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副団長の資格とは1

 この国、アドミエール王国の王族は、現国王グランティオ・アドミエールで6代目となる。建国から200年弱だが、領土も広く、接している国は二国と比較的情勢も落ち着いている。

 隣国の一方は同盟を結んでおり、もう一方が西の砦に面した国で、名目上、現在は停戦中となっている。

 その他の領土は海や険しい山脈に面しており、海からの貿易や、木材や鉱物資源にも恵まれた国である。


 奴隷階級はいないが、貴族が絶対的な権力を持つのは何処の国とも変わりはないだろう。騎士団の中でもそれは同じである。



 


「本日よりこの第ニ騎士団副団長に就いたダリウ・トラン騎士爵だ。以前は西の砦の師団長を務めていた。皆、よろしく頼む。ダリウ・トラン、前へ」


 アレクセイから紹介を受け、ダリウは前へ進み出る。叙爵から一夜明け今日から副団長として務めることになる。



 ダリウが前に立つと団員達の空気が変わる。さすが王宮の騎士団と言うべきか。言葉を発する者も身体を揺らす者すら居ない。しかし空気が変わるのだ。

 不服だと腹をたてるのならばまだマシだろう。多くはダリウに対する蔑みの目である。


 予想はしていたことだとダリウは歯牙にもかけない様子で口を開く。


「副団長のダリウ・トランだ。王宮での経験は皆よりも後輩となる。足りないところがあれば教示願いたい。私も副団長としてみなの手本となれるように努力しよう。よろしく頼む」


 返事をする者も居らず、束の間の静寂が流れる。すると中程の列、恐らく隊長クラスであろう騎士が声をあげた。


「団長、発言よろしいでしょうか」


「あぁ、許そう」


 何か察したように眉を寄せながらもアレクセイは促す。


「恐れながら、私は納得いきません。アレクセイ団長が副団長から持ち上がるのであれば、なぜ団長に次ぐ実力のカラダン殿が副団長ではないのですか?」


 その言葉に最前列にいた25歳前後だろうか、ダリウよりはやや小柄だが、茶褐色の髪を一つに束ねたしっかりとした体つきの騎士が、目を丸くしてダリウと団長を交互に見る。


(俺を巻き込むなよ!全然不服じゃないし!ちょ、団長、なんとかしてよ!)


 名指しされた男は縋るような眼差しで団長に視線を送る。


 彼、コール・カラダンは爵位こそ子爵家の次男と低いが、長く第二騎士団に在籍し、次期副団長と呼び声の高い人物であった。

 ムードメーカーで、下の者にも慕われる第二騎士団第一小隊の隊長である。


 コールの様子を見たアレクセイは意地悪そうな笑みを浮かべる。

 年の差はあれど、彼らは友人であった。見慣れたその顔にコールは不穏な空気を察する。


「ふむ、では如何すると?上の決定に不服を申し立てるというのは、それ相応の覚悟があるのだろう。どうだ?ジョシュ?」


 威勢のよい騎士はジョシュというのか。とどこか他人事のようにダリウは遠くを見る。見た目は姿勢も表情も崩れない、正に騎士の姿である。本人はただ呆けているだけであったが。


「っ…な、ならば、トラン殿と模擬戦をさせてください!私が勝てたならば副団長の席、もう一度ご検討願いたい!」


「ほう、いいだろう。諸君らが昨日今日王宮に上がったばかりのダリウが信用出来ないというのも最もだ。と、いうことで、ダリウ」

待ってましたとばかりにアレクセイはダリウにけしかける。


「一試合よろしく頼む」


 ニンマリとした笑顔に現実に引き戻されたダリウは、内心面倒だななどと思いながらも


「承知した」


 一言返すと中央に歩み出ていくのだった。


 



 一方、思いがけず引き合いに出されたコールは自分から話題が逸れて大変喜んでいた。


(あーよかった!俺とトランが戦えって言われるのかとヒヤヒヤしたじゃないか。ほんとに辞めてくれよ…アレクセイも確信犯じゃないか!俺は長いものには巻かれて生きていきたいんだ。ホントヤメテイタダキタイ…)


 本当に、深く、深く、胸を撫で下ろしたのだった。

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