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冒険者の女は、片っ端からオレが食ってやるっ!

「オレは、7人ってヤルって決めてんだ」


 巨大なスクリーンに映し出された人物は、誰も想像していなかった人物だった。


 もちろん魔族ではない。


 薄明かりに照らされた広い部屋。


 その中央に、巨大な木製のベッドが置かれていた。


 ろうそくの灯りで、薄ぼんやりと映るシルエット。


 ベッドの上に、華奢な手足が見えた。


 映像がゆっくりと、ベッドへ近づいていき、一人の少女を映し出した。


 見覚えのある少女。


 薄明かりに照らされた細い髪は、微かな赤みを帯びていた。


 紛れもなく、あの冒険者の少女だった。


 少女はベッドに仰向けになったまま、必死で何かを叫ぼうとしている。だが、まったく声が聞こえない。懸命に身体を動かそうとしているが、まったく動く気配はない。彼女の手足は大の字に伸び切ったまま、ベッドの上で(はりつけ)の状態になっている。


 そんな少女に向けて、一人の男が手をかざしていた。


 チビで猿顔の日本人。


 勇者である。


 ろうそくの灯りに照らされて、勇者の下卑(げひ)たる嗤い(わらい)が浮かび上がった。


 そんな勇者の周りには、貴族らしき男たちが立っている。


「勇者さまは、独特のご趣味をお持ちですね」


 貴族の一人がうやうやしく言った。


「前の世界じゃあ、オレはいつも、ダチ7人とつるんでたんだ。何をするにも7人だ。もちろん、悪さをする時も7人だ」


 勇者は、どこか自慢げに話し始めた。


 貴族たちは、そろって勇者の話に耳を傾けている。


「んでよ、ダチの一人がパシリに使っている奴がいてな。そいつのネーチャンが、すっげえエロいカラダしてたんだ」


 貴族たちが苦笑いを浮かべた。


「申し訳ありません、勇者さま。ダチ、パシリとは、どういう意味でしょうか?」


 異世界ファンタジーの住人が、チンピラヤンキー言葉を知っているはずがない。


「あー、ダチってのは、トモダチだな。パシリってのは、うーん、なんだ、ドレイみたいなもんか」


「なるほど奴隷ですか。勇者さまの世界では、まだ奴隷がいたのですね」


 異世界ファンタジーには、奴隷はつきものだが、実際のところ、奴隷を見たことはない。


 領地には、農奴と呼ばれる土地を持たない農民はいるが、奴隷ほど虐げられている様子はない。どこにでもいる貧しい農民といった感じの人たちだ。


 魔物が出現する以前は、世界中で交易が盛んだったこともあって、奴隷売買も頻繁に行われていたらしい。しかし、魔物が出現し、大陸全体が森に包まれた現在では、流通経路の寸断、もしくは制限が進んでいき、それに伴って、奴隷売買も衰退していったそうだ。


「んで、そのパシリをボコって、姉ちゃんを連れて来させて、7人でヤッたんだ。しかも、そのパシリの目の前でな。それがサイコーに気持ち良くて、ずうーと忘れらんねえんだ!」


「なるほど、それで我々6人が呼ばれたということですか」


 その場にいる貴族たちの数は、ぴったり6人だった。


「そうだ、俺を合わせて7人だ」


 勇者が、嗜虐的に口角をつり上げた。


「オレは、7人じゃなきゃダメなんだ」


 貴族たちが、うやうやしく笑った。


「ですが勇者さま、何度も言いますが、都市の住人には手を出さないで下さい。いろいろとややこしいことになりますので」


 都市の住人は、都市によって管理されており、三層の階級に分かれている。上層部には聖職者や貴族。中層部には市民権と参政権を持つ市民。そして下層部には、それらを持たない居留民と周辺民がいる。


「つーかよ、娼婦もだめなのか。この前、娼館に行ったら、すっげえ美味そうな女が、ゴロゴロいたんだけどよ」


 周辺民の娼婦は、都市では最下層の階級にいる。


「おやめください。この都市の娼館は、すべて大司教さまの支援を受けている公営娼館です。もし、娼婦に何かあれば、教会が動き出す可能性があります」


 この世界では、国を治める国王よりも、国内すべての教会を支配下に置いている教皇のほうが、遥かに強い権力を持っている。その教皇の配下である大司教には、絶大な権限を与えられており、たとえ勇者であっても、罪を犯せば裁かれる可能性がある。


「あー、坊さんが風俗を経営してるようなもんか。つくづく変な世界だな」


「とにかく、都市の住人は、そっとしておいてください」


「わーてるって、だから、冒険者をラチってんだろ」


 勇者が、にやりと口の端をつり上げた。


「この都市には、冒険者ギルドがありませんから、この都市にいる冒険者は、すべて外からの流入者です。彼らは、我らが都市とは、何の関係ありませんから、どうぞ勇者さまのお気のなすまま、ご自由にして下さい」


 なんて奴らだ。


 俺は、怒りに震えた。


「まあ、冒険者もいいもんだな。特に異種族は、人間とは違った気持ち良さがあるからな。昨日ヤッた猫耳の巨乳のガキはサイコーだったな。さかり具合がヤバかったもんな」


 勇者は下劣な笑みを浮かべると、天井に向け、腕をぐいっと振り上げた。すると、ベッドで、磔の状態だった少女が、引っ張り上げられるように起き上がった。少女の顔は苦しみに歪んでいる。


「冒険者の女は、片っ端からオレが食ってやるっ!」

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