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幻想の世界


 こんな噂を聞いたことはあるだろうか?

町も人も静まり返る24時、この世ならざる者の世界につながる扉が人知れず開く。入ればそこは幻想を体現した世界、人の願いと妄想が散り積もるそこは地獄か天国か。迷い込んだ世界の幻想に魅了され深く踏み込めば戻ることは叶わず永遠に幻想の世界を彷徨い続ける。

もしも時をかけて出ることが叶おうと帰る世界は遠く過ぎ去り懐かしき人々に会うことはなく一人の孤独、しかして魅了された幻想に尾を引かれ、歩んだ道を戻ろうと扉は消え去り孤独な世界に置いて行かれる。人呼んで神隠し、超常的なものが人を連れ去る恐ろしい噂。


大半の人々はこれを信じてはいないだろう、神隠しもそんな世界もあるはずがないと。

だが心の奥底では誰もがそんな美しい幻想の世界があればいいと願っているのではないだろうか?自らが主人公になれるそんな世界を。自分が自分らしくいられる世界を。

たとえ、その世界が虚構に満ちていようと。

ならば私はこの幻想へのいざないをこう呼ぶとしよう。

神隠し、またの名を【幻想虚構】と。




 硝子高校、オカルト部室


「先輩、また変な妄想してるんですか?」

放課後の部室、散らかった部屋の窓から夕日を眺めつつ妄想を垂れ流す先輩に俺はそう声をかける。

声をかけられた先輩はこちらをゆっくりと振り向きながら口を開く。

「妄想ではないのだよ後輩君。幻想虚構だ!いいかい、人は科学的にあり得ないものは信じない。しかし信じずともそういったものにあこがれを抱くことも多い。それはなぜか?それこそが幻想だ!そしてその幻想は現実には存在しえないが虚構のなかでなら存在できる。神隠しはその幻そ....」

「支離滅裂になってますよ先輩、精神科の予約しといてあげますからとりあえず散らかしたオカルトグッズ片づけてください」

遮るようにそういうと先輩は口を窄めながらもしぶしぶといった感じで片付け始めた。


硝子高等学校オカルト部はこのやばい先輩こと扉間(ひあわい) (みどり)と俺の二人のみの少数部活であり本来は部室などもらえないのだが緑先輩はこの頭で生徒会長を務めているため特例で空き部屋を部室として使うことを許可されている。

本来なら頭が上がらないのだが、この人の行動を見ていると頭が上がらないどころか頭を踏みつけてやりたくなるほどぶっ飛んでいる人なのだ。


なんてさすがに失礼すぎることを考えて少し申し訳なくなっていると。

「おい後輩君、君もぼうっとしていないで手伝いたまえ。それともまさか!いたいけな少女が奉仕している姿をみて興奮する変態だったのか!そ、それならそうと言ってくれればメイド服を持ってきたというのに」

「....俺が馬鹿だった」

なんてエネルギーを使うやり取りを毎回しているがなんだかんだ言ってこの人は相手をよく見ているんだろう、二年ほどの付き合いだが会話して疲れることはあっても不快になることは一度もなかった。先輩から見習うべきことはたくさん...

「反論しないだと?まさか本当にそういう趣味が!? す、すまない実はメイド服は私も持ち合わせていなくてね。その代わりに」

「いりません!それじゃあお先に失礼します」


そういって部室を逃げるように出ていく。

少し申し訳ないことをしたけどあれ以上話していたらこっちの頭がおかしくなるところだったから仕方ない。

そうして後ろを気にしながら校舎の外へ足を進めると夕日がまぶしく目に入ってくる。時間としては大体6時かそこらだろう。


校庭で楽しそうに部活動をしている生徒を横目に歩きなれた帰り道を進み始める。

あたりを見渡せばどこにでもありそうな少し古めの家屋が立ち並び、その合間に少し目立つように近代的な建物が顔をのぞかせる。

二年前に引っ越してきた、硝子高校が存在する硝子町は新しくもなく古くもない、そんなどの県にもありそうな平凡な町だ。

平凡ゆえに退屈するが平凡ゆえに変化の少ない過ごしやすいこの町はそれなりに歴史はあるようで今は無人の神社や鳥居が町を囲む山に点在しており、ある意味そこが唯一の特徴といえるかもしれない。

