プロローグ
初めての投稿です。温かい目で読んで頂ければ幸いです。自分の好きな物語をゆっくり投稿していきたいと思います。不定期ですが、週1位のペースで投稿していきたいです。大体1話1500字程度で作っていく予定です。
――衝撃が走った。
今までのどんな戦いよりも、どんな称賛よりも心が震える。魂が揺さぶられるとは正にこのことだろう。
神になど祈ったことはなかったが、今この場ではその存在に感謝する。この時代に、この場に居ることができた奇跡に。いや、これは必然なのだ。
どうすれば手に入れられるだろう。未だ呆けた頭でダリウは考える。絶対に手に入れる。逃さない。アレは俺のものだ。
獲物を狙う獣のようにダリウの瞳が鈍く光った。
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ダリウ・トランはトラン騎士爵家の三男である。
短く切られた頭髪は燃えるような赤、鋭く切れ長な目元は騎士らしく、その奥には漆黒の瞳が光る。
美男子かと言われればそうではないが、精悍な顔立ちをしている。
騎士爵は先の戦で武功を立てた父が賜ったもので、世襲されるわけではない。子どもたちは自らが功績を挙げなければただの平民と変わらないのだ。その父も今では王都の騎士団から離れ、村の警備隊の隊長を務めている。
ダリウにとって爵位などうでも良かったが、民のために命を賭して戦う騎士に誇りを持っていた。
ダリウが騎士を志したのは、覚束ない足取りで父や兄たちと木剣を振り回していた頃に遡る。何が楽しかったのか、日がな一日木剣を振り回していた、とは父の談だ。
物心ついてからは、明確な意思を持ち、騎士になるためと毎日剣を振り続けた。
その頃歳の離れた一番目の兄は、既に騎士となり領都の騎士団に入団していた。そのため、稽古の相手はもっぱら5歳離れた二番目の兄である。
父や兄の影響で始めた鍛練であったが、家族の中でも最も剣術の才に恵まれたらしく、10歳になる頃には二番目の兄を打ち負かすほどの腕前になっていた。
隣国と深い森に面した王国の西に位置する砦は、常に侵略と野獣の驚異に晒されている。ダリウは研鑽を積むために家から近いこともあってその砦に自ら志願した。12歳から騎士見習いとして2年、騎士試験を通過した14歳の頃には既に、隣国との諍いと野獣討伐の最前線で戦っていた。
実力が買われ砦内の師団長となったのは、ダリウが若干20歳の頃である。自らが先陣を切り、相手を斬り伏せていく様は、紅き戦神、鬼神などと呼ばれ恐れられるようになっていた。
(戦神などと大層な呼び方をしているが、それしか能がない平民と馬鹿にしているのは知ってんだよ)
ダリウは独りごちる。
認められるために研鑽を積んでいるわけではないが、血反吐を吐くおもいで国を守っても、上層部の貴族たちは下っ端の自分達など、替えの効く駒としか思っていない。
最前線となると危険も段違いである。上の連中からすれば、もしものことがあれば面倒が起こる貴族よりも、替えが利く平民を使った方が何かと都合がよいのだ。
そういった背景もあり、殆どが平民である砦内の騎士達の待遇は決して恵まれているとは言えない。
実力主義の騎士団といっても、王宮仕えはやはり殆どが貴族階級なのだ。結局あいつらは、安全なところで高みの見物なのだ。
そんな不満はあったものの、民を守る、という志を同じくした仲間たちと共に任務にあたる日々をダリウは好ましく思っていた。時には友のように、時には兄弟のように見守ってくれる部下たちと、充実した毎日を送っていた。
そして唐突にダリウにとって人生の転期が訪れる。
至らない点が多々あるかと思いますが、寛大なお心で許していただきたい…
ダリウの良さが皆さんに伝わればいいなと思います。