あの日のデート
「やっぱりこの恋愛映画は最高ですね!♪」
僕は最後に残ったコーラを飲み干しながら言った。
「特に最後の一言は刺さったなあ」
共にいる時間が素敵な時間になるように一緒に頑張りましょう、とヒロインが言っていた。
「僕たちもこれから頑張りましょうね!」
僕はエコバッグで隠れた骨箱に話しかける。
葵先輩はもう話せない。でも僕にはわかる。
あの優しい笑みで、栗色のセミロングの髪が少しかかった頬に、軽く手を当てながら、そうね、と言っている。
キミはわかるかしら?
ワタシがどうして自殺したのか?
必ず先輩を見つけます。
心でそう誓った。
だからまずはあの日のデートをもう一度、そのままやってみることにした。
次は駅近くのゲーセン。
先輩がかわいい〜と言っていた、クマのキャラクターぬいぐるみに挑戦する。3回やったけどダメだった。全くあの時と一緒だ。
「これ、取れるもんなのかな〜?」
あまりに弱々しいアームを睨みつけて文句を言う僕。
しょうがないよ、と先輩が軽くあしらう。
「しょうがないで済んだら警察はいらないんですよ!?」
うめきながら、次の台に移る。
猫のマスコット。小さいのに全然取れない。
クスクス笑いながら見てた先輩の顔を思い出す。また笑われている気がした。
とても、楽しかった。