誰かに説明するように考え事をしているとだんだん日が落ち始めていた。初夏の日没が訪れるのはまだ遅いかと思いきや案外早くタイミングがわかりずらい気がしてならない。

なんてことどうでもいいことを考えつつ少し速足で家に向かう。

家に帰れば朝に食べなかった菓子パンが残っているはずなのでそれを少し楽しみにしながら足を進める。

少ししてアパートの外観が見え始めそのまま速足で階段を上り家の扉を開けると中はいつも道理、一人暮らしのため人気はなく日没も相まってどこか恐怖を感じさせるが気にせず部屋に入る。


その瞬間、部屋の暗闇から床の軋む音が聞こえた。音を聞いた瞬間心臓が飛び出すかと思うほど驚いたが何とか落ち着こうと息を吐く。心臓が早まるのを感じながらゆっくりと照明のボタンに手を伸ばしボタンを押すと、暗闇の中にいたのはただの白猫だった。

「はぁ~、びっくりした。....なんで家の中に猫がいるんだろ」

息をなでおろしながらそう言葉にしてあたりを見回してみると部屋の窓が開いていた。おそらく閉め忘れてそこから入ってきたのだろう。

気が抜けつつも猫を出してあげようと近づいてみると何かをごそごそいじっており覗いてみようとさらに近づくと突然猫が勢いよく走り出しそのまま窓の外へ逃げて行った。あまりに突然のことで一瞬理解が遅れたが出ていけなかったわけではなかったようで一安心し、いたずらされていないか周りを見回すとテーブルの上に残しておいた朝のパンが空の袋だけを残して消えていた。


「あ、あの泥棒猫が!!!!!!」



完全に日は落ち雲一つない空に月が高くに上ったころ、宿題や家事も終わらせリビングでスマホをいじっていると唐突におなかが大きな音をたてた。

少しおなかはすいているが先ほどの猫にパンを持っていかれ軽く食べるものがなく買いに行こうかとスマホの時刻を見ると23時29分を示している。この時間に買い物にいくのはあまり褒められたことではないが天気も良く気分的にも外に出たい気分だったので軽く上に羽織って外に出る。

外は完全な暗闇に包まれてはいないが街灯は少なく近くのコンビニまでの道はかなり暗くなっていた。

しかしこれと言って何か起こることもなくコンビニに到着し、年齢的に長く居座るのも問題なので適当にいくつか軽食を買いすぐ外に出る。買い物も終わり、来た道を戻ろうと歩き始めてすぐ、民家の塀の上に見覚えのある姿が目に入る。

そこには先ほどの泥棒猫がこちらに背中を向けて立っていた。後ろ姿だけだったが真っ白い毛並みと先ほどと似た見え方だったのですぐに気づくことができた。

さすがに何時間も前のことに腹は立っていないがあの泥棒猫に少し興味が沸き近づいてみる。足音を立てながら近づいているのにもかかわらずこちらに振り向かないのに少し違和感を覚えるがそのまま距離を詰める。

一歩、また一歩と足を進めあと少しで手が届く距離まで来ると白猫はゆっくりと立ち上がりこちらを振り向く。数秒間お互いに見つめ合っていると白猫は再び前を向き歩き始めた。

そのまるでついて来いと言わんばかりの動きに戸惑うがさすがにここで帰りますというわけにもいかないだろう。そう考え少し先で待っている白猫の後を追い始める。

しばらく白猫の後を追い続けるとだんだん木が生い茂るうっそうとした山のなかに入り始めていた。なんとなくついて行ったがさすがにこれ以上は危ないかと思い始めていると、またもや唐突に白猫が走り出しあっという間に暗闇に消えて行ってしまった。

