリと音をたてているのが聞こえた。


「邪眼のバロールの魔法によって、たくさんの人が石に変えられたわ……」


 そうだった。


 ルピナス故郷であるイースラント王国を攻めた魔王軍は、先遣隊として、邪眼のバロールが指揮する部隊を派遣し、イースラントの騎士団や魔導団を、次々と石に変えていったらしい。結果、多くの戦力を失ったイースラント王国は、上陸した魔王軍の本隊によって、徹底的に蹂躙され、滅亡へと追い込まれたのである。


 ルピナスとバロールの間には、激しい憎悪に満ちた因縁がある。


「やっと……みんなの仇が討てるのね……」


 ルピナスが口角をつり上げた。


 剣呑な笑み。


「お、おい、ルピナス……」


 室内にひりつくような空気が立ち込めた。


「邪眼のバロールは、絶対に、あたしが殺す!」

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