蠢く暗躍
ヤクモとリュカがスノーラビットを討伐する四日前。街の中にある教会、その最深部にて一人の男が円卓に座る七人に向けて語りかけた。
「やはりこの街に潜入しているもようです」
黒ずくめの男性は、暗がりから見える七人の顔は一切見ず膝をついている。
「愚かなものじゃな?わざわざ命を捨てずとも良いものを」
「本当、その通りであるな。ジグル卿よ。どう対処するのであるか?」
「今、騎士達を使って警備を強化しています」と、額から流れる汗を拭った者こそが、この街を治める領主・ジグル=ブレアラである。
「警備って……そんなんで、あの魔人達……嘗ての特攻部隊の兵士を止められるの?孤児院に居る子をいくら人質にとっているとは言えさ」
「安心して下さい。彼なら既にヤク漬けにしております。例え命が助かったとしても、脅威ではない。ましてやかっこうのチャンスですよ」
「ふうむ。なんじゃ、そちには企みがあるようじゃの?話してみるがよい」
「彼を餌に魔人を釣り上げます。そして捕らえ処罰するのです。神罰の生き残りである、あの女を」
「期待していいのであるか?」
「任せてください」
「ふむ。ならば同胞を信じよう。奴らは間違いなく、我々の計画を邪魔するもの達になる。しっかりと処罰するのであるぞ」
「任せてください」
「では、解散するとしよう」
「「創りたるは神話」」
室内に灯りが灯れば、円卓に座っていた六人の姿はない。
「これが投影魔法」
「なんだ?お前は確か、二月前に入った……名前はジルバか」
「はい。ジルバ=ルイです」
「ジルバはこの会合を見るの初めてだったか」
ジグルはそう言いながら深く腰を据え直す。この会合は尋常じゃなく疲れるのだ。
「はい。まだ自分は。一つお伺いしてもよろしいでしょうか?ジグル様」
「む?なんだ」
「何故、今になって魔人を狙うのですか?」
「簡単な事よ。我々の目指す未来にあの男が作った組織が邪魔だっただけの事」
「あの男?」
「ジルバは、カタナリア平原の大戦を知っているな?」
「一応知っています」
カタナリア平原の大戦。魔獣国との境にある大平原。八十年程前、そこで行われた人族と魔獣族による戦いが起きた。多くの血が流れ、多くの屍が緑を埋めつくした。その戦いで騎士団とは別に先陣を切った四人の英雄。
「ならばカルマ=アルクルをしっているな?」
「知ってるも何も四大英雄の一人じゃないですか。十七歳、最年少にして最強の青年」
「奴はいち早く我々の企みに気がついた。だから消す必要がある。あの男も、男の意志を継ぐものも全てな」
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