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転生吸血鬼がエクスカリバーを引っこ抜いた!~魔族でも中身はれっきとした人間だから殺さないでっ!!~  作者: 楠ノ木雫


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■9 トンプソン子爵


 お腹、空いたなぁ……


 最後、ってか初めてか。血を飲んだのは……結構前になってくる。それまでお腹が空かなかったのは、アンディさんの血が凄かったのか、それとも私のレベルが上がったから、のどっちかだ。


 けど、流石にここまで来ると、ねぇ。気が付いたら指を嚙んでいる。まぁ意味はないのだけれどさ。気を紛らわせようと思ってさ。効果はあるよ? まぁでもちょっとだけだけど。



「そういや、最近吸血鬼が出るらしいぜ」



 どくん、そう、分かりやすく心臓が大きく脈打った。吸血鬼、それが周りの人間から聞こえてきたのだ。無理もないだろう。だけど……私はちゃんとしてる。私じゃない。でも、それでもビビるに決まってるじゃん。バレたらヤバいって。バレた瞬間殺されるか役人に引き渡され牢屋にぶち込まれるかでしょ。まぁどちらにしても死刑確定だ。


 どうも、一昨日裏路地で倒れている死体が発見されたらしい。その死体は見た目は綺麗なもんで、最初はただ寝ているだけだと思ったらしいが、顔色が酷く脈がなかった為通報したらしい。そして調べてみると、血は抜けていて首筋に二つ並んだ刺し傷があったそうだ。もう決定的じゃん、それ。やば、てことはこの国に私以外の吸血鬼がいるって事? 同族と遭遇したくないんですけど、だって人殺しじゃん。



「怖いわね、しばらくは夜外を出歩かない方がいいわ」


「あんな化物がこの国のどこかにいるってだけで背筋が凍る」


「さっさと騎士団のやつらに見つけて始末してほしいもんだぜ」



 ……心、折れそう。分かってても辛いな、これ。化物とか、あ、でも私も言いそう。……もう考えないようにしよう、うん、そうしよう。どうせ吸血鬼なんて黒髪赤目だ。私は銀髪橙目。牙さえ見られなければ関係ない。


 ……待て待て待て待て、あの噴水近くにいるあの人!! えぇと……カシアス!! カシアスって言ってた!! あのイケメン三人のうちの一人!! 何だか人を探しているようだけど……凄くイライラしてない? あ、バックレられちゃった? 可哀想に……いやいや、そうじゃないかもしれないし。


 私、見つかんない方がいい? だって、エクスカリバー探していたって事は一番魔族だって知られちゃまずい人その一って事でしょ! じゃあダメじゃん! 早くここから離れなきゃ。



「やぁ!」


「っ!?」



 背後からいきなり声がかかった。この声は……ジェイクだ。



「ここで何してるの?」



 そう聞かれ、どう答えればよいかと考えた。大事な用事は……一応ない。今日は図書館に行こうと思ってたけど……こう連日行っていると変に目立ってしまう。だから必需品を買って宿に戻ろうと考えていた。


 中々答えない私に、彼は「ないのか?」と手を掴み引っ張ってきた。



「これから俺暇でさ、ないなら付き合ってよ!」



 これは……断れないな。以前助けて貰ったり案内とかしてもらった借りがあるから無理。大人しく付いていく事にした。一体どこに連れてかれるのやら。













 ローブを着た、深くフードを被った女の子。


 最初は、とても怪しい子だと後を付けていた。だってあんな格好してたら怪しいって思う人はいるだろう。けど、店主に騙されそうになってて、つい助けてしまった。声が出せず、容姿も隠しているようで、何かあると思って案内を自ら名乗り出た。


 仕事上そういうものに敏感だから仕方ない。


 そして、見つけた。あの奴隷の一人。彼女を見て命乞いをしていたのだ。あの距離、あんな人混み。それなのに、奴は彼女を見ていた。本人は気付いていた、だがただ疑問に思うだけで終わっていて。


 その後は何もなく、俺が教えた宿に入っていった。



「いるか」



「____はい」



 音を立てずに俺の目の前に現れた男に、こう言った。



「フードを被った、女。調べてくれ」


「つい先程の?」


「あぁ」


「承知しました、ハンターギルド長。いえ__トンプソン子爵」



 女なんて、只のうっとうしいだけのやつ。だが、どうしてだろう。今日は……何だか楽しかった。


 最初、フードの中を覗いた時。


 とても綺麗な、オレンジ色の目だった。






「__口、ちっちゃい」



 ついさっき捕まえた彼女と、カフェで、今人気らしいマカロンというお菓子を食べに来た。この前も思ったけど、食事中に開ける口がとても小さい。



「……可愛い」



 ぼそり、とそんな言葉が珍しく俺の口から出てきた。昨日、あの数日前にこの国に嫁ぎに来た公国の姫とあの静寂の森を抜けた可能性があると報告を受けたけど、そんなの忘れるくらい、小動物のようで目が離せない。


 どうしてだろうか、いや、そんなのは関係ない。



「もっと、好きなだけ食べていいよ」



 小リスに餌をやっている気分だ。



【+甘味:★★】



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