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がっつり稼いで、さっさと引退して、念願の異世界スローライフを送ろう。

「もし、国内すべての竜骨を回収した暁には、お前たちに《ニーベルゲンの財宝》の在処を教えよう」


 ヴォルムス王の言葉に、ミーネとルピナスが強く反応した。


《ニーベルゲンの財宝》とは、かつて、ニーベルゲン族によって守られていた財宝であり、伝承では、神をも凌ぐほどの厖大(ぼうだい)な黄金と伝えられている。それにより、別名、世界財宝とも呼ばれており、古より、世界を統べる力があると伝えられている。ゆえに《ニーベルゲンの財宝》には、ニーベルゲン族による強力な呪いがかけられており、彼らの手から離れた瞬間、その呪いが発動されるという言い伝えもあった。


 これを《ニーベルゲンの呪い》と呼んでいる。


 今から1000年以上前、不死王ザイフリートによって、ニーベルゲン族の国は滅ぼされ、黄金を守る竜も殺されたことで、《ニーベルゲンの財宝》は、ザイフリートの手へと渡った。


 それから間もなく、ザイフリートは、ブルグント王家の謀略に嵌って暗殺され、《ニーベルゲンの財宝》は、ブルグント王家へと渡った。


 そして現在まで、ブルグント王家が、《ニーベルゲンの財宝》を所有している。


 ニーベルゲン族を祖に持つミーネは、長年、ブルグント王国に潜伏し、《ニーベルゲンの財宝》の在処を探し続けていたらしいが、その隠し場所はおろか、痕跡すら見つけ出すことができなかったようだ。


《ニーベルゲンの財宝》の在処は、1000年に渡り、歴代ブルグント国王のみに受け継がれてきたため、その在処を知る者は、現ブルグント国王のヴォルムスだけだった。


 ミーネの目的は《ニーベルゲンの財宝》を、ブルグント王国から奪還し、《ニーベルゲンの呪い》と共に、故郷の地に封印することだった。そんな矢先、竜骨回収クエストの依頼を受け、その報酬の中に、《ニーベルゲンの財宝》の隠し場所の開示があると知り、クエストに参加することを決めたのだ。


 一方、ルピナスは、ここから遥か北にあるイースラント王国のお姫様だったが、五年前、突如として侵攻してきた魔王軍の奇襲を受け、イースラント王国は滅亡へと追い込まれてしまった。辛うじて生き延びることができたルピナスは、各地を転々としながら、三年前、ブルグント王国へ流れ着いたらしい。


 彼女の目的は、世界中に散り散りとなってしまったイースラントの民を集め、国家を再建することだった。


 国家再建における必要資金を得るため、ルピナスは冒険者となり、寝る間も惜しまず、クエストに挑戦し続けたが、国家再建には途方もない資金が必要であり、どれほどクエストを攻略したところで、目標として掲げている金額には到底届かなかった。


 そんな矢先、竜骨回収クエストの依頼を受け、その報酬が高額なのに加え、最終的には《ニーベルゲンの財宝》の在処まで教えてもらえると知り、クエストに参加することを決めたのだ。


 シュタインは、俺たちと出会う以前から、竜骨回収クエストに参加していたらしい。ドワーフ族は、製錬技術と精錬技術に長けており、様々な武器や防具を生み出し続けている。ブルグント王国に流通している武器や防具の多くが、ドワーフ産だとも言われている。


 俺たちが、死ぬほどお世話になっている竜鱗鋼も、すべてドワーフ産だ。


 現在、ドワーフ族は、竜鱗鋼を遥かに超える硬度と魔力を合わせ持つ()()()の生成に力を注いでいる。そのため、原料である竜骨が大量に必要となっていた。そこでドワーフ族最強の戦士であるシュタインが、種族の代表として、危険な竜骨回収の任務に選ばれたのである。


 竜骨回収のため、大陸各地を放浪していたシュタインは、ブルグント王国で、大量の竜骨が放置されていることを知り、すぐさまブルグント王国へと向かい、S級冒険者となり、竜骨回収クエストに片っ端から参加していったらしい。


 シュタインは、竜骨回収業においては、大先輩なのである。


 ミーネ、ルピナス、シュタインにとって、竜骨回収クエストは、まさに人生を懸けた一大クエストでもあった。


 俺は、そんな三人の強い思惑とは、遠くかけ離れたところにいた。


 よく分からんが、とりあえず仕事は決まった。どうやら給料が良さそうだ。ついでにとんでもない美人の同僚がいる。


 骨を拾うだけだし、そんなに悪くはないか。


 異世界で無職になるよりかマシか。


 よしっ、がっつり稼いで、さっさと引退して、念願の異世界スローライフを送ろう。


 そんなことを漠然と考えていた。


 だが、異世界スローライフまでの道のりが、とんでもなく険しく、とんでもなく苦しく、とんでもなく辛い、道のりであることは、当時の俺は知る由もなかった。


 何も知らない。何も分からない。そんな幸せな状態で、俺の異世界ライフは幕を開けた。

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