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スイートデート
夕食はスイーツビュッフェにした。
葵先輩は甘いものが好きだって聞いていたから。
僕は小さなケーキ2、3個でいっぱいいっぱいだったのに、葵先輩はハムスターがどんぐりを口に含むみたいにもぐもぐしながら、10個も食べていた。
葵先輩曰く、女の子ならこれぐらい普通、らしい。
大げさに恍惚とした表情で食べ進める先輩を、ニコニコしながら眺めていた僕は、それだけで幸せだった。
そういえば、と一人でビュッフェの席に座りながら僕は思う。
「キミ、ワタシのどこが好きなの?」
と先輩から訊かれたのがここだったっけ。
「優しさ、可愛さ、純真さ、声、です!」
「キミさぁ〜、そんな面接で答えるみたいに羅列する人いる?」
「す、すみません!」
と真面目に謝ったら、クスクス笑われた。
すごい可愛い。
「素直でよろしい!」
これ以上ないくらいのニコニコ顔。僕は心のアルバムに刻みつけた。
「美味しいですね!先輩」
ケーキを口に運びながら僕は言った。勝手に声が震えていたことに気づいた。正面にある色とりどりのケーキが、滲んで良く見えなかった。