追いかけようとしたが夕方と同じく一瞬のことで反応できなかった。だが帰ろうと思い始めていたので結果的にちょうどいいと思い足を止め、スマホを取り出して時間を確認する。

時刻は23時59分を示しておりそれなりに長い間猫について行ってたようだ。

自分の行動に少し苦笑しつつ来た道を振り返るとどこからか微かに鈴のような音が聞こえた気がした。気のせいかと思う間もなくもう一度鈴の音が聞こえその後も規則的に何度も何度も聞こえ続ける。まるでお寺の祈祷のようになるその音を聞き続けているとだんだん目の前がぼやけ始める。瞬きをしてみても景色はかわらずぼやけており、何とか視界を正そうと強く目をこすっていると先ほどまで遠くに聞こえたその音が一瞬、まじかで聞こえたかと思うほど鮮明に聞こえその後、一切聞こえなくなった。

そうしてゆっくりとこすっていた目を開けると先ほどまでの暗い山の景色とは打って変わり空は快晴で木々の隙間から光が入り込み、その空間はまるでエフェクトがかかっているかのような幻想的な自然が広がっていた。

そのあまりの景色の変化に夢でも見ているのかと思ったが地面を踏みつける感覚や頬にあたる暖かい風が今の景色が現実だと理解させてくる。

「ここはいったい....」


しばらくぼうっとしていたが鳥のさえずり声に意識を引き戻されようやくあたりを観察し始める。周囲を歩きながら観察しているとどうやら先ほどまで歩いていた森にかなり似ているようだった。あたりを見れば見るほど酷似しており、頭が混乱していき、さらにはめまいまでしてくるがこのまま森の中にいるわけにもいかず山を少しづつ下りていく。下り道も先ほどまでの暗い山と一致していたので案外簡単に下りていくことができた。

だんだん町があるあたりが見えてくる場所まで下りてくるが一向に町は見えてこず少しづつ不安が胸に積もるのを感じながら足を進めていく。やがて山を完全に下りきるとそこには建物一つなく平原のみが遠く広がっていた。

「....?........??............???」

頭が情報を受け入れられず何も考えずにただただ立ち尽くして、....おそらく5分ぐらい視線すら動かさずに立っていたがだんだんと頭が働きだし現状を整理しようと試みる。

まず猫を追いかけて山に入り、しばらくして見失い帰ろうと振り返ると空が明るくなり山の雰囲気が大きく変わった。そのあと山を下りると町は消え去りどこまでも続きそうな草原が現れた。 ....うん!わかんない。


頭が幼児退行しそうになりつつも、とりあえず時間を確認しようとスマホを取り出してみる。すると画面は真っ暗になっており電源長押ししてもバッテリー不足の画面すら表示されない。意味の分からない場所とは言え電波どころか先ほどまでついていたスマホ自体が起動しないのはどう考えてもおかしい気がする。スマホがつかないことにかなり不安を感じるがとりあえず家に帰る手がかりを見つけるためにもう一度あたりを見回してみる。

念入りにあたりを見回してみると先ほど下りてきた山の中と同じように周りの山の形や位置が普段の町から見える景色と瓜二つなことに気づいた。

しかし360度見回しても建物どころか人工物一つ見つからないため、景色は同じでも先ほどまでの町とは違う場所なのだろう。


「これからどうしよう?」

ため息交じりに独り言をつぶやく。

とりあえず周りを確認して危険がなさそうなことはわかったが、ここがどこなのか、どうすれば帰れるのかが一切わからず動くに動けなくなってしまう。

頭をかしげながら考えていると一つ、忘れていたことに気付く。たしか視界が変わる直前に鈴の音を聞いていたはずだ。祈祷のように聞こえた音だが付近の山で今も続いている神社や寺はほとんど存在していなかったはずだ、しかも0時近くに鈴を鳴らす行事なんて聞いたことがない。

