残虐王と能面王女 「アルゼア」
閲覧が増えてたために調子に乗って書きました。
〜アルゼアside〜
彼女と2人きりになった。
彼女の頭の中は俺に殺されるかも知らないということを恐れているらしかった。いや、正確にいうと恐れてはないな。
ぐはーって…。命の危機を考慮している割には全然危機感がない。能面王女じゃなくて能天気王女ではないだろうか…。まぁそんなところもかわ…。
って俺、そんな場合じゃないんだ…。現実逃避してる場合じゃない…。
『相手がどれくらい強いか知らないけど。鍛えてそうだしぱっと見強そう』
「俺はもともとこの国の騎士団長をやってたから比較的強い。あと俺の名前はアルゼアだ。クユーケさんでもクソイケ陛下でもないからな」
はぁぁぁ。俺はまたやってしまった。また反応してしまった。いつもは気をつけてるんだけど…。
彼女の心の声には反応してしまう。
彼女の心の中はまず、俺を褒め称えた。悪い気はしない。素直に嬉しい。
そして、ルーナは本当に俺の名前を覚えてなかったのか…。結構ショックだ。
「ルーナ、俺は人の心が読める。そして、いつでもどこでも楽しんでるお前に惹かれた」
左手が疼くぜ…?なんのノリなんだ。
「いや、君とエマが決めたんだろ、名前っぽいからって言う理由で。まぁたしかに、名前っぽくするならもう少し何かあっただろ、とは思うけど」
きっと、君は俺のことを恐ろしく思わずに受け入れてくれる。なんか、そんな確信があった。
それの証拠に君はまだこの現実を受け入れられてないっていうのもあるかもしれないが、考えることをやめない。
普通の人はその話を聞いた瞬間、思考するのをやめるか、やめようとする。
俺の能力が受け入れられてない可能性がある。彼女の思考に対して反応をする。それがいちばんわかりやすい証明になるから。
「諦めてるわけではなく、お前の考え方に惹かれたんだ」
本心だった。
そして、このタイミングでさえ、俺は名前を間違えられるのか。
少しショックを覚えながら
「アルゼアだ」
と名乗る。
「ルーナ、さっきから俺が1番お前に伝えたいことをスルーしてないか?」
やっと名前を覚えてくれたな…。少し嬉しく思いながら、かつての俺の失態を伝える。
「初夜に行かなかったのはお前が望んでないと思って。初対面でひどい態度をとった上で初夜を無理やり始める男にはなりたくなかったし。その、きみが、自分の悪評を流してまで拒絶しようとしているようだったから」
「働いてたのは黙認してたが、側室の宮の準備など必要ない。俺の妃はきみだけだ」
本心を。ただ本心を彼女に伝える。それが彼女と関わる上で大切だと学んだ。彼女は取り繕った表面上の言葉には表面上の言葉で返ってくるから。
心は読めるけれども、いつか彼女の本心を彼女の口から聞きたい。
エマやサイラスが聞いているように。俺もルーナの中でのエマやサイラスのような存在に、いやそれ以上の存在になりたい。
彼女が俺のことをずるいという。それが幸せだった。今まで彼女の中で俺の存在はモブキャラ以外の何者でもなかった。
彼女が俺をずるいと、俺に対して何かを感じてくれるほど、俺を見てくれている。
「お前の不安は俺が全力を尽くして解消していく。だから、一歩踏み出してほしい。今までルーナが考えてこなかった、俺と歩むと言う未来に」
一つ一つ。無理強いはせず、俺の思っていることを素直に伝える。
「2年半も放置して何を信じろと?何を思えと?私は人質である以前に誇り高き王女です」
心を読まれてもなお、自分の矜持を保ち認めない、彼女の強さに惹かれる。尊敬する。
「2年の空白期間は俺が悪かった。臆病だったんだ。きみは俺に興味がなさそうだったから…。きみに惹かれていると言う話をして、きみが俺から逃げていく未来を想望したら怖くて何も言えなかったんだ」
「イケメンは好きだけど、ずるい男は嫌いです」
ほぼ告白…。ではないか…?
「そうか?きみは意外とクズだと思っていた俺が実は自分のことが大好きだった、みたいなギャップや予想外な展開が好きだと思ったんだがな。まぁ狙ってやったわけではないが」
『うわ私の好み把握済みなのか。確かに、好きですが何か?ギャップがいちばんの好物ですよ。三度の飯よりもね』
やっぱり。好きだったから。ギャップ。
「改めて言う。俺と、本当の意味で夫婦になってくれないか?俺はきみの心を読めてしまう。その代わりに俺はきみに俺の全てを話そう」
直球に。ただ直球に。まっすぐ伝える。俺が心を読める代わりに、俺は彼女に本心を伝える。
「そんな簡単に信じられる話ではありませんわ。私は駄犬なのでね。でも、駄犬は駄犬でも好奇心旺盛な駄犬なので今まで行ったことのない道があったらふらっと迷い込むかもしれませんわ」
懐かしい。俺と彼女が今日会う前に最後に会った時に話した話だ。
覚えててくれたことが嬉しかった。彼女にとってはいい思い出ではないかもしれないが。
流されそうなのに、自我を強く持つ強い女性。心の中では明るくいろいろなことを考えている明るく可愛く、勝手に宮を城を抜け出す活発な女性。
俺はそんな君に惹かれたから。
〜〜10年後の1/17〜〜
「ルーナ誕生日おめでとう、きみが生まれてきたことに感謝してもしきれないよ」
やっと、10年かかった。10年かかってやっとエマとサイラスを抜かせた。やっといちばん最初に彼女におめでとうを伝えられた。
本当は2人で過ごしたいけれども、それはエマもサイラスも許さないだろうから…
でもルーナが幸せに思ってくれてることが幸せだから。
愛する人が、こんな俺を受け入れてくれた。こんな俺を愛してくれた。俺の隣で笑ってくれる。
俺は幸せ者だ。
大体前の話とかを見直しながら書いているんですが、前の話、誤字が多すぎてビビりました。
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また次話または、新作で、お会いできたら嬉しいです٩( ᐛ )و