表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/17

人はどうも冷たい

 黄昏が闇に染る一歩手前。涼やかな風が秋の訪れを囁く中で、一人の青年は玄関の前で立つ、黒ずくめの男達に頭を下げていた。


 高圧的な態度を取り、頭を下げる青年を見下しながら足を踏み鳴らす彼等は借金取りだ。父が生前残した借金を今も尚、こうやって取り立てに来る。


「払えませんじゃ困るんだよなぁ!? 期日はとっくに過ぎてんだよ!!」


 語気を荒らげる男性は今にも飛び掛りそうな雰囲気を漂わせる。しかし、そんな姿を見ても通りすぎる人々は青年に冷ややかな視線を送るのみだった。


「でもそれは親父が」

「はあ?親父はおっちんじまったんだろ? んなら払うのは息子の役割だよなぁ!?」


 そう。親父は三年前に自殺をした。遺書に「ごめん」だけを書き殴ったように遺して──


「全く。他の事業なんか手を出さず、刀鍛冶だけやっとけば良かったってぇのによ」

「…………」

「とりあえず支払えないってーんじゃ……お前ら」

「はいっ」


 目の前の男が部屋に視線を送ると、ほか三人がズカズカと作業場の中へ入っていく。


「ちょ!? 何をする気ですか?クザさん!」

「何って、そりゃあ差し押さえだろーが」

「差し押さえ!?」

「金目になりそうなのは馬車に詰め込め」

「この刀なんかは」

「んなボロボロのナマクラなんか一銭の足しにもなりゃしねぇよ。そこら辺に捨てておけ」

「ちょっと! 道具だけは勘弁してくださいよ!!」


 クザの両腕を掴めば、下卑た者を見る目で青年を見て舌打ちをする。酷く悪意の籠った舌打ちが青年に懇願の無意味さを叩き込んだ。


「よし、あらかた詰め込んだな?」

「はい」

「じゃあこれを売り飛ばして足りない分は三日後にまた取りに来る。用意できなかったら次は家を譲ってもらう事になるからな?しっかりと準備しとけよ」


 クザ達が立ち去り、一人唖然と立つ青年は工場を見てへたり込む。


「どうしろってんだよ……」


 道具を買うお金もなにもない。このままだと住む家もなくなってしまう。唯一残された父の形見である刀を見ながら、青年は苦渋の決断をした。


 それは──体一つで稼げる職業、冒険者。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