となるとあの音は今の現状に何らかの関係があるのではないか。もしあの音を出した者がこんなことを引き起こしたのなら何とか元の場所に戻してもらうように説得する、現状でできることはこれしかない。

そう考え先ほど音が聞こえた場所まで足を進めていく。山を登りなおすのはかなりつらいが時間をかけて何とか音が聞こえた地点の付近まで戻ってくることができた。

そこは景色が変わった時と同じように美しい自然がこちらを出迎えてくれる。だが今はその自然から引き込まれそうな不気味さを感じ、早く音の主を探したいとあたりを見回す。

しかしどれだけあたりを見回しても、少し歩き回ってみても人工物一つ見つけられず恐怖心がどんどんと高まる。

そうしてしばらく歩き回っているといつしか鳥の鳴き声すらも聞こえなくなり、あたりもだんだんと暗くなり始める。

恐怖心がピークに達しそうになったその瞬間、後ろから葉を揺らし何かが動く音が聞こえた。

音に驚き、疲れで判断力が鈍っていたのかのか音がした瞬間一気に後ろを振り返ってしまった。

そこには顔のない人間が!ということはなく本日三度目の泥棒厄猫がなんてことないように立っていた。

怒りなのか安堵なのかわからない心境で猫と見つめ合う。そしてなんとなくこの後の展開が予想できいつでも走れるように構えていると、案の定猫は唐突に草木の中へ走り始める。そんな猫を逃がすかと追うように自分も草木の中に飛び込んでいく。何とか離されないように追い続けていきあと少しで追いつけそうな距離までくる。

だが、山に慣れていない人間が全く知らない暗い山を全力疾走すればどうなるかなど小学生でもわかるだろう。


あと少し、そう思って足元に意識を向けていなかったその瞬間、進めた足を踏み外して体制を崩し宙に浮いた体がそのままかなりのスピードで山から転がり落ちる。落ちる合間に何度も木にぶつかり体中に強い痛みを感じながらも止まることはできずそのままかなり下まで落ちていく。

しばらくするとひときわ大きな木にぶつかり止まったが、全身から激痛を感じ意識も朦朧とし始める。意識が消えかけるなか落ちてきた場所を見上げると先ほどの白猫がこちら見下ろしており、そのままどこかに走り去っていった。


(なんであいつ黒猫じゃないんだよ)

消えかける意識の中でクレームじみた言葉が最後に浮かびそのまま完全に意識を失ってしまった。




____________________________________________

どうも、ユキさんです!ご覧いただきありがとうございました。

分かりずらい箇所が多々あったと思いますが今後ともご覧いただけるとありがたいです!


【ご連絡的な】

現在、主人公とかヒロイン的な人の構想はできてるんですけど名前が出ないのでみなさんが好きな名前をコメントしてもらえるとありがたいです。

その中から名付ける可能性大なので面白ければぜひ!

主人公⇒日本人名で名字と名前どちらかでも

ヒロイン⇒なんでもok(名前だけ)

頼みますm(_ _)m




ここから下は豆知識的なものです。


白猫と黒猫は反対の象徴的な意味があるそうです。

白猫は神秘的なイメージとして幸運の象徴とされています。なぜそう呼ばれるのかは所説ありますが、一説では白色が野生では目立つため個体数が少なかった。そのため出会うことが少なく見ることができたら運がいいと思われたからだそうです。

反対に黒猫は前を横切ると不吉なことが起こるといわれおり不吉なイメージがあります。その理由は欧米では昔、黒猫は魔女の使いだとされており恐れられていました。その話が日本に伝わったとされそういったイメージができたそうです。


といっても猫は何色でもかわいいですけどね!(大の猫好き)

サイナラ!